第97話 人魔平等
カムイの街は、岩を削り出して作った建材を組み合わせて作ってると聞いていたんだけど。
見た感じ、ただの煉瓦の家に見えた。
……もうちょっと、無機質で飾り気の無い街並みを想像していたのに。
結構カラフル。
削り出す岩の種類を変えて、建材を作ってるのかな。
「綺麗な街ですね」
「そうだな」
兄さんが私に応えてくれる。
行き交う人々はそれなりに居て。
店も沢山立っていた。
……主に露店ね。
なんか普通の街に見えるな。
で、露店やってる人たちなんだけど……
魔族が混じってる。
しかも、戦闘員っぽくない。
ようは魔軍騎士に見えない。
……どうなの?
私としては、接触した方がいいと思うんだけど。
兄さんはどう思います?
そう、訊こうと思ったら
兄さんが単独でその魔族の露天商に接触しに行った。
おお。
アクセサリーを売ってるっぽい、角が生えた青白い肌の三つ目露天商は
「まいど。旦那、何をお探しで?」
「妹に記念品を買いたいのだが」
……妹。
私のことだよね。
多分。
まあ、聞き込みついでだからこのお金は必要経費かな。
何も買わないで情報だけ貰おうなんて甘い考えだし。
そのくらい、私にだって分かる。
けど
手持ちのエン、どのくらい残ってたっけ……?
と思ったら。
結構兄さんはエンを持っていた。
いつ稼いだのか。
……なんとなく、単独行動で人間市場を潰していたときが怪しい気がするなぁ。
まあ、深く聞かないことにしよう。
「この街は魔族様が何故こんなに腰が低いんだ?」
露天商から、紫水晶のペンダントを購入し、代金を支払った後。
兄さんは直球でそれを聞く。
うん。
疑問点はまずそこだよね。
この露天商もだけど。
人間が普通に魔族と社会生活を送ってる感じなんだ。
どういうことなの?
征服民と被征服民なのに。
するとこの露天商は頬を指先で掻きながら
「ああ、この国の支配を任されている魔王妃様の方針ですわ。この国に限り、魔族と人間は平等なんです」
何でもなさそうに露天商。
そこに不快そうな表情は無い。
「魔王妃様は四天王の1人でもありますし、ここを好きに切り回す権利をお持ちですしね。嫌なら出ていけばいいわけで」
ただ事務的に、事実だけを述べる感じで露天商。
……なん……だと?
「分かった。いや、我々はついこの前、上層判定を受けて、この街に来たばかりなんだよ」
教えてくれて助かった。
そう礼を兄さんが言ったので、私も妹として頭を深々と下げた。
……魔王妃……。
最後の四天王は、魔王の后なのか。
兄さんの世界の死刑囚じゃないんだ。
兄さんの話からすると、死刑判決を受けた人間を魔王は嫌ってそうな気がするし。
自分のことは棚に上げて、ね。
しかし……
私たちの場合は、王様はお妃を娶るものだけど。
魔王の場合ってどうなん?
クロリスの話だと、親衛隊首席になったらいつでも王座を狙えるんだよね?
その状態でお妃って変じゃない?
魔王位が移動したら、王妃の扱い困るよね?
なので
「ねぇクロリス……」
私は兄さんに買ってもらったペンダントを身に着けながら
「魔王って王妃を迎えるのは一般的なの?」
そう訊ねる。すると首を振って
「いや? 我々にはキミたちのように結婚するという文化が無い」
……そうなんだ。
じゃあ、ストウは何故そんなことをしたんだろうか?
よっぽど好みの女性が居て、魔王の権力で無理矢理結婚したのかな?
でも、四天王入りってのが気になるね。
ろくに戦えない無能戦闘員だと、四天王を務められない気がするし。
そんなことを考えていたら。
「ペンダントを買って貰えて良かったな」
クロリスにポツリとそんなことを言われた。
私は
「うん、ありがとう」
そう答えた。
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