第84話 傭兵への道
そして俺の高校3年間は、自己研鑽で過ぎて行った。
恋も真の友情も全部投げ捨てた。
ひたすら学業を頑張って、身体を鍛えた。
自衛隊に入るために。
……自衛隊だって、全入じゃないはずだ。
素行の悪い人間や、成績の悪すぎる人間はお呼びじゃないと思う。
だから死ぬ気で自分を磨いたよ。
他人に良く思われる努力もした。
全ては須藤を殺すために。
挫けそうになったら
「彼女が僕を警察に売ったのが許せなかった」
「彼女に目を覚ましてもらいたかった」
「ロードワークに行きたい」
そんな言葉を思い出すと、瞬く間にあのときの気持ちになれた。
そうして高校を卒業後。
すぐさま自衛隊に入ったよ。
自衛隊で俺は、戦うための心構えや武器の取り扱い、そして本格的な基礎体力をつける方法を教えてもらえた。
自衛隊の人間は良い人ばかりでは無かったけど、悪い人ばかりでも無かった。
そして
現役のフリーの傭兵業をしている人の話を読んだんだけど。
自衛隊内部に、そんな「フリーの傭兵」になるための糸口のような。
情報を持っている人が居るらしい。
その話を書いた傭兵の人は、自衛隊で見つけたと言っていた。
だから俺も真似をして。
真面目に職務にあたりながら、情報を探していたんだ。
そして、2年経過したときだったかと思う。
上官との飲み会で大衆居酒屋で飲んだとき。
「霧崎は現実の傭兵に会ってみたいらしいじゃないか」
そんな会話を切り出され
そのとき、酔いが一気に醒めた。
来た、と思いつつ
「ええ。すごく興味あるんですよ。どういう思いでそういう道を選ぶのか」
もっともらしい理由をつけて、現役傭兵に会う算段をつけたんだ。
そしてその上官の知り合いだという、退役自衛官の男性に会わせてもらえた。
その男性は「フリーの傭兵なら、最強の戦士を目指せるんだ」と言っていた。
何故傭兵になったのか、という理由を聞いたとき。
フリーの傭兵業を選ぶ人間は、自分の戦闘員としての技量を売り込みたい人。
謂わば戦闘員としての自発的な試用員。
そういう目的で選んでいる人。
そして彼のように「地上最強の戦士を目指す」
そういう目的の人が多いそうだ。
……地上最強の男というと、格闘家をイメージしがちだけど。
人間は武器を持って戦うものだ。
真の意味の地上最強は、傭兵業でないと目指せない。
それは分からないでもない言葉だったし。
この人に傭兵業への道の門を開いてもらわないといけないから
「なるほど……」
彼の話に感銘を受けた男を演じ。
その経験について話し込み。
なんとか彼の前で俺の口から「自分も傭兵になりたいです」という言葉が自然に出るように努力した。
そして俺は、2年以上務めた自衛官を退官し。
フリーの傭兵という事実上ボランティアの職業に転職した。
使っていなかったから自衛隊時代の貯金がそこそこ貯まっていたけど。
装備を自前で買うお金や、買った装備を預かってもらう預かり人の確保で、そのほとんどが吹っ飛んでしまった。
それだけが少し気にはなった。
……これからちゃんとやっていけるんだろうか、と。
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