第83話 俺の思ったこと
須藤を殺すことを決意したとき。
最初に思ったのが
殺し屋になれないか?
これだった。
だけど、これは難しい。
それは「自分でなろうと思ってなれるもんじゃない」
このことだ。
よく漫画やアニメで殺し屋は出てくるけど。
高額報酬と引き換えに、極悪人を人知れず消していく。そんな殺し屋。
そんなの、アニメや漫画だけの話だ。
実際の殺し屋はヤクザの手駒。
それが現実的。
実際になるためにはヤクザにならないと駄目だろう。
その上で「上の方に適性を見抜いてもらわないと駄目」
そんな感じのはずだ。
絶対に「殺し屋になりたいんです! ならせてください!」と希望を出して、挑戦させてもらえる世界じゃない。
それにさ。
このルートだと、俺はきっと罪もない人を殺すことになる。
それは無い。ありえない。
恨みもない、無実の人を殺すなんて。
それをやってしまったら、俺はアイツと大差ない存在になる。
だから却下だ。
そして次点で出した候補が……
傭兵。
これなんだよ。
傭兵だったら、ある意味合法的に命を賭けた戦闘経験を積むことができる。
殺し合いの場数を踏む。
この日本でそれをするには、傭兵になるしかないと俺は考えたんだ。
で、傭兵には2種類あって。
ひとつが「傭兵会社に所属する傭兵」
漫画やアニメで良く出てくる
「金を払ってる間は信用できる」
「金さえ払えば勝利を届けてくれる」
このタイプの傭兵はこっちだ。
会社組織が信用の土台になるから、その関係が成り立つ。
信用。
そう。傭兵には信用が無いんだ。
お金で繋がった関係だからね。
冷静に考えてみると良い。
1000万円やるから、虎と槍で戦ってこい。
こんなゲームを提案して。
逃げ出すのは自己判断で。
この状況で。
果たして、約束通り死ぬまで戦う奴がどれほどいるか。
何かしら、枷が必要になるのは当然だ。
その枷が……
「組織」だったり。
「国」だったり。
「同志」だったりするんだよ。
「お金を払う」はその枷にするにはあまりに弱いんだ。
そしてもうひとつの傭兵……フリーの傭兵がまさにそれ。
お金しか信用を担保するものが無い。
こういうのを雇いたがるのはまた2種類。
ひとつは「成熟した組織が、鉄砲玉要員として適当に雇う」
もうひとつが「弱小組織が、藁にも縋る思いでなけなしの金で雇う」
……そういうわけなので、金にならん。
ほぼボランティア。それがフリーの傭兵。
そして俺は、こっちになろうと思った。
その理由は「鉄砲玉として使ってもらえる」からだ。
俺が積みたいのは実戦経験で、殺し合いの場数だ。
傭兵会社に所属する傭兵の仕事は、必ずしも殺し合いだけじゃない。
守る任務だってある。
だけど。
守る任務は、俺の求める経験にはならないんだ。
だから俺はフリーの傭兵になる。
そのためには……
まずは自衛隊に入らないといけない。
ズブの素人が、いきなり傭兵業をできるわけがないからな。
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