第76話 偽りの作戦
クロリスへの暗闇の魔法の使用指示。
これは、スタングレネードを使用した、敵の無力化をする作戦の合図だ。
事前に打ち合わせて決めたんだ。
キリサキさんは、スタングレネードが爆発する寸前に耳栓と目を防護する道具を召喚し、防御。
私たちはクロリスの生み出した暗闇の空間に逃げ込んで、耳を塞ぐ。
暗闇の空間にはスタングレネードの閃光は届かないので、後は音さえ防御できればダメージはほぼ受けない。
そして敵だけ無力化する瞬間を作る。
そういう、必殺の作戦。
それを今、キリサキさんはやろうとしている。
すぐさま、クロリスが自分の指輪を発動体に暗闇の魔法を詠唱し、発動させ。
私の腰に手を回し、攫うようにその中に引っ張り込んだ。
なだれ込むように暗闇に入り、私はクロリスに抱えられ
その耳を彼女の手で塞がれる。
これで外界の音は、私にはほぼ聞こえない状態になった。
そして私は、自分の使命を果たし続けた。
詠唱は……止めない。
「……馬鹿なのかお前は?」
ショウダが何か言ってる気がする。
何事だろう?
「僕はお前の記憶もいただいてるんだよ。お前の暗闇の魔法の指示に意味がないと判断するとでも思ったか!?」
ショウダの声には嘲りの色があるように思えて
「大体、そのテはお前が最後の仕事をやったとき、決め手にやった奥の手だよな!?」
一体、何を言ってるんだろうと思ったけど……
今は、気にしないことにした。
そして……
詠唱が……今、終わった!
「その手には掛かんねえよ! 死ね! 策士気取りの有象無象がぁ!」
そして、次の瞬間爆音が響いた。
私の耳は防御されたけど。
クロリスはまともにそれを受け。
その瞬間、彼女の身体が大きく震えたのが私にも分かり。
「行け」
その一言とともに。
クロリスは私を突き飛ばすように暗闇の外に追い出した。
外界に飛び出した私が見たものは……
彫像のように立ち尽くしているキリサキさんと
身体を丸め、停止している……ショウダ。
ショウダはまともにスタングレネードを浴びたらしい。
キリサキさんは立ったまま。
これはキリサキさんがスタングレネードを防御をしたからだろうと思う。
……今なら、ショウダを倒せる!
私は……
「閃光刃!」
その掛け声で魔法を発動。
魔術師の杖の先端から、純白の光の刃を発生させ。
杖を振り上げ、振り下ろした。
その純白の光の刃を瞬時に10メートル超の長さに拡大しつつ。
その光刃は
ショウダの身体を胴体の腰部分で輪切りにした。
滅ぼされたグラト帝国を支配していた人喰いの皇帝。
……ショウダを倒したんだ。
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