第71話 荘田の超能力
「荘田洋司、死んでもらうぞ!」
言ってキリサキさんはその右手にデザートイーグルを召喚。
すぐさま発砲しました。
重い破裂音。召喚から発砲まで1秒無かったと思います。
ショウダは仰け反りました。
……当たった! 多分頭に!
けれど……
ゆらり、と。
ショウダは凄まじい笑みを浮かべつつ、こちらに視線を向けてきた……!
……効いてない!
確かデザートイーグルって、キリサキさんの話では、拳銃で一番強いという話だった。
なのに効果無い。
予想はしてたけど……
「銃器は僕には効かないと思うよ。多分だけど」
やっぱり……そうなんだ。
竜の短剣の効果は「所持者を竜と同質にする」なんだ……!
「あーあ、この帝の衣装。皇帝になった気分になれたのに、メチャクチャだよ」
口元に笑みを浮かべながら服をごそごそ探る。
「化け物め」
キリサキさんの言葉。
それに対しショウダは
「……そりゃ酷くない? 手榴弾に耐えられたのは、竜の短剣の効果なんだよ?」
言いながら服から何か……干し肉のようなものを取り出した。
「そうじゃない」
言いつつキリサキさんはデザートイーグルを消して勇者の剣を抜刀する。
これしか通じないという決断の結果なんだろうか。
そのままキリサキさんは続けた。
こんなことを。
「お前が日本で連続児童誘拐事件を起こしたとき。子供の亡骸を親元に返したのは何故だ」
そうだ。
確か前にそんなことをキリサキさんは言っていた。
するとショウダは
「そりゃあ……」
にやあ、と嗤ったんだ。
こんなことを言いながら
「一番美味しいところをいただいて、残りを生産者に返す。……これが済んだとき、人間を食べたという事実が完成するんだよ。食べた子の人生を丸ごとそっくりいただいた。生産者の希望を根こそぎ奪うことでね……」
到底許せない言葉。
……あ……悪魔……!
私はショウダの発言を聞き、怒りに震えた。
この男は、他人の苦しみを快楽……娯楽にしてるんだ。
……絶対許せない。
この男が誘拐して、殺して、食べてしまった子供たち。
その子がどれだけ祝福されて生まれてきたか。
それがこんな奴に娯楽のために潰された。
その子に掛けられた愛や、喜びや、幸せが、全部こいつの舌の上の楽しみに消された。
……こんな奴、死刑で当然だ!
キリサキさんの世界では、頭がおかしいと判断されると、無罪にされるって言われたけど、そんなの絶対に間違ってる!
私が、倒す!
その思いで、私は激情のままに真言詠唱を開始した。
私の習得している魔法で最も強力な攻撃魔法を
淀みなく唱え、響き渡る私の真言。
それに気づき、ショウダは狂気交じりの、いや狂喜の笑みを浮かべた。
そして興奮を隠さない声でこう言った。
「へええええ!! キミ、真言魔法究極位階の『閃光刃』が使用できるんだ! すごいね!」
え……?
こいつ、異世界人だよね……?
何で真言を聞き取れるの……!?
混乱。動揺。
私の詠唱が止まった。
真言は私たちの会話で出てくる言語じゃない。
だから、勇者召喚の儀式で得られる魔法効果「自動翻訳」の対象外のはずだ。
それなのに……!
戸惑う私を他所に、ショウダは手に持っている干し肉のようなものを口に入れた。
そして咀嚼する。
口の中のものをかみ砕きながら、ショウダは言った。
こう言ったんだ……
「もう、これしか残ってないから別にいいよね……。僕の超能力は『食べた人間の肉の持ち主の記憶、経験、技能をそっくりそのまま自分のものにできること』なんだよ」
冷めた顔で。
クチャクチャと嚙み締めつつ。
咀嚼し、飲み込んだ。
食べた人間の記憶や、経験や、技能を取り込む……?
だから私の真言を聞き取れたっていうの……?
いや……
私の唱えた真言が、究極位階の魔法であると、こいつは気づいた。
と、言うことは……?
続いたショウダの言葉。
それは……
「そしてこの肉はグラト帝国宮廷魔術師のものなんだよね……」
絶望的な内容で。
そしてショウダは、目を限界まで見開いた狂喜の笑みを浮かべ
腰にぶら下げた鞘から短剣を引き抜き。
……真言詠唱を開始した。
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