第70話 強行突入

 私たちは宮殿に潜入した。

 真昼間にだ。


 流石に正面からでは無かったけど。

 なかなか無茶だった。


 ……魔王の呪縛解除のによる解放がなければ、いくらキリサキさんが強くても無理だったかもしれない。


 宮殿警備を行っている魔族を打ち倒し、彼らに敗北を教えたら。

 全員、寝返った。


 ……よほどこの国で働くのが嫌だったんだ。


 分からなくも無いけど。

 この国はあまりにも悍ましいから。


 そして玉座の間を目指した。


 色々あるけど、ショウダを倒せばこの国を取り返すことは可能だ。

 だから優先するのはこれなんだ。


「キリサキさん」


 先を歩くキリサキさんの背中に。

 私は声を掛ける。


 キリサキさんは振り返らず


「なんだ?」


 そう返してきた。

 私は、ひとつ確かめたいことがあった。


 それは


「ショウダの超能力って何か分かりますか?」


 これだ。


 これから戦うショウダがどういう超能力を持っているのか。

 それだけが私には皆目分からなかった。


 だから


 ひょっとしたらキリサキさんなら何か分かっているのかも……?


 そういう期待を込めて。

 だけど


「分からん」


 ……え?


 ショウダと戦うことにおいて、一番気にしないといけない部分が不明。

 それ、どうなんだ……?


 キリサキさんらしくない。


 それよりも一刻も早くこの国を解放することを優先するとか。

 一体どういうことなんだろうか……?




 玉座の間の前に着いた。


 この向こうにショウダが居る。


 私は2人を確認した。


 キリサキさんは緑色のボール状の道具……手榴弾を持っていて。


 クロリスは魔族の姿に変身完了。

 無論魔法武具も着装している。


 そして


「キリサキさんの筋力を2倍にします」


 私の真言魔法「筋力倍化」

 これをキリサキさんに私は掛けた。


 よし


「いくぞ」


 キリサキさんのその一言。


 同時にキリサキさんは玉座の間の扉を開き。


 そこにピンを抜いた手榴弾を投げ込んだ。

 そして素早く扉を閉め。


 数瞬後。


 爆発。

 轟音。

 波動。


 扉に爆発の衝撃の震えを感じた。


 私は耳を塞ぎ、その衝撃に耐える。


 そして


「いくぞ!」


 今度は力強く。

 キリサキさんの声。


 キリサキさんは扉を開け、踏み込む。


 玉座の間は手榴弾の爆発でめちゃくちゃになっていて。

 歴史あるグラト帝国の帝の居場所がメチャクチャになっていた。


 ……ショウダは……?


 私は視線を周囲に投げる。


 いなかった。

 どこに行ったんだろうか?


 そのとき


「いきなり手榴弾とは。殺意が高いね」


 ……男の声。


 声は上からした。

 

 見上げた。


 そこには……


 ボロボロになった帝の装束を身に纏った、昼間に都でランニングをしていた男。


 あの男がいたんだ。

 羽根も無いのに宙に浮かんで、不敵な笑みを浮かべながら。


 やっぱり……

 あの男が、ショウダだったんだ!

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