第56話 魔王軍四天王・荘田洋司
モヒカンたちが乗ってきた人間狩り用の馬車に乗り、私たちは人間市場という施設を目指した。
モヒカンたちに地図を書かせ、私たちが御者台に乗る。
モヒカンたちは触手獣と一緒に檻の中だ。
そしてクロリスに馬の手綱を取ってもらいながら。
私は一緒に御者台に座っているキリサキさんに話し掛ける。
「あの」
「……何かな?」
キリサキさんは地図と現実の地形を見比べ、先を確認しつつ応えてくれた。
どうしても聞きたいことがあったんだ。
彼らが人間狩りに精を出し、食肉人間を繁殖させるための父母として、男と女を集めている理由。
それはショウダ様という、この国の支配者の腹を満たすため、らしい。
ショウダ……確かアカイが死ぬ前に、そんな名前を言い残していたような気がする。
……これまでの四天王は、キリサキさんは全部その素性を知っていた。
……こいつについても知っているんだろうか?
「キリサキさんは、ショウダについてはご存じなんでしょうか?」
そんな私の問いに。
キリサキさんは、地図からスッと目を外して
こう応えた。
「ああ」
やっぱり。
「
子供の誘拐殺人……。
なんて酷い。
アカイはそこに彼なりの正義があって、そこから出た面はある。
アカイ自身はその行き過ぎた潔癖主義や、異常な厳格さ、狭量さが無ければ、死刑囚にならなかったんじゃないかなと思えるような。
でも、ショウダは違うんですね……。
「何故ショウダはそんなことをしたんですか? ……それはやっぱり……?」
ここの状況を考えると、その可能性は高い。
けれども……
キリサキさんは
「それは分からない。けれども……」
ショウダは児童の親に身代金要求はしなかった。
そして代わりに胸や尻の肉が欠損した児童の遺体を、親の家の前に遺棄することを繰り返した。
そして恐ろしいことに、それだけのことをしでかしても7人の児童が犠牲になるまでショウダは官憲に捕まらなかった……
その内容に戦慄する私に、キリサキさんはさらにこう言った。
「しかし逮捕された荘田は、罪を認めず。そのまま裁判に臨み、なんと自分で自分の弁護をするという真似をしてみせたんだ」
ショウダ自身が法律の専門教育を受けた学者の卵だったそうで。
そこかららしい。
そして裁判は相当難航したそうだ。
厄介なことに、ショウダには相当な弁護の才能があったらしくて。
けれど、官憲の執念の捜査で、動かぬ証拠を提示して。
最終的に彼は死刑判決を受けた。
すると今度は、ショウダは自分が精神異常である。罪に問えないから無罪にするべきだと足掻きだしたんだとか。
精神に異常がある場合、キリサキさんの世界では犯罪者は罪に問われないという考え方があるそうで。
聞いて「え?」と思った。
何でそうなのか、ちょっと理解できなかったけど……
話が横道にそれるので、私はそのことを聞かなかったことにした。
「そこで牢屋の中で叫び続けたらしい。自分は誘拐した子供たちでグルメを楽しんだ。子供の肉はとても美味いんだ、と」
内容が内容だけに、それが事実であると取り合う人が出て来なくて……まあそれでまた問題が起きたらしいんだけど。
問題はそこじゃないよね。
……この国で起きていることと、そのショウダの向こうの世界での罪。
そして振る舞い。
全て照らし合わせると、やっぱり……
そういうことだよね。
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