第54話 ここで何が起きているのか?
「お前たち何だ? 元アスラから入り込んできた奴らか?」
モヒカン男がクチャクチャ干し肉を齧りながら、そんなことを。
「女が2人いるぜ。どうよ? 2人ともレベルたけえしショウダ様のお眼鏡にも叶うんじゃね?」
そんな感じでモヒカン男たちは会話している。
私たちをチラチラ見ながら。
この人たち……絶対まともじゃないよ。
だってさ……
彼ら数人の後ろに、数匹
うじゅるうじゅる
しょ、触手獣……!
確か魔族が飼ってる生き物だよね……?
真っ黒い球体ボディに、同色の触手が腐るほど生えている。
目のような感覚器官は見つけられなくて、全身が粘液で覆われている。
そんなのが居たんだよ。
けれど
「懐かしい。触手獣ではないか」
そんな触手獣を見て。
クロリスが楽し気に話した。
「食用家畜としても使えて、番を命じることもでき、重い物品を運ばせることもできる。良いことずくめの生物だ」
……そうなんだ。
あれを食べるんだ……魔族は。
ゾッとした。
文化や育った環境が違うと、分かり合えないのかもしれない。
そう思った最初の瞬間だったかも。これは。
そんな私たちを他所に
「まぁ、イイヤ。女はこっちにこい……男は……こっちもまあ、アリかな」
そう言って。
モヒカン男たちはバトルアックスを構えて近づいてきた。
で、すぐさまボコボコにして。
返り討ち。
するとキリサキさんが
「俺たちに何をしようとしていたのかを洗いざらい話せ」
勇者の剣(鞘付き)で頭を小突いて。
正座させているモヒカンたちに自白を迫った。
モヒカン男たちは項垂れている。
……何も喋らない。
これって……
「口にできないようなことをしようとしたってこと?」
そう、思うところを口にしたら
キリサキさんが
「そうなのか?」
「……」
モヒカン男たち、無言。
なーんも喋らない。
「しょうがないな」
キリサキさんはため息を吐き
勇者の剣を両手で捧げるように握って。
そっと
正座しているモヒカン男の膝に置こうとした。
すると
「うぐえええええ!」
モヒカン男がカッと目を見開いて。
悲鳴。
まあ、勇者以外には数万トンだからねぇ。
キリサキさんはそうやって悲鳴をあげさせて。
再び勇者の剣を握る。
「今度は一瞬じゃ済まないぞ?」
真っ青な顔で脂汗を掻いているモヒカン男に、キリサキさんは耳元で囁く。
荒い息を吐いている男は、涙目で頷きペラペラと話しはじめた。
それはこういうものだった。
「家畜人間の種男と繁殖女にしようと思った……?」
最初、意味が分からなかった。
モヒカン男たちは青い顔のままガクガクと頷く。
「それは一体どういうものだ?」
するとまた、モヒカン男たちが視線を逸らし、口が重くなる。
その兆候が見えた。
キリサキさんは、そんなモヒカン男たちが話したがらない様子を察知し
再び勇者の剣を両手で捧げ持つ。
それを見たモヒカン男たちは
「申し訳ありません! すぐに、すぐに話しますから!」
土下座せんばかりに頭を下げ。
べらべら話し始めた。
そして
その話を聞いて。
私はみるみる青ざめていく自分を自覚した。
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