第31話 魔族ってそうなんだ
何だか、アカイの話をしてからキリサキさんの様子がおかしい。
部屋を出て行ってから、戻ってきて。
ずっと黙ってる。
……なんか私、怒らせることを言ってしまったのかな?
なので食事の時間になったとき。
座って鍋を一緒に囲みながら
「あの、キリサキさん。私、何か悪いこと言いましたか?」
そう、訊ねた。
ちょっと勇気が必要だったけど、これは訊いておかないと。
一緒に魔王軍と戦わないといけないのに、相互の信頼にひびがあるのはマズイ。
すると
「いや、キミが悪いわけじゃない」
そう、キッパリ言ってくれたんだ。
だけど……
何が気になったんだろうか?
私の責任では無いけど、キリサキさんが嫌な気分になることを私が言ったってことだよね……?
そんな風にもやもやしながら
私は鍋を食べていた。
クロリスもだ。
見ていると
……箸の使い方、クロリス上手。
それが正直意外で
ええと……
「クロリス、箸の使い方上手だね」
素直に褒めると
「……何故褒めるのか理解できない」
もごもごと野菜を食べながら、クロリス。
へ? と思ったら
「人間の一部が、我らのヘルブレイズ魔国から脱走するまで、人間に言葉を与え、礼儀作法、食事の仕方を教えたのは我ら魔族だ」
その言葉でショックを受けた。
はわー!
って。
その視点は無かった。
魔族は競争社会で、強さが全てということで、食事は全て手掴みで食べてるようなイメージがあったけど。
そもそも考えれば創造神シャダムって
より強く、より賢く、より美しく。
って言ったんだよね。
だったら、当然礼儀作法をしっかり持ってないと「美しくない」
魔族を力だけ強い傲慢な野蛮人と捉えるのは無理がある。
そういうことなのか。
なので思い切って
「……強さ以外で、地位を得てる魔族って居るの?」
そう聞いてみると
「無論いるぞ」
……肯定された。
だけど
「まぁ、大体が総合力だがな」
一芸だけ秀でている者はほぼいない。
クロリスはそう言った。
そうなんだ……
そんな風にクロリスの話を聞いていると。
「ヘルブレイズ魔国にも人間がいるんだな」
そうキリサキさんが会話に加わってきた。
クロリスは頷き
「ええ。ケイジ様。……ひょっとしてご気分を害されましたか? 無論我らは、国外の人間と国内の人間は分けて考えていますよ?」
そう、返答。
少しだけ不安げな気持ちが。
それに対しキリサキさんは
「……さしずめ、豚と猪の違いみたいなものかな」
それだけ口にして。
黙々と、食事。
その言葉には少し、何故だかほんの少し楽し気な雰囲気があった。
今の話は楽しかった……のか?
そして次の日の朝。
一晩お布団で寝て。
フルチャージ状態になったので。
「さあ、首都のベルーゼに出発しましょう!」
元気よく。
宿の出入り口で私。
ジャンプしたいくらい、元気がチャージされている。
これなら大丈夫。
何とだって戦えるよ!
皆で心を引き締めて、魔王軍四天王のアカイが支配していると思われる、首都ベルーゼに向かいましょう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます