第26話 街角の勝負師
賭博は違法かと仰る。
キリサキさん。
キリサキさんの世界では、賭博は違法じゃ無かったりするの?
賭博を認めると、一獲千金の夢で国民から真面目に働く気を駆逐して、結果怠け者の大量生産。
果ては借金を呼び込んで、治安の悪化、自殺者を産む。
悪いこと尽くめの悪行じゃない!
なので
「違法っすよ! 違法に決まってるじゃ無いっすか! キリサキさんの世界では賭博は合法なんですか!?」
思わず食って掛かるようにそう返すと、キリサキさんは
「いや、一応違法なはずなんだけど、実質合法なんだよな」
ちょっと言い辛そうに
……?
違法なハズなのに実質合法?
それは一体……?
「例えば」
キリサキさんは語り出した。
お金をまず、ゲームに使用するチップに換える。
そのチップをゲームに使用し、チップを増やす。
これは単にチップを増やすゲームであって、お金を賭けているわけではない。
そしてゲームが終わり、大勝したプレイヤーがチップを何だかつまらないものに交換する。
チップで交換できるものは、他にもあり、お菓子なんかもある。
つまり、あくまでつまらないものは賞品のひとつ。
そして何故か、そのゲーム場の外に、そのつまらないものを買い取る業者が存在している。
これはただの商品の売り買いであるので、賭博とは一切関係ない。
……えー?
「すっごい屁理屈に聞こえるのは私の頭が悪いからですか?」
「いや、きっとそれが正常な反応だ」
……なんだか分かんない世界だなー。
まぁ、それはそれとして。
「賭博してどうするんですか? それでお金を稼ごうと?」
「いや」
キリサキさんは言った。
自分が知りたかったのは、賭博の線引きだと。
例えば
「賞金つきで、何かゲームをやらせるのは違法か? 例えば絵画コンクールだとか大食い競争だとか」
「それは大丈夫です」
それは普通にある。
ヘブンロード王国でも格闘大会だとか料理大会はあったし。
無論賞金付きで。
「だったら、屋台なんかで子供の遊びに商品か賞金をつけるのは?」
んーと、輪投げとか金魚掬いとか?
……それもまあ、あるなぁ。
「それもあります」
「よし、ならば」
「さーいらっしゃいいらっしゃい」
「そこのお前! 是非遊んでいくがいい!」
キリサキさんが超能力で拳銃を創造したんですよね。
サイレンサーとかいう、発射音を消す装置がついたやつ。
で、人間を模した
射的を作ってしまいました。
こっちでは弓で似た遊びがあるんですけど。
キリサキさんは拳銃でやるんです。
で、賞品として、宝石を1つ提示して。
的に当てられればこれを進呈。
挑戦するにはお捻りを。(額はお気持ちで)
こう言った。
額をお気持ちにしたのは、ここの通貨が元の通貨「イブリス」じゃないかもしれないからで。
だってここ、土地はアスラ武闘国ですけど、国はそうじゃないですもん。
通貨が変わってる可能性は大いにあります。
そういうわけで。
私たち……私とクロリスで、温泉宿に来てる人相手に客寄せをしたら。
珍しいものに飢えているのか、結構お客さんが食いついた。
みんな大喜びで拳銃を撃って遊んでました。
ちょっとだけ「危なくないかな?」って思ったんですが。
だって銃って武器ですよね?
するとキリサキさんは「空包だから大丈夫」って言ってて
……空包って何だろう?
銃、複雑だ……!
で、お捻りなんですけど……
通貨が変わってて。
紙のお金になってた。
エン……?
私が訝し気な顔をしていたからか、クロリスが
「エンは5年前から、今の魔王様が即位してから流通するようになったヘルブレイズ魔国の通貨だ」
私の後ろで唇に指を当てつつ
「こっちでも流通し始めていたんだな」
なんて言いながら、興味深そうに見てました。
紙のお金……。
こんなの信頼できないと思わないの?
実物の金や銀でないと、信頼できないと思うんだけど。
偽造し放題!
そう聞いたら
「お金欲しさに、偽造しようなんて考える奴は魔族に居ない」
そんなことを言われて。
……何だか敗北感を感じてしまった。
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