第27話 エンで何か悪いんですか?
結構いっぱいエンを貰えた。
合計4万5432エン。
私がザルにもらったお捻りを整理してキリサキさんのところに持っていくと
エン、という通貨の名前を聞いたとき。
またキリサキさん、ちょっと変な顔をした。
我々の通貨がイブリスなのは、道中のちょっとした買い物で聞いてるから知ってたはずで。
それがエンに代わっていること。
それは理解できると思うけど。
変ではないよね。
だってさ、占領されてしまってるんだから。
それがヘルブレイズ魔国の通貨だと言ってもまだ何か思うところがあったみたい。
いつからそうだったか分かるか? なんて言われた。
今の魔王が即位したのが5年前だそうで、そこからです、と答えたら
「……そうなのか」
って何かとても辛そうに。
……なんで?
そりゃ、私たちだって平気ではいられないけど。
通貨の名前を決める際、一番信じられるものは? って皆で考えて
それは我々の神「女神イブリス」だろう、と。
そういう経緯があって、通貨がイブリスに決まったのに。
変えられた。
悔しいよ。
悔しいに決まってる。
悔しいです!
だけど
……そんな風に、本当に辛そうな顔で考え込むの。
何か変じゃない?
だってキリサキさんにはイブリスに思い入れありませんよね?
まあ、とにかく。
温泉宿に入るための軍資金は手に入った。
多分これでいけるはず。
足りてなければもうちょっと射的屋さんをしよう。
暖簾をくぐり、受付に凸する。
受付の人はお姉さんで
「いらっしゃいませ」
……ん?
アスラ武闘国は武人が上に立つ国で。
豪快が国の在り方というか、気風。
そのために、客商売が雑だって聞いてたんだけど。
無礼ってわけじゃないんだけど、丁寧ではない。
そういう話だった。
お辞儀が適当だとか、ところどころ敬語がおかしいとか。
そういうの想像してたのに。
メッチャ丁寧に見える。
お辞儀の仕方、アラが無いし。
微妙に仕草が違うのがちょっとだけ気になったけど、これはそういう仕草のお辞儀なんだと違和感なく納得できる感じだ。
「宿泊ですか? ご休憩ですか?」
ニコニコしながらお姉さん。
どゆこと?
そう思いながら
「3人泊りで」
そう応えた。
宿泊料金は3人で3万エンだった。
イブリスだと多分相場は3000イブリス。
すると1イブリス=10エンくらいなのか……。
まあ、まず両替をしないから、要らない知識ではあるんだけど……
私たち3人に与えられたのは大きな畳の部屋。
10畳以上ある気がする。
お姉さんに聞いたけど、食事は一応出るそうで。
夕方5つだって話。
今は多分3つくらいだから……
2時間は時間が空いてる。
よし!
「お風呂行きましょう!」
私はクロリスにそう呼びかけた。
一緒の方が色々と良いからね。
……あと。
何故か、混浴文化がなくなってて。
お風呂が男女時間別で切り替わる方式になってるんで
女湯の時間帯に入らないとまずいというのもある。
……アスラ武闘国は混浴文化で有名だったはずなんだけど。
「ああ、行こうか」
私の呼びかけを快諾し。
クロリスが立ち上がったので。
私たちは大浴場に向かうため、部屋を出て行った。
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