3章:1つしか思想が無い国 アスラ武闘国

第25話 水と火山の国

 アスラ武闘国。

 建国300年くらいの中堅国家。


 主食は米。

 武術の始祖が何人も生まれた土地に建った国だからか、武術の強さで成り上がりが狙える国でした。

 この国の王様の武王の御前試合で勝ち抜けば、誰でも最高位の身分である武族になれて。

 逆に武族の子弟でも、あまりに武術で振るわないと身分を剥奪されて市民にされる。


 実力主義のそういう国。

 結構魔族に似てるところがあるかもしれないですね。


 私たちは大きな湖の傍を歩いていました。

 すると


「湖が多く無いか?」


 キリサキさんのこの土地の感想。

 私はそれに対し


「湖だけじゃなく火山も多いですよ」


 なので、アスラ武闘国の名物は温泉なんですよね。

 外貨をそれで稼いでいたそうですよ。


 戦争が始まる前は。


 その辺をキリサキさんに伝えたとき

 キリサキさんからではなく


「温泉ということは、風呂だな!」


 突然、キリサキさんの荷物を全部背負って歩いていたクロリスから声があがりました。

 それはどう聞いても期待が籠った声で。


 ……おや?


「魔族もお風呂に入るの?」


 疑問を覚えたのでそう素で聞くと


「当たり前だろう! 我々だって生きているだけで身体が汚れるし、汗もかく!」


 真向否定されてしまった。


 ……そりゃそうか。

 生き物だものね。


 神様じゃ無いんだから。


「ごめんなさい」


 私はさすがに悪いと思ったので、謝ったんです。




 で、しばらく歩いていたら。


 看板が。


 秘湯の宿


 って。


 おお……


「何て書いてるんだ?」


 どうもこの世界の文字は読めないらしいキリサキさんが

 私の反応を見て、そう訊いて来たので


 秘湯の宿です、と答えようとしたら


「温泉宿ですケイジ様!」


 すごーく嬉しそうにクロリス。

 これは……


 立ち寄らないといけない流れだ。




 看板の場所から1キロほど歩いて。


 少し大きめの、アスラ武闘国の伝統的な木造の建物。

 人、結構いる。


 見つけた。

 というか……


 普通に営業している。

 どういうことだろう?


(この状況。入るのは無駄ではないと思うけど……)


 だって、予想外にこういう日常的なものが営業しているんだから、相当情報が拾えるのは間違いないからね。


 問題は、お支払い。


 ここ、完全に敵地だから。

 料金免除の書状は使えないし、使ったらダメ。


 勇者一行ってバレちゃう。


 そうすると、もうひとつの資金源を使わないといけないわけだけど……


 それ、全部宝石なんだよなぁ……


(勿体ない)


 絶対宝石じゃ払い過ぎになるから。

 躊躇しちゃうよ。


 だって私のお金じゃ無くて、国から与えてもらったもんなんだから。


 そうやって迷っていると


「どうした?」


 スッと私の横から。

 キリサキさんが私に気を掛けてくれた。

 だから私は、お金の事情について話したんだ。


 するとキリサキさんは少し考えて

 こう訊いて来た。


「この国では賭博は違法か?」


 ええ……?

 サイコロとか?

 カードとか?


 それって……?

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