第23話 音山克子など、四天王では全くの小物(何故四天王になれたのか分からぬ)
「ハッ、何を馬鹿な……浅はかな予想だよねぇ」
オトヤマは、大物のように腕を組み。
余裕を示すように鼻で私の看破を嗤うんですが。
私は真言を唱えました。
彼女を睨み据えながら
すると
「なるほど炎か」
クロリス。
オトヤマの方に歩き、間合いを詰めながら。
私の言葉を聞き
……変身を解きました。
青白い肌。
捩じれた2本の角。
そして3つの目。
彼女は歩きながら
魔族の姿になる。
……驚愕でオトヤマの目が見開かれる。
まぁ、普通予想はしないよね。
人間の中に魔族が混じってるなんて。
で、そのまま歩き続け
クロリスは大きく息を吸い込み、口をカパッと開いた。
そして吐き出される吹雪の輝く息。
それはオトヤマを飲み込んだんです。
「アアアアアアッ!」
オトヤマの悲鳴が響き渡る。
……やっぱり、冷気による攻撃は通用するんだね。
炎だから。
オトヤマは吹雪の息の直撃を受け、身悶えし、倒れ、逃れようとする。
その中で
再び右手の中に光の斧を呼び出した。
同時に発火する周囲の大地。
だけどその瞬間
破裂音。
「あぎゃあああ!」
ボッ、と。
オトヤマの太腿に、血の華が咲き。
キリサキさんの右手には、デザートイーグルが握られていました。
「……消去法で、瞬間移動は光の斧由来なのは予想できる。残念だったな」
そう、筒先から煙を立ち昇らせつつ、さらに一発。
またボッと血の華が咲いた。
オトヤマの無事な方の足に着弾したんです。
「ぐぎゃあああああ!」
オトヤマの悲鳴は、兎に角品が無かったですね。
オトヤマは泣いていた。
泣きながらキリサキさんを振り返る
「や、やめろ! 私は女だぞ!」
滂沱の涙を流しつつの必死の訴え。
慈悲の要請。
けれど
「戦場に男も女もない。殺し合いをするところだと、一般に言われているな」
キリサキさんは容赦しない。
デザートイーグルを下げない。
そして
下げずに、デザートイーグルをまたあの長い鉄の棒みたいな、狙撃できる道具に変えたんです。
(後で聞いたところによると、これはスナイパーライフルって言うらしいですね)
その状態でこう言いました。
「……転移をやってみろ。実体化した瞬間、お前の頭を吹き飛ばす」
泣き落としは通じない。
転移は命がけ。
真っ青になったオトヤマは
硬直し
そして
「……なんでもします。殺さないで下さい」
ガタガタ震えながら、真っ青な顔で。
命乞いをはじめたんです。
「他の四天王の超能力を教えろ」
「知りませんッ」
破裂音
「いぎいいいいい!」
「嘘を吐くな。知っているはずだ。勝ち目がないと思ったから挑まなかったんだろう」
「そうじゃないです! 魔王サマに逆らうのが嫌で……!」
破裂音
「あぎいいいいい!」
……納得できない返答が来るたび、キリサキさんの武器が火を噴きます。
そのたびに、撃ち出されたものが彼女の身体を貫き、深刻なダメージを与えて行き
「……ロクな情報がとれないな。……終わらせる」
そして最後にキリサキさんはそう言って。
武器を構えました。
そのとき
「魔王サマ! 魔王ストウ様! 助けてぇぇぇぇっ!」
身体中に射撃を受け、血塗れの彼女が最後に悲鳴のように叫び
同時に転移しました。
追い込まれての重大な決断……
どこだっ……?
見回します。
それはキリサキさんの後ろで。
「凍てつけッ!」
即座に私は、事前に唱えて待機状態だった真言魔法を解き放ち
再転移する前のオトヤマに浴びせました。
「アアアアアーッ……」
……真言魔法上級位階の凍結攻撃魔法「凍結地獄」を
私の杖から射出された魔力の弾は、オトヤマが倒れている地面に着弾し。
その場の温度を急激に下げ。
あたりを輝く氷結の空気で包みました。
その効果範囲直径10メートル前後。
オトヤマの最期の悲鳴は高らかに響き渡り。
凄まじい冷気が消えたとき。
そこには絶命した若い女の死体が転がっていて。
(魔王軍とはいえ、人間の命を奪ってしまった)
そんな想いと
(魔族の手から人間の世界を守るためだ)
そんな想いで
「キリサキさん、やりましたね」
そう言いかけたんですが。
キリサキさんは
(え……?)
私はギョッとしてしまったんですよね。
何故って……
キリサキさん、愕然とした表情をされていたので……。
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