第18話 魔族の神器
「えっと、キリサキさんの世界では、傭兵ってお金儲かるんですか?」
私が理解できないのはそこだった。
何で、他人の尊敬を受けられて、お金だって十分貰える軍隊に入れたのに、ろくでもない人間の代名詞である傭兵になるの?
考えられるのは、軍隊で何か軍紀を犯して、軍隊に居られなくなって逃げ出したパターンだけど……
そんなの、この人らしくない!
私たちの世界では、軍隊に入れるのは強い上に賢くて真面目な人で。
傭兵になるのは、身体能力だけは軍人と同じだけど、人間としての性質は保証できない信用できない人間なんだよ。
何故って。
軍人は、後ろに国を背負っているので、戦争のときに危険な命令でも命令通りに動いてくれることが期待できるけど。
傭兵はそれがないから。
命の危険を感じたら、持ち場を放り出して逃げるかもしれない。
情報を売るかもしれない。
そんな戦力、大事な局面で使えない。
だから簡単な仕事しか回せないし、報酬だって超安い。
これなんだよ。
お金だけでしか繋がってない信頼感って、弱いというか信用できないんだよね。
するとキリサキさんは
「いいや? 儲けている傭兵は存在するが、それは傭兵の組織を作り、そこに在籍する傭兵に限られる。フリーの傭兵は全く稼げないよ」
そして俺がやったのは、そのフリーの傭兵だ。
そんなキリサキさんの言葉になおさら混乱する。
「意味が分かりません! まさかキリサキさん、軍紀を犯して逃げちゃったんですか!?」
思わずそう問うと。
「いや、そんなことは誓ってしていない」
……即座に否定される。
意味が分からない。
目がぐるぐるする自覚があった。
「斧に心当たりですか……?」
私たちは会話にクロリスも交えた。
彼女は1人、この昼食会の食事を制覇しようとして。
1周目を終え2周目に突入したとき。
魔族の意見も聞いてみたくなった私たちに、捕まえられて部屋の隅でこうして尋問を受けている。
「まず最初に申し上げておくこととして、私は四天王の周辺に配置されたことがありません」
さっきまでもごもごしていたものを飲み込んで。
こう答える
「それを踏まえて、斧ですけど」
彼女は教えてくれた。
それは魔導器だ、って。
「魔導器?」
私は彼女の言葉を復唱する。
彼女は頷いて
「創造神シャダムが魔族の王位に最初に就いた男に、魔王の証として生み出し与えた5つの神器です。全て魔王様の持ち物ですね」
……そんなものがあったんだ。
知らなかった。
だから私は
「それはどういうものなの?」
彼女は教えてくれた。
「魔王様に所有を認められた者以外には、魔族全ての重さと同じ重さになる武具です。そして神器ですので決して壊れません」
……勇者の剣と一緒だ。
「それは一体どういうものがある?」
キリサキさんの問い。
クロリスは教えてくれた。
「その効果は私は存じ上げないのですが……」
ちょっと待った。
「効果?」
聞き咎める。
クロリスは頷き
「魔導器には、全て特殊な効果が備わっているそうです」
えーと……
それだと、勇者の剣は魔導器の下位互換品だよね?
勇者の剣の伝承にそういう話、聞いた覚えが無いから。
ど、どうしよう……?
クロリスは魔導器の名前だけ教えてくれた。
効果は知らないと言いながら。
それは……
光の斧
雷の槍
竜の短剣
鏡の盾
波動の剣
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