第17話 音山克子
キリサキさんは語ってくれた。
オトヤマカツコという女がどういう女なのか。
まず、オトヤマカツコは裕福な家に生まれた女だったそうだ。
そして、素頭が良かったらしい。
そのせいで、ほとんど勉強せずに県内有数の進学校に進むことが出来たらしい。
……実は、進学校と言う言葉が良く分からなかったけど、そこは置いておく。
しかしそこで、オトヤマカツコは油断した。
自分は天才であると思い込んだ。
で、少しはしていた勉強を、完全に止めてしまった。
すると、成績はズルズルと落ちて行ったが、それでも「ガリ勉なんてかっこ悪い」と妙なプライドを発揮し
努力を怠り続けた。
そしてもうすぐ学校を卒業し、さらに上の学校に行く時期に来たとき。
ヨビコーという、その「上の学校」に行くために、有料で学問の特訓をつけてくれる施設に入ったんだそうだ。
どうもその、上の学校っていうのが試験を合格しないと入れないらしくて。
上位になるほど、試験が難しくなるとのこと。
オトヤマカツコは上位の上の学校に入りたかったけれど、そのときの学問の成績はとてもそこを狙えるものではなく
プロの指導を受ければ、叶うのでは無いか?
そんな、藁をも掴む選択だったみたいで。
そして
結果は、オトヤマカツコは試験を合格できなかった。どこの上の学校にも合格できなかった。
……キリサキさんの世界では、こういう状態はどうも「とても恥ずかしい」状態だそうだ。
けれども、全ては勉強を怠ったから。
つまり自分が悪いのに。
オトヤマカツコは自分が試験に落ちた原因は「ヨビコーの講師が無能だったからだ」と責任転嫁した。
そして……
その素頭の良さで、ヨビコー講師の集まる部屋にガソリンという燃える液体を撒き、放火して焼き殺す計画を立て。
結果16人を焼死させた。
官憲に逮捕されたオトヤマカツコは
「被害者は自分!」
「無能な講師たちに天誅を与えた!」
と、全く反省せず、被害者をこき下ろす言動をずっと続けたらしい。
そんな話をキリサキさんに教えられ。
私は思った。
……何それ……? 許せない。
怠け者が上に行けるわけがない。
何がガリ勉なんてかっこ悪い、だ。
私は幼少期から、ずっと魔法を勉強して来た。
真言魔法は理論を理解しないと発動させることはできないから、必死でやったんだ。
だって大好きだから。
全てを理解したかったから。
オトヤマカツコは勉強に触れて来て、何も思わなかったのか!?
何か夢は見つからなかったのか!?
……いや、物事に真面目に取り組まないから、夢が見つからないのよ!
「……許せないって顔をしているな。……真面目なんだな」
私が、キリサキさんの話に憤っていると。
キリサキさんがそう、私に言ってくれたんだ。
そのときの彼の声は、何故かすごく優しく聞こえたんだよね……。
その言葉は、私の心に来るものがあったのかもしれない。
だから
「キリサキさん。ありがとうございます」
冷静に考えると、ちょっとかみ合ってない返答を返してしまった。
だけどキリサキさんはそんな私の言葉に応えず
「音山の超能力は、おそらくその放火関係の内容だ」
そう言い切った。
いきなりなのもあったけど
私はそこはちょっと理解できなくて
「それはどういう根拠ですか?」
そう訊き返した。
前例なんて何も無いのに、思い付きで言うのは乱暴なのでは?
するとキリサキさんは
「根拠は……俺がそうだからだよ」
そう答えてくる。
私はその言葉で驚き、続く言葉で
「俺は元々軍隊に居て、そこを辞めた後傭兵になった過去がある。だから俺の超能力はああなんだ」
……色々納得し、色々分からなくなった。
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