第16話 四天王の正体

 魔王軍四天王。


 魔王軍を統率する魔軍騎士たちの上にいる4人の幹部。


 ……私は驚いてしまった。

 ヘブンロード王国に、何でこんなとんでもない情報が来なかったんだろうか?


 そう、思わず耳を疑ってしまうとんでもない情報。




 魔軍騎士たちだけでも恐ろしく強いのに、四天王はその上を行くとのこと。

 戦場でも、四天王が現れたら、国防軍は勝つことを諦め、どれだけ被害を減らせるのかに意識を注ぐということだ。


 加えて。

 信じられないことに


「この国に出現した四天王オトヤマカツコは、女の四天王らしいですね。20才くらいの人間の女」


 そう。

 四天王は人間なんだ。


 人間の身で、魔族の上にいるみたいなんだよ。


 最初は「何で人間が魔族の上位存在になってるの?」って思ったんだけど。


 詳細を聞くと納得せざるを得ない。


 まず、物理攻撃が全く効かないらしい。


 剣で斬ろうとしても、全てすり抜ける。

 矢で射ても無駄。


 そして……


 その手に斧を持ったとき。


 周囲が灼熱の火炎地獄になり、焼き払われるそうだ。

 その熱は火傷では済まず、洩れなく黒焦げの焼死体になるらしい。


 加えて、転移能力を持ってる。


 一瞬で、別の場所に移動することができる。


 ……そんなの、どうやって倒せっていうのよ。


 話を聞いて絶望的な気分になった。

 だから、ちょっとだけ思っちゃったよ。


 もしかしてヘブンロード王国に、魔王軍四天王の情報が来なかったのは、召喚勇者がその強さに恐れをなして、逃げ出すことを恐れてのこと。

 そんな酷い勘ぐり。


「そんな奴を相手に、どう戦えば良いんでしょうか?」


 正直、私はお手上げだった。


 全く攻略法を思いつけない。

 どうすれば……


 キリサキさんなら、何かを思いついたりするんだろうか?


 本来はこういう態度はダメなんだけど。

 私は彼に、キリサキさんに縋る様に問うたんだ。


 どうすればいいのかを。


 するとキリサキさんは少し重めの口調でこう言った。


「四天王音山克子おとやまかつこは俺は知っている」


 え、と思った。


 そんな都合のいい言葉、来ると思わなかったから。


 どういうこと?

 何で知ってるの?


 というより……まさか……!?


「おそらくそいつは召喚勇者だ」




「そんな馬鹿な!? 勇者召喚の儀式は、ヘブンロード王国の秘法ですよ!?」


 ほとんど悲鳴だった。

 考えられなかったから。


 この秘法があったから、ヘブンロード王国は一目置かれていたし、この計画でも全力で護るべき存在として扱ってもらえたのに!?


 だけどキリサキさんは


「元々魔族の秘法だったのかもしれないぞ? 魔族側は使う機会が無かったから気づかれなかっただけで」


 自分の持っている得たものは、他者は絶対に得られないと考えるのは危険な考えだ。

 やめるべきだ。

 でないといつか致命傷を負う。


 ……キリサキさんの言葉には重みがあった。


 そうかもしれない……

 そして


「あとは、何故俺がその女を知っているかという話だが」


 キリサキさんの続く言葉に、私はさらなる衝撃を受ける。


音山克子おとやまかつこと言う女は、俺の世界で東京第一予備校放火殺人事件という凶悪犯罪を起こし、死刑判決を受けた死刑囚なんだよ」


 ……何ですって?

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