第15話 魔王軍四天王

「着きましたよ勇者様方」


 おじさんと一緒に旅をして。

 次の日の早朝。


 ヒウマニ共和国の首都ジンリュウに辿り着きました。


 ……来たことは無いんですよね。

 私が宮廷魔術師になったときには、すでに魔王軍との戦争が始まってて。


 国際交流で他国訪問にくっつくみたいなこと、無かったんで。


 ……知識として知ってはいましたけど。

 確かに建物の形は私の祖国のヘブンロード王国と似てます。


 石で作られた灰色の家がメイン。

 道路はアスファルトで舗装されてます。


 ただ、道路が中央に向かって凹む傾斜ができるように作られているのだけが違いますけど。


 ……ウンチを窓から投げていた時代の名残ですね。

 投げた糞便を、道路中央に集めて纏めて処理するために都合良いように、街が作られているんです。


「ありがとうございました」


 お礼を言い、おじさんとお別れし。


「じゃあ行きましょう」


「ああ」


「はい」


 2人に呼びかけ、歩き出します。

 一応場所は見えてますし。


 大統領府は、王政時代の王城がそうなので。


 そこに行けばいいはずです。

 そして王城は見えてますので……!


 私たちが行こうとする太い道路の先に、大きな白いお城のような建物。

 あれが大統領府の……ハズ。




「よくぞいらっしゃった!」


 大統領府に着くと、すぐに大統領謁見の予定が組まれて。


 私たちは執務室で、ヒウマニ共和国の大統領に謁見しました。

 第12代大統領の……ええと、確かオール・トウカン大統領。


 娘さんが確かワオラ・トウカンだったから。

 ファミリーネームはトウカンで間違いないはず。


 娘さんは上品な女性だったけど。

 その御父上である大統領は……


 うん。

 なんか納得する。


 オーラみたいなものを感じたんだ。

 王者のオーラというか。


 ……国家元首ってのはこういうものなのかな。


 そんなことを思いつつ


「はじめまして閣下。ヘブンロード王国宮廷魔術師のタンザナイト・トリストーです」


 そう名乗って頭を下げ。


「勇者の霧崎啓司きりさきけいじだ」


「ケイジ様の従者のクロリス・クロトーでございます」


 続いて2人が名乗る。


 それを受け、大統領は


「大統領を務めておりますオール・トウカンです」


 そう言って右手を差し出してくる大統領。


 これは、と思ったけど。


「よろしく。任せてくれ」


 キリサキさんがその手を握り返し。

 握手を交わした。


「全力を尽くす」


 ……うん。


 ナイス。


 ……なんだよね?




 その後。

 急遽、昼食会が設けられた。


 本当は宴をしたいところだろうけど。


 今はただでさえ苦しい戦い。


 この状態で、お酒を飲むのはいくらなんでも。

 宴を開いたせいで、まともに戦えず負けるなんて。


 それだけは絶対に避けなきゃ。


 でも、宴のようなものを開かないと、軍がまともに機能しなくなる恐れがあったのかな?

 人間は機械じゃ無いからね。


 昼食会は、料理はヒウマニ共和国の名物の、だし汁と卵と小麦粉を混ぜて、獣の肉と野菜と一緒に焼いたの……

 あと、麺と野菜とひき肉を混ぜて、焼いたの……


 そういう家庭料理が並んだ。


 ……私の祖国でも「ヒウマニ家庭料理」として、わりと料理だけは有名。

 正式名称は何故か私の国では広まって無くて、皆「アレだな」って言うので、分からないんだけど。


 そんな状況で、私は焼いた麺料理を貰って来て、壁の隅で箸を使って食べていた。


 この昼食会で、ヒウマニ国防軍の将校の人たちから聞いた話を思い返しながら。

 すると。


「……なんか表情が暗いな。そういうのは仕事の成功率を低めるぞ」


 そんなことを言いながら、手ぶらのキリサキさんが私の隣にやってきた。

 私は麺料理を食べるのをやめる。


 そして、言ったんだ。

 今の私の心を、重く沈ませている元凶のことを。


「魔王軍四天王という敵が、相当まずいらしいですね」

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