第13話 豚獣人
ヒウマニ共和国の街は、基本的に石で建物が作られている。
ヘブンロード王国と大差ない。
でも、30年前は下水が完備されてなくて。
トイレは部屋でおまるにするのが基本で。
彼らは窓から中身を投げていたらしい。
私たちは1000年前からトイレの概念があったのに。
よく、政治体制の違いでマウントを取られると、よくネタにされるポイントだ。
30年前に窓からウンチ投げていた奴らが偉そうにするな、みたいな。
今はそんなことを止めて、彼らもトイレの設置をしてるんだけど。
未だに喧嘩になると「古臭い時代遅れの王様野郎」「トイレもなかった勘違い野蛮人が」って言い合ってる。
そんな話をキリサキさんにすると
「……そういう確執はどこの世界でもあるんだな」
そんなことを言われた。
キリサキさんの故郷の世界でもあるのか……
国境で警備の兵士にヒウマニ共和国への入国許可証を見せ、入国。
関所の先はまだ街では無いので草原が広がっていた。
「まずはどこに行くんだ? この国の首都か?」
キリサキさんの言葉に私は頷く。
「最初に大統領に謁見し、勇者召喚を報告しなきゃいけません」
他3国が堕とされて今年で2年。他の国は1年程度しか持たなかったのに、ヒウマニ共和国は2年も持ったんだ。
早く教えてあげなきゃ。
この世界の救世主がとうとう召喚されたんだ、って。
「ではどこかで馬を確保しましょうか」
クロリスはそう言って周囲を見回す。
そして「行け」の一言で、上空に彼女の使い魔のフクロウを飛ばした。
通行人から接収する方向で考えているのかな?
世界のためなんだから、頼めば大丈夫そうな気はする。
そういえば
「クロリスはどうやって、勇者の祠にまで行ったの?」
魔族が入り込んでいるのはヒウマニ共和国までで。
基本その先は魔族はいないはずだから。
クロリスはここから歩いて来たことになる。
もし、何かアシを使っていないのなら。
すると
「強奪しても良かったのだが、騒ぎになって使命を失敗してはいけないので、ずっと歩きだ」
……マジで?
魔族の女騎士、体力半端ないね……?
私は宮廷魔術師だから、騎士やってる人ほど鍛えて無いし。
ましてや向こうは魔族だからなぁ。
……魔族は基礎体力も人間を上回るんだよね。
魔族の女性で既に、人間の成人男子より強いんだよ。
どのくらい強いのか、比較した人がほとんどいないから分からないんだけど。
そんなことを考えていたら
クロリスが「あっ」と声をあげた。
「何かあったの?」
訊ねる。
すると
「……向こうでオークの集団に荷馬車が襲われている」
なんですと!?
「ぐへへへへ」
クロリスの案内に従って走っていくと。
本当に3頭立ての馬車が襲われていた。
槍や斧で武装した豚の顔を持つ獣人種・オークたちに。
オーク……人間から作られた豚の獣人だ。
作成者は魔族。
豚の体力と、人間の知能を併せ持つ合成生物で、元々単純な重労働をさせるために作った生き物だそうだ。
鉱山労働だとか、農業だとか。
そんなところでの、あまり知性の要らない単純な重労働部分を担当させる生物。
水汲みとか。石運びとか。
でも今は、魔王軍の雑兵で。
その豚と人間の合成生物という部分が最悪な方向で働いている。
オークたちの中の1匹がこっちに気づいて言った。
「オイ! あっちに人間の女が2匹も居るブヒよ!」
「ぐへへへ! 孕み腹が2つも来たブヒ!」
……作成目的として、力の強い男しか要らないので。
オークには女は居ないんだ。
そういう風に作られている。
だから、増えるために。
人間の女性に自分の子供を産ませられるように出来てるんだよね……!
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