2章:魔王軍四天王との遭遇 ヒウマニ共和国

第12話 ヒウマニ共和国

 勇者の剣を手に入れた私たちは、その足でそのまま馬車に乗り、ヒウマニ共和国との国境までやってきました。


 一応、勇者の剣回収の許可をいただいて城を出る際、陛下から魔王討伐に掛かる費用の問題を解決するために


 道中の国で要求された金銭の負担は、全てその元首持ちになる各国の国璽こくじが入った書状と


 それが通じなかった場合に備えた宝石類


 この2つを発行&下賜していただいてるんですけど。


「乗合馬車ですみません」


 私がそう、キリサキさんに頭を下げると


「別にどうでもいい。もっと乗り心地の悪い乗り物に乗ったことは何回もある」


「ケイジ様は無欲な方だな。私の前の主はそうでは無かったぞ」


 キリサキさんの隣に、寄り添うように座っているクロリスがそんなことを言いました。

 感服しているような口調で。

 前の主……魔王のことですかね?


「魔王のことか?」


 少し興味を覚えたのか、キリサキさんは視線をクロリスに向けます。

 クロリスは頷いて


「偉大な存在はそれに相応しい生活を送るべき。そういう思想で、生活調度品は世界最高のモノを揃えて……」


 そう言うんですが


「国家元首なんだから、別にそれは普通だ。国家元首は国の代表なんだ。粗末な生活を送っていたら、その下の国民の生活も粗末なんだという話になる。それは国の恥だろ」


 そう、クロリスの言葉を否定。

 自分を立てる意見であったにも関わらず、です。


 するとクロリスはそれが意外だったようで


「我ら魔族は強欲を恥としていて……」


 そんな彼女らの常識を持ち出して返すんですけどキリサキさんは


「まあ、キミらは外国の概念が無い種族だしな。そうなるのも仕方ないのかもしれない」


 そんな風に、腕組みして座ったまま返しました。

 うーん……


 そう言う会話、乗合馬車でやるのはやめて欲しいかな!

 たまたま、お客が私たち以外居ないから大丈夫ですけど!




 目的地に着いたので、書状を見せて支払い代わりに私の名前をサインして。

 去っていく馬車を見送って。


「行きましょう」


 歩き出します。


 ここから国境はすぐそこです。


「ヒウマニ共和国か」


 キリサキさんは私について歩きながらボソリと言います。


「……王政の国じゃないんだな」


 ホンの少し、意外そうに。




 ヒウマニ共和国。

 建国30年くらいの若い国で、ヘブンロード王国の隣国。


 以前はヒウマニ王国って名前の王政の国だったんですけど


「そのときの王様が、国家財政を傾けてでも愛人との贅沢に嵌る人で」


 朕は后の幸せのためならば、国をも捨てる!


 こんな言葉を残してるんだ。

 そのせいで……


「革命が起きまして」


「よくある話だな」


 キリサキさんはそう私の話を評しました。


 えっと


「……キリサキさんの国にも王様がいらっしゃるんですよね? 驚かないんですか?」


「別に?」


 キリサキさん、ホントに何も感じて無さそう。


 これ、王政の国のヘブンロードと共和国であるヒウマニの文化の違いで、一番大きなもので


「喧嘩の理由になるところでもあるんですけど……」


 ヒウマニは、税金を一定額以上納めている上級市民が、選挙で国の代表である大統領を選出し、その人物を国家元首に選んでる国で。


 彼らは内心「自分たちこそが人間の国の在り方で最も進んでいる」と自負してて。

 よく衝突のネタになるんだよね。


「そんなの、たまたまそう行きついただけだ。どっちが上とか下とか無いと思うぞ」


 キリサキさんの言葉。

 それに関して私は


 確かに、そうかもしれない。

 王政が劣ってて、大統領制が優れているとか。

 その逆が真理とか。

 明確な根拠、無いよね。


 そんな風に、ちょっと思ってしまった。

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