第8話 それはダメでしょう!?

 私たちは祠の洞窟の最奥に駆けつけた。


 するとそこには……


 輝く魔力の球体と


 白と黒の執事風上下に身を包んだ女がいた。

 髪型はボブカット。色は黒。


 そして肩にフクロウを乗せているので、真言魔法の使い手みたい。

 杖を持っていないけど。

 発動体効果のある指輪で代用しているのかな?


 体型はかなりグラマラス。

 出るところはしっかり出てて、腰回りみたいな締まるべきところはしっかり締まっている。

 だから多分男性が好きそうな体型。


 顔は美人系。目付きがクールな感じ。


 で……


「あなた、こんなところで何をしてるの?」


 そう後ろから声を掛けると、ようやく私たちの存在に気づいたみたいで


「え!? え!?」


 混乱し、慌てていた。


「……ここは勇者の剣を祀っている祠だ。こんなところに一体何の用なんだ?」


 キリサキさんの言葉。

 その言葉に女は


「えっと……で、伝説の剣をどうしても見たくて……」


 女はそう、薄笑いを浮かべつつこちらを見てそんなことを。


 これは……


「名前は?」


 キリサキさんは、淡々と訊く。

 このとき、意味が分からなかったけど


「えっと、クロリス・クロトーです」


 女はそう名乗った。

 笑顔が引き攣ってる気がするのは気のせいだろうか?


 彼女の名乗りを聞き


「そうか。キミはクロトー家の人間なのか」


 キリサキさんはうんうん頷きながら


「あの、卑しい裏切り者の一族の出の女なんだなキミは」


 ……突然そんなことを言い出した。


 え……?


 いきなり訳の分からないことを言い出したキリサキさんに、私は絶句する。

 キリサキさんはそんな私に全く気を向けずに


「クロトー一族の人間は犯罪者が多く、女は大体が売春婦と聞いているが、キミもそうなのかい?」


 え? え? え……?


 なんか、普通に殴られても、いや刺されても仕方ないくらい失礼な内容の言葉を、ポンポンとキリサキさんは口にしていく。


 私は動けなかった。


 意図が全く読めなかったから。


 

 女は……目を吊り上がらせてわなわなと震えていた。


 そして


「ふざけるな! 誰が売春婦だ! 取り消せ!」


 激高し、叫ぶ。

 強くキリサキさんを睨みつけながら。


 だけどキリサキさんはそれに全く動じずに


 こう言ったんだ。 


「馬脚を現したな、魔族」


 え……?




 キリサキさんは淡々と続けた。


「人間族であるならば、自分だけでなく血族全てを侮辱されておきながら、そんな怒り方はしない。だからお前は魔族だ」


 あ……!


 確かにこの女性、自分の事ばっかりで、親兄弟を侮辱されたことを怒ってない。

 ということは……


 私は女を見た。


 女は目を見開き、震えていた。


「個人が大事で、血族も何もかも無視する。完全なる実力主義。……お前の反応は魔族の反応だよ。残念だったな」


 そうキリサキさんが言い放つと


「……人間如きが、この私を嵌めるとは……耐えられぬ屈辱」


 そう言いつつ。


 彼女は正体を現し始めた。


 肌の色が青白く染まり、側頭部から2本の捩じれた角が生えてくる。

 そして額に縦に裂けた3つ目の目が出現する。


 ……完全なる魔族の姿。


 それを見て、キリサキさんはこう言ったんだ。呟くように。


「……俺の勘は当たってたか」


 え?

 ちょっと待って……?


「動揺しているようだったから、揺さぶり掛ければ正体をゲロすると予想したんだが……その通りだったな」


 その言葉を聞き、私は心で叫んでいた。


 キリサキさん!

 確信も無しに、さっきあんなに酷いことを言ったんですか!?

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