第11話 人との変化
ゆっくりとクロードさんの部屋の扉を閉じた後、私は隣の部屋の扉を開いた。
あの時気を失っていた少年はベッドの上に座っていた。
目の色が違う…
ルビーのような瞳は、サファイアのような青色の澄んだ瞳に変わっていた。
「こんにちは、私のこと、わかるかな?」
近づいて、聞いてみると、少年はへにゃっと笑った。
「わからないけど、こんにちは。」
か、かわいい!
「じゃあ、挨拶したほうがいいかな。私はセレネディア、ルナ、リュンヌ。あなたは今私の家、リュンヌ大公家の家にいるわ。」
少年に教えると、彼の目が大きく開いた。
「リュンヌ大公家…えっと、僕の名前は…」
少年は一瞬俯くと、もう一度私のことを見て首を横に振った。
「わからない。記憶が、ない。」
頭を抱えて、少年は申し訳なさそうに呟いた。
もしかして、暴走したせいで忘れちゃったのかな。
「そっか。…どうする?名前をあげれることもできるけど…」
でも、初めて会った人に名前をつけてもらっても嬉しくないよね。
「時間はたくさんあるから…好きな名前ができたり、教えてね。」
まだ一人にしていた方がいいかも。
パパにこの子のこと聞かなくちゃ。
「私、もう行かなくちゃいけないから、また来るからね!明日絶対に!」
約束だよ!と、彼にいうと、少年はにっこりと微笑んだ。
「うん!」
パタン、と扉を閉めると、私は隣の隣のパパの執務室に向かった。
「パパ!」
思いっきり扉を開くと、さっきまで寝ていたクロードさんとパパが深刻な顔で話し合っていた。
「ディア、ノックしてね。」
少し怖い笑顔を浮かべて、パパはいつもの優しい声で注意した。
「ごめんなさーい。クロードさん、こ、こんにちは!」
パパの方をずっと見ているクロードさんに挨拶をすると、さっきとは違う、光のない目で私の心を見透かすようにじっと見つめてきた。
「お久しぶりです。ディア嬢。」
やっぱりまだ敬語。
朝のことは忘れちゃったのかも。
「ディア、ちょうどもうすぐで昼食の時間なんだし、一緒に食堂に向かってなさい。」
パパナイス!
私はクロードさんの手を掴み、パパの部屋から出ていった。
「あとでねー!クロードさん、行きましょう!」
るんるんと食堂に向かっていると、急にクロードさんが立ち止まってしまった。
私も慌てて止まると、クロードさんは振り向き、さっきとは違う、戸惑ったような顔で聞いてきた。
「なんで…部屋に入ってきたのですか。」
声には、少し怒りが混じってる。
怒らせちゃったかな。
「ごめんなさい。ちょうど隣の部屋に行く途中で、挨拶したかったの。」
ごめんね。と、もう一度言うと、クロードさんは前を向き、食堂へ向かっていった。
手が震えてる。
相当怒ってるのかな。
『時間を操る者がその心配はないと言っております』
『民の上に立つ者が彼は大丈夫と言っております』
また人が増えてる。
そっか、あなたたちが言うならそうだよね。
頭をブンブンと振った後、私は前を向いて、クロードさんのところに走っていった。
こんにちは、突然ですが、転生しました。 @Sakurayanagi
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