第4話 茶会の後

温室のティーパーティをきっかけに、私は友達が二人できた。

「リクー!友達が二人もできたよー!!」

リクに抱きつくと、リクはいつも通りの真顔でこっちを見た。

「よかったですね。」

リクは本を閉じると、私の頭を撫でた。

「ちょっ!リク!」

急にどうしたのよ!と、内心思いながら、仕返しにリクの頭をクシャクシャと撫でる。

「姉様、仕返しはやめてください。」

嫌そうな声でこっちはジト目で見るリクは、相変わらず可愛い。

「ごめんってー!可愛いなあ。」

おでこをくっつけて、私は何度もリクの頭を撫でた。

恥ずかしそうに目を逸らすリクは、天使を越えた、もう、言葉では表せない。

私と同じ、淡藤色の髪と、菫色の瞳。

お兄様はパパに似てるから、青紫の髪なんだよね。

「リク、大好きだよ。」

「急になんですか。」

恥ずかしそうにリクがこっちを見つめ返す。

「姉様、そのことより、今は覚醒式の準備をするのが先ではないのですか?」

いつも通り真面目な顔に戻ったリクは、現実を突きつけてくる。

「げっ!そうだった!ちょっとパパのところに行ってくる!」

完全に忘れてた!

「ありがとね!リク!」

リクの部屋を飛び出すと、私はパパの執務室に向かった。

覚醒式とはーこの世に生まれてきた人間が8歳になる

とやる儀式で、

英霊、神獣、精霊のどれかと契約し、能力をもらう事ができるのだ!

「パパ!覚醒式ー」

扉を開けて、聞こうとしたが、先客がいたみたい。

黒髪に赤い瞳を持つ少年が、振り向き、こっちを見た。

お兄様より少し下くらいの年齢かな。

「ディア、ノックしてから入りなさい。覚醒式はディアの誕生日の翌日、四週間後だよ。」

にっこり笑顔でパパが説明してくれた。

まだそんなに時間があったんだ!

「パパありがとう!」

お礼を言って、去ろうとすると、いつの間にか私の隣に立っていたパパに抱っこされた。

「ディア、去る前に、挨拶しなさい。この子は、君の従兄弟、僕の姉の息子、クロードだよ。とある事情で引き取ることにしたんだ。」

パパにおろされると、クロードはペコッとお辞儀をした。

「こんにちは、セレネディア様。クロードと申します。」

形式的な挨拶をされ、内心戸惑いながらも、皇室の茶会の後に練習したカーテシーを決めた。

「こんにちは。クロード様。セレネディアです。様をつけるのは堅苦しいので、ぜひディアと呼んでください。敬語もやめましょう。」

クロードさん、目に光がない。何か事情があるんだろうなぁ。

「わかりました。ディア嬢。」

やっぱりまだ敬語かぁ。

私の方が年下なのにな。

パパと目を合わせると、少し困った顔で微笑んだ。

やっぱり、何か事情があるみたい。

あとでパパに聞いてみよう。

とりあえず、リクのところに戻ろう。

「クロードさん、また会いましょう。」

私はパパの執務室を出て、リクの部屋に戻った。

「リーク!覚醒式は四週間後だって!」

「そうですか。よかったですね。」

また同じ返事〜。

でも、ちゃんと私が来ると本は閉じてくれるのよね。

そういうところが可愛いんだよなぁ。

「お嬢様、王女殿下から手紙が。」

リクのことを後ろから抱きしめていると、テアが空から降ってきた。

「わっ!テア!ありがとう!」

手紙を受け取ると、私は手紙を慎重に開封した。

アンナ王女様とエミ王女様からだー!

『ディアちゃんへ。先日のお茶会では、エミのことを手伝ってくれてありがとう。ディアちゃんのおかげでエミは図鑑のことを、もっと教えてくれるようになったの。お礼と言ってはなんだけど、ディアちゃん、もうすぐ覚醒式でしょ?覚醒式って、ティアラをつけて行うのだけれど、そのティアラ選びを手伝わせて欲しいの。いいかしら?嫌だったら断ってね。また王宮に来てね。ー第一王女、アンナと第二王女、エミより。』

手紙を読み終わると、私はその場で固まった。

覚醒式でティアラをつけるのって、確か王女と大公女だけよね!?

あ、忘れてた。私大公女だったんだった。

でも、王女様が選んでくださったティアラをつけて行ったら、すごい思い出として残りそう。

「テア、紙とペンを用意して。返事書くから。」

「承知しました。」

テアは一瞬にして消えると、すぐに紙とペンを持って再度現れた。

「リク、テーブル借りるわね。」

紙を机に置き、私は返事を書き始めた。『アンナ様へ。こちらこそ、お力になれたのならば、本望です。本当にあの日は楽しかったです。エミ様の図鑑、いつか私も見てみたいです!そして、ティアラの件についてですが、ティアラ選び、是非手伝ってください。あまり宝石のことや、ティアラの事がわからず困っていたところでしたので、アンナ様のような素敵なお方に選んでもらえるのなら、これほど幸せなことは他にはないでしょう。来週にでもうちに来てください。エミ様にも、よろしく伝えておいてください。ー大公女セレネディア』

これでいいのかな?手紙なんて書いたことないから、失礼なこと書いちゃってるかも…

「テア、王宮にこれ送っといて。」

「かしこまりました。」

またアンナ王女様とエミ様に会える!

楽しみだなぁ!

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