第5話 フローラの森での冒険

「お嬢、王女様方が到着したみたいです。」

珍しくパパの影のナイトが伝言係として私の目の前に現れた。

「王女様たちが!すぐに行くって言っといて!」

一週間が過ぎ、今日はエミ様とアンナ様と共にティアラを探す日。

「エミ様!アンナ様!ようこそ!リュンヌ大公邸ヘ!」

玄関まで走り、私は二人のことを迎えた。

「ディアちゃん、様付けはなしでしょ?私のことはお姉ちゃんって呼んでね!」

カッコ良すぎる笑顔で言われ、私はこくりと頷いた。

「あ、アンナ姉様、エミちゃん、ズボンとシャツ姿もすごく可愛い!」

なれないけど、なんかすごい近づけたみたいで嬉しいなあ。

「ディ、ディアちゃんこそ可愛い。」

エミちゃん、ちゃんとアンナ姉様の隣で堂々と立てるようになったんだね。

人見知りが少しでも治ってよかったあ。

「ありがとう!馬車は用意したから、早速レッツゴー!」

張り切って馬車に向かおうとした瞬間、アンナ様に手をつかまれた。

「ディアちゃん、私たちが向かうところは馬車では行けないわ。だから、この子に乗っていくの!」

アンナ姉様が思いっきり笛で音を鳴らすと、羽のついた馬が空から降りてきた。

白い毛並みが光り、馬は鼻を鳴らす。

「この子は、私の相棒、ペガサスのリンよ。二人とも、乗って!」

アンナ姉様に抱っこされ、リンの上に乗せられた。

一番前にエミちゃんが乗り、アンナ姉様は一番後ろに座った。

紐が私とエミちゃんを包み、アンナ姉様が紐を勢いよく叩きつけると、リンは走り始め、羽を羽ばたかせ、空に飛び立った。

「しっかり掴まっててね!」

風圧に押されながらも、私たちは雲を突き抜け、目的地に向かった。

「アンナ姉様、どこにいくの?」

エミちゃんにガッチリとしがみつきながら聞くと、アンナ姉様は悪戯っぽい声で「なーいしょ!」と言い、スピードを上げた。

「後十分くらいで着くから、その時になればわかるわよ。

もう少しだけ進んでいくと、アンナ姉様は空の上で止まり、一箇所で手を広げた。

「開け!フローラの森よ!」

呪文のようなものを唱えると、さっきまで群がっていた雲が一瞬にして消え、綺麗な森が現れた。

待って、今何が起こったの?

混乱して目が回っていると、アンナ姉様はクスッと微笑んだ。

「今のはね、初代王の娘、春の女神フローラの血が濃い人のみ使える魔法よ。ディアちゃん、この飴を舐めながら飛び降りなさい。この森の中を探検していれば、ディアちゃんだけのティアラを見つけられるはずよ。いってらっしゃい。」

…え?ええええええっ!?

頭が追いつかない。

この王女、ストイックすぎるでしょ!

でも、私を殺す気はないはずだし、えみちゃんもがんばれの視線を送ってくれてるから…

信じるしかない!

飴を口の中に入れて、私は森の中に飛び込んだ。

「いってきます!」

目を瞑り、風圧に負けそうになっていたら、突然落ちる速度が低下した。

目を開くと私はふわふわとくらげのように降りていた。

この飴、すごーい!

足が地面を触り、私は周りをキョロキョロと見渡した。

周りにすごいものはないけど、綺麗な池がある。

池の近くまで走り、芝生の上に座った。

エメラルドグリーンの池なんて、初めて見た!

「ねえ、あなただあれ?」

じーっと池を観察していると、後ろから声をかけられた。

振り向くと、黄金の髪にピンクトパーズのような瞳を持つ少女がにっこり微笑んでいた。

「私?私はねえ、リュンヌ大公家のルナだよ!」

ディアと言おうとしたら、なぜか口が勝手にルナと名乗ってしまった。

「そっかぁ!あなたが今回のルナなのね!ようこそ!平和の森へ!私はルーチェ!よろしくね!」

ルーチェは私の手を掴むとペコッとお辞儀した。

「よろしく!ルーチェ!」

今年のルナって、どういうことなんだろう?

気になるけど、今はティアラ探しに集中しなくちゃ!

「ルーチェ、私探してるー」

「知ってる!あなたが探してるものは知ってるわ!ついてきて!」

ルーチェにぐいっと手を引っ張られ、私は森の奥へと走っていった。

奥へ奥へと進んでいっていると、透明な画面が私の目の前に表示された。

『チャットを開始します。』

え!何?

画面は切り替わり、人(?)の意見がどんどん画面に載せられていった。

『チャットがあなたを受け入れました』

『黄金の髪を持つ女性があなたに挨拶をします』

『闇夜の少女があなたを歓迎します』

ピコンピコン、と音が鳴り響くが、ルーチェは気づいてないみたい。

こっちを一切見ずに私のことを引っ張りながら走り続けてるから。

『月の兎があなたの力に驚いています。』

『聖なる獅子が雄叫びをあげます。』

人間以外にもいるんだ!

『宇宙の母があなたのことを抱きしめたがってます。』

『星の双子がにっこりと微笑んでいます。』

すごい。めっちゃきてる。

『太陽の少女があなたの友達になりたがっています』

友達になってくれる人もいる…

この人や、動物たちは何者なんだろう。

この森に通じる何かを持ってるのかな?

「ルナ!ついたよ!」

ルーチェの声が聞こえてきて、ハッと上を向くと、ありえないほどに綺麗な空間が広がっていた。

複数の不思議な木材でできた家を取り囲むエメラルドグリーンの湖。

「ようこそ!私たちのオアシスへ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る