第2話 王家との茶会

「お嬢様、皇宮に行きましょう。」

朝起きたら、ベッドの隣に座っていたテアに突然言われた。

「え、なんで?」

「忘れたのですか?今日は王帝陛下御一家と遊ぶ日ですよ。」

え?

ええええええっ!?

「ほら、早く行きますよ。」

お風呂の中に放り込まれ、身支度を整えられた後、私はパパとお兄様と共に、馬車にのった。

さ、さすがテア。

支度が早すぎて記憶がない。

「ディア、緊張してる?」

お兄様に聞かれ、私は首を横に振った。

緊張してないのよ?ただね、驚いたのよ。

急に朝起きたら着替えさせられて、馬車に乗せられて、気がついたら兄様の膝の上で座ってたから。

そういえば、王家の人達に会うのは初めてだな…

確か、第一王子がつい最近婚約を結んだんだよね。

相手は、隣国の公爵令嬢、咲絢奈様だったはず。

第二王子はまだ婚約してなくて、二人の王女様たちもまだよね。

「ディア、ついたよ。」

馬車の扉が開き、私はお兄様に抱えられたまま、王宮の中に入った。

何ここ、でっか!

うちも広くて大きいけど、ここは比べ物にならないくらいでかい。

長い廊下を歩き、温室の扉の前に着くと、後ろから人が走ってきた。

「大公様!」

エメラルドグリーンの瞳が合う、パパと同年代くらいのお兄さんが困り果てた顔でパパのことを見つめた。

すごい。この人、あんなに走ってたのに、息一つ切らしてない!

何者だ?

「宰相。久しぶりだな。娘と息子も一緒か?」

パパが聞くと、宰相さんの後ろから私と同い年くらいの女の子と、お兄様と同い年くらいの少年が顔を出した。

「ライオスー!遅いじゃないか!お!その子が噂の妹か?」

少年はお兄様の頭をわしゃわしゃと撫でた。

お兄様のことを名前で呼んでる…友達かな?

「おい、僕の妹に近寄るな。頭を撫でるな。早く挨拶をしろ。」

お兄様、宰相さんの息子さんのことを睨まないで。

友達でしょ?

「わかったわかった。そんなに怒るなよ〜」

この人、めっちゃ軽いな。

宰相さんの息子さんはくるっと回ると、綺麗なボウアンドスクレープをを決めた。

「お初にお目にかかります、大公女様。僕はステルラ公爵家長男、ヘリオス ソレイユ ステルラです。そして、こっちが…」

「ステルラ家長女、アコ エルピス ステルラです。大公女様、お会いできて嬉しいです!」

カーテシーをした後、アコは顔を上げてニコッと微笑んだ。

か、可愛い!

二人の挨拶が終わり、私も挨拶をするために下に降りた。

「リュンヌ大公家長女、セレネディア ルナ リュンヌです。私も会えて嬉しいです。」

ペコッとお辞儀すると、アコに手を握られた。

「可愛いー!兄上、大公女様って天使のようね!」

アコは輝いた目でヘリオスさんの方を見た。

「ああ。ヘリオスと違って愛嬌があるな。」

「当たり前だろ。セレネは天使だぞ?」

ヘリオスさんがこくこくと頷くと、お兄様は呆れながらヘリオスさんに語った。

ちょっと、兄様…

「それを言うなら、僕の妹だって天使だけどな。」

ヘリオスさんが言い返すと、アコちゃんがクスッと笑った。

「兄上、ほんと馬鹿ですね。」

耳の中にこそっと言われ、私は頷いた。

「父上から温室の中に入る許可をもらいましたので、お兄様たちのことを置いて先に入っちゃいましょう。」

「うん。」

リクはパパといるみたいだから、大丈夫だよね。

アコちゃんに連れられ、私は温室の中に入った。

「アコ。」

「どうしましたか?」

名前を呼ぶと、アコちゃんは振り向いた。

「タメ口でいいよ。友達でしょ?」

敬語は堅苦しいもん。

答えを聞くためにアコちゃんの顔をじっと見ると、彼女は満面の笑みで頷いた。

「わかった!ディアって呼んでもいい?」

「…!うん!じゃああこちゃんて呼ぶね!」

初めて、友達ができた!

喜びを噛み締め、温室の花の香りを楽しみながら、私はパパとともに王陛下と見られる男性が座っているところに行った。

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