第17話 ロープで引っ張られ、異世界へ
「俺は行かないって言っただろおお~!?」
現在の場所、異世界。
俺こと青木は体をロープで縛られ、優女に引かれ、上空を飛んでいた。
俺が異世界には行かないって答えると、優女たち三人が俺を取り押さえようとしてきたので抵抗していたら、最後に浅川の女神パワーで強制的にこの状態にされ連行された。
皆それを飛ぶことができるためこの状況。
俺は優女に無理やり引っ張られる形で宙ぶらりん。
異世界に行くにあたり俺たちは異世界のファッションに合う服に着替え出発した。
「お兄ちゃんの戯言はともかく、どこに行く?」
優女、兄の言葉を戯言呼ばわりとはいい度胸だ。
あとでお仕置きしてやる。
「そうね、浅川さんは何か気になるところでもある?」
リアサが聞いた浅川は前髪の一部と瞳の色を黄金に変えイメチェンしている。
今後は現代でもこの感じで行くらしい。
折田と付き合って早々イメチェンとは、折田の反応が気になるところだ。
「そうですね~、試しに青木兄君の築いたという国に行ってみるのはどうですか?」
「あっ、さんせ~い!」
「ならそこに行きましょうか……それで方角は?」
「わたしがわかるので案内しますよ~」
三人は俺を引っ張りながらものすごい速度で空を飛び、あっという間に俺が異世界で暮らしていた街、というか国に着いた。
街の住人達は突然空から降ってきた俺達に注目した。
そして四人の中に俺が居ることに気づくと、大人は頭を下げ、子供は手を振り去っていった。
俺は道端にばったりと倒れたままじゃいけないと思い立ち上がる。
そして力を込めて両腕を広げ、ロープと身体の間に隙間を作る。
それを利用して抜け出し、街の様子を見てる三人に合流する。
「へえ、よくできた街ね、綺麗で街の住人も楽しそうに笑ってる」
リアサが褒めてくれて少し嬉しい。
この街の作りはドワーフ族の人たちと話し合い作られたものだ。
施設の中には妖精族によって作られた魔道具なんかも利用していてかなり充実している。
「この国の王様というか、代表は誰なの?」
リアサはこの街の代表が気になるみたいだ。
さすが生徒会長、上に立つ人間は調べたくなるのだろうか。
「前までは俺が代表だったけど今はウンディネかな……」
「へえ、どういう人?」
優女が興味を持ったのか聞いてくる。
この世界には七大精獣と呼ばれる、この世の神とも恐れ敬われる存在がいる。
水を司る精竜、風を司る精狼、土を司る精亀、火を司る精鳥、雷を司る精猿、闇を司る精猪、光を司る精蝶。
この七種の精獣がこの世の元素を司っているとも言われている。
そんな中の一種である水を司る精竜の名前がウンディネ。
彼女がこの国の今のトップである。
そのことを説明した。
「へえ、ウンちゃんそんなことやってたんですね~」
「浅川はウンディネと知り合いなのか?」
ウンちゃんとか呼んでるし……。
「まあ、お互い神と呼ばれる身ですから……顔と名前は知っているみたいな感じです」
優女が裾を引いてきたので見て見ると、あるお店を指差していた。
指の差す場所を見ると看板にラーメンと書いてある。
優女がなにを言いたいのかわかった。
「この世界でも現代の料理が食べれないかと思ってな、街の住人のスキルに頼って何とかいろいろ作れるようになったんだよ」
作物系、農業系のスキルを持っている住人が何人かいて可能な限り望んだ素材を集めることに成功した。
それから量産体制を整え街の住人の生活の利用し、飲食店を営業する者も増えた。
この街のお金は作物や魔道具の流通により成り立っている。
他の国や街に出稼ぎに出ているこの国代表の商人たちによって仕入れ、この国で働く住人に分配している。
直接国同士で同盟を結び物資のやり取りをしてはいないが、この国の存在が他国にバレるのは時間の問題だろう。
「ならラーメン食べたい!」
「わたしもこの街の料理のレベルに興味あるわ、どこまで再現できているのかしら」
「なら行きましょうか~」
そう言って三人は歩き出す。
俺、さっき昼食とったばかりなんですけど……。
そう思ったがしぶしぶ着いて行くことにした。
店に入り、俺は店長に頭を下げた。
「おっ、ハルト様じゃないですか! お連れの方はご友人ですか?」
「ああ、そんなとこ、豚骨ラーメン一つ頼む」
「あいよ、豚骨いっちょー!」
俺はこの店のメニューと味を知っているからすぐに頼む。四人で座席に座り、三人がメニュー表を開く。俺は出されたお冷を飲みながらあくびをする。
「そうね……わたしはこのチャーハンを」
「わたしは冷やし中華で!」
「わたしは天津飯をお願いします」
「お前ら……ラーメン頼めよ」
こいつらラーメン食いに来たんじゃなかったのかよ……。
ここは一応ラーメン屋さんなんだが。
俺はメニュー表を直しにかかる三人にツッコまずにはいられなかった。
数分後、まず俺の頼んだ豚骨ラーメンが届いた。
俺のラーメンをじっと見てくる三人。
どうやら味が気になるようだが、それなら自分で頼めよと言わずにはいられない。
「一口ずつ食うか?」
俺がそう聞くと頷く三人。
豚骨ラーメンを横にずらし、隣に座る優女に渡す。
俺は三人が分け合うのを待ちながらボオとする。
数分後、まだかなと思いながら待っていると優女がラーメン鉢をずらしてきた。
やっと食べれると思い中を見ると空だった。
「て、おい! 俺のラーメン全部食ったのか!?」
「美味しかった」
「ごちそうさま、まあまあの出来ね」
「美味しかったです」
「お前ら……」
俺は勢いで立ち上がったもののまあいいと座り直す。
あまりお腹は空いてなかったなかったのだ。
これぐらいいいかと思うことにする。
どうせならこの三人にはできるだけこの店の味を楽しんでいって欲しい。
お冷を飲みながらそう思う。
三人の下にそれぞれ品が届き改めて食事を始めた。
俺は店長にこの街の最近の様子を聞くことにする。
「最近ですか? 変わったこともなく平和そのものですよ」
「そうか……ウンディネの様子はどうだ?」
「時々見るウンディネ様は、ハルト様がいないから、寂しがってましたよ」
嘘だな。
ウンディネが寂しがるところなんて想像できない。
あいつはこの世界が誕生したときから存在する精獣なのだ。
そんな存在が人一人いなくなったぐらいで寂しがるとは思えない。
どうせ仕事が忙しくて押し付ける相手もいなく困っているのだろう。
「このチャーハン、まあまあね」
「冷やし中華の再現度はまだ足りないかな?」
「天津飯もそこそこですね」
「……お前ら、素直に美味しいって言えよ」
この店の再現度はまだ発展途上だが、美味しいことには間違いないのだから。
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