第15話 こいつが……?


俺そっくりのフィギュアを見て興奮する優女に自慢げに胸を張る浅川。それを興味深そうに見てるリアサと呆然とする俺。優女はなんでこんな代物を浅川に頼んだんだ?こんなもの作ってもらったところでなんの役にも立たないだろうに。


「紹介します、フィギュアナンバーゼロ、青木兄君だよ」


「やったー! ありがとう浅川さん!」


「じゃあ細かい説明をすると……服を脱がせれば見れますっ」


「な、ん、だ、とっ!」


おいちょっと待て……服を脱がせれば見れるって俺の裸か?おいおい冗談だろ?あはは……浅川め、説教が必要だな。フィギュアの下に女子三人が集まり俺から見てフィギュアが見えなくなる。


「この腹筋は優女さんのリクエスト通りでしょ?」


「ふむふむ、実物には劣るけど……合格」


「青木君って結構鍛えてたのね」


「ズボンを脱がせればほら」


「わあー、わあー!」


「へえこうなってるのね」


「大きさも実物通りだよ、わたしの女神の眼で視えないことはないからね」


「これをゴシゴシするとっ」


「あっ、大きくなった!」


「されにゴシゴシすれば……」


「白い……糸?」


「本当はネバネバした液体にしたかったんだけど……糸で勘弁してね、汚れるから」


「汚らわしいわね……」


俺は浅川に後ろから接近し、その後ろ襟を掴んだ。


「うん?なに青木兄君? ブフッ!」


俺は浅川の頬を掴みミシミシと握力をこ込める。


「なあ?浅川? なんてもの使ってくれてんだよ?」


「だっへたほまれたかは……」


「俺の意思は? 俺の許可を取ろうと思わなかったのか? 二人にお礼として応えるのはいいけど……内容がこれなら俺に一言断れよ? 俺の意思は? 二人のお礼に俺の自由意思が感じられないんだけど? あれかお前、折田と付き合えて調子乗ってんのか? 俺がお前の頼みを都合よく聞いたから大丈夫だろうと考えたのか? はっ、ふざけんなっ、俺に恥かかせてそんなに楽しいか? 俺が二人が付き合えるように頭を下げたの忘れたの? お前バカなの? お調子者なの?」


俺が浅川の答える隙なく捲し上げると浅川の目が左右に泳ぎまくった。こいつきっと全部図星だったんだろう。俺は浅川を放し丁度良く壁に立てかけてあった金属バッドを手に取る。それを見て浅川が慌てて俺の裾を掴んできた。


「まって! これを壊すつもり!? わたしが一時間かけて作ったフィギュアを壊すつもり!? やめてよせっかく作ったのに!」


「お前これ一時間で作ったのか……ああ、女神パワーとやらか」


「そうなの! わたしのパワーって融通が利くからこれも簡単に……」


「簡単に作れるならこれ壊すな」


「やめてください! お願いします! 優女さんも何か言って!」


俺が優女を見ると真剣な視線が帰ってきた。


「お兄ちゃん、浅川さんを許してあげて?」


「ごめん無理」


「お兄ちゃん、お願い♡」


両手を合わせて瞳をウルウルさせながらお願いしてくるが……今の俺には通用しない。


「優女お前、これを何に使うつもりだ?」


「……自家発電……」


「良し壊そう」


「まってお兄ちゃん! 今のは冗談! ただの観賞用だよ!」


悪いけど重度のブラコンのお前をあまり信用できない。俺は妹のおかずになるつもりはない。俺がフィギュアに向かうと腰に優女まで抱き着いてきた。


「行かせないよお兄ちゃん!」


「青木兄君ごめんね……けど許してくれないかな?」


俺はうっとうしい二人をふざけるなと見る、こいつらどうしよ。俺は二人をどうにかして欲しいのでリアサを見る。


「リアサ、こいつらを説得しろ」


「これ、校門前の校長先生像と交換したら面白そうね」


「おいやめろ、絶対やめろよ!」


公然わいせつだぞそれ!全校生徒に俺の裸がさらされるとか最悪だ。考えただけでぞっとする。そして今のリアサを見る限り冗談だろうがあの笑顔はどうだろ?やらないよな……やらないよな?


「あなたも落ち着きなさい、これぐらい許してあげたらどうなの?」


「これぐらい? これぐらいだと?」


俺の恥ずかしさをわかってないのかコイツ。


「もし自分の裸そっくりのフィギュアを異性に観賞されたら、お前ならどうする?」


ふむと顎に手を当て考え込むリアサ。そこまで考え込む必要はないはずだが?俺と同じフィギュアを壊すって発想になるはずだ。リアサは顔をあげこう言った。


「まずフィギュアを壊して……」


壊して?


「それを作った人を裸に向いてはく製にした後、交番前に置いて逃げるわね」


コイツの発想が恐ろしいと感じるのは俺だけか?話を聞いてた浅川と優女もプルプル震えてる。絶対こいつだけは敵にしたくない。


「はあ、わかった、壊さない、その代わり二度と人前で服を脱がせるな」


俺が落ち着いたことがわかったのか二人がそっと離れる。離れた二人はまだ不安なのか俺とフィギュアの間に立つ。もう壊す気はない。というか少し怒って疲れた。なにか飲み物が飲みたい。


「浅川、お詫びになにかエナジードリンク買ってこい」


「わかった、わたしは自販機に行くけど……壊さないでね?」


「いいから行け」


浅川が不安そうな顔をしながらも飲み物を買いに自販機に向かった。生徒会室には三人になった。俺はリアサに聞きたいことがあった。そう、リアサの正体についてだ。


「リアサ、浅川は女神、優女は魔女だった……お前の正体はなんだ?」


俺が聞くとリアサは意味ありげに微笑み首を傾げる。


「なんだと思う?」


クイズ形式か……。異世界経験者であることは間違いないと思うが、正体までは予想できない。すると優女が手をあげた。


「どうぞ、優女さん」


「リアサさんの正体……ズバリ、聖騎士じゃない?」


「その心は?」


「女神、魔女、ここまで来たらあとはやっぱり聖騎士でしょ! このす……」


「優女黙れ」


危ないことを言おうとした優女の口を塞いだ。むむむと口をモゾモゾさせながら優女が俺の手を叩く。ちなみにリアサの返答は?


「残念、はずれ」


どうやら違うらしい。じゃあなんだろうか?エルフ、ドワーフ、獣人、いろいろな種族が異世界にはいた。他にも様々な役職も聞いたことがある。俺は聖騎士から連想して一つの職業を思い浮かべた。


「聖女?」


俺がそう言うと驚いたような顔をするリアサ。


「驚いた、正解よ、そう、わたしは聖女。エルニネス聖国の最高神官にして聖女。それがわたしです。前世の名前はイズ」


「「嘘くっさ……」」


「……殴りますよ?」


コイツが聖女とかありえない。

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