今でも君のことが許せなくてこじらせてる私。
でも私は、Nちゃんのことを許したわけではなかった、らしい。その証拠に私の黒い気持ちは、Nちゃんと疎遠になった今でもふくらみ続けている。
どうしてつらいことがあるのに、私に相談してくれなかったの? どうして私のつらさをわかってくれなかったの? 私たちはどんなことも共有できる親友じゃなかったの? 私はあなたが一人のときに、都合よくつきあってくれるような存在だったの?
Nちゃんは中学卒業後、商業高校に進み、高校を出て就職した。たまに会う彼女は、オフィスカジュアルを扱うブランドを品よく着こなす、よくいるOLになっていた。家族の力になるために決めた進路化もしれないけれど、私はつい思ってしまう。
お前は漫画家になるんじゃなかったのかよ。こんなどこにでもいそうな女、私の知ってるお前じゃないよ。
中学卒業後、私は不登校だった過去を必死にかくして生きている。「せっかくできた友達に、嫌われてはいけない」という意識から逃れられなくて、たくさんの隠しごとをして、みんなの嫌がることを率先してやって、いつもちょっと無理をして人間関係を構築している。そして、親友はつくらない。深い仲になっても、いつ離れてしまうかわからないから。
みんな普通に人と仲良くできてるのに、どうして私だけできないんだろう。
それは間違いなく、Nちゃんのせいなんじゃないかと思っている。
今はブロックしていたけど、彼女とツイッターでつながっていたころ、匿名で質問が送れる機能で、極力オブラートに包んだ意地の悪い質問を送りつけていた時期がある。
「起立性調節障害って知ってる?」
「あなたって八方美人じゃない?」
たしかこんな感じのことを送っていたけれど、今思い返すと、そんなにオブラートにも包んでいないし、意図もつかめない。もっと率直な言葉をぶつければ、気持ちはすっきりしたんだろうか。
もういっそ、この気持ちをすべて書いて、メッセージとして送ろうか。
いや、こういうのはどうだろうか。
Nちゃんから、久しぶりの連絡が届く。「結婚式をするから、招待状を送らせて」ということらしい。私は喜んで参加する。さらに「せっかくだから、友人代表でスピーチをさせてよ」なんて頼んでみる。私より古くからの友達なんていないNちゃんは、快諾する。
結婚式当日。純白のウェディングドレスに身を包んだNちゃんは、誠実そうな旦那さんの隣で、見たことないくらい幸せそうに笑っている。段取りは進み、友人代表のスピーチをする番。私は笑顔で、小学生時代のエピソードを紹介する。Nちゃんが不思議な女の子だったこと、一緒に絵を描いて遊んだこと、二人の夢は漫画家だったこと。
けれどNちゃんは、学校に行けない私のつらさに寄り添ってくれなかったこと。彼女が私にかけた、いじわるな言葉の数々。いまだに作家を夢みる私をよそに、普通の女の子になってしまったこと。Nちゃんのせいで私が、うまく人間関係を築けなくなってしまったこと。
お前だけ幸せになろうと思うな!
裏切者!
親友だと思っていたのに!
みなさん、この人は、こんなにもたちの悪い人間なんですよ!
Nちゃんの顔は、どんどん曇っていく。ドレスの白とは対照的に。
ああ、こうやって君の結婚式を、君の人生で一番幸せな瞬間を、ぶち壊してやりたい!
もちろんNちゃんからの連絡なんてなくて、私はこんな自分がますます嫌いになるばかりだ。
君の結婚式をぶっ壊したい。 はやし。 @kina311
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
お布団のネプチューン/正義正義
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます