第12話 水浴びですわ〜!

エリーナはまたそれから至る所に現れては消えを繰り返し、その体に抱えていく物品は多くなっていった。

何処かの商店で盗…勝手に貰い受けた大きなバックパックはもうパンパンだ。


そして北側の最奥。

アンデルセン地方の中で最も高いとされている山の頂上。そこに湧く泉を前にエリーナは腰を下ろしていた。


「これは……。ですわ〜!」


彼女はバックパックの中から取り出した10の巻物をずらーっと開けて並べ、それに端から走りながら目を通す。



【奥義:勇者斬り】

条件未達成 : 光の剣 必須

条件達成 : 靴未着用


【奥義:天地無双】

条件未達成 : 光の剣 必須

条件達成 : 靴未着用


【奥義:絶対回避】

条件未達成 : 光の羽衣 必須

条件達成 : 靴未着用


【奥義:無休体力】

条件未達成 : 光の羽衣 必須

条件達成 : 靴未着用


【奥義:森羅万象】

条件未達成 : 光の盾 必須


【奥義:絶対貫通】

条件未達成 : 光の剣 必須


【奥義:防御貫通】

条件未達成 : 光の剣 必須


【奥義:勇者波動】

条件未達成 : 光の盾 必須


【奥義:天地淵沼】

条件未達成 : 光の腕輪 必須

条件達成 : 靴未着用


【必殺:超勇者砲】

条件未達成 : 特定条件下のみ使用可能



(まだ全部使えないのは折り込み済みですわっ。ですので………今からは錬金術のお時間ですわ!!)


そうしていつの間にか集められた400本の勇者の剣。


刃毀れや中折れなどしているが、ギリギリ武器として形は保っている。問題ない。


「あなたが落としたのはこのーー」

「【光の剣+399】ですわー!」

「あなたが落としたのはーー」

「【光の盾】ですわー!!」

「あなーー」

「【光の羽衣】ですわー!!!」

「あーー」

「【光の腕輪】ですわー!!! 錬金術も終わったのでワタクシも飛び込みますわー!!!」

「あーー」

「………ぷはっ限界突破ですわー!! これで能力値をカンストまで持っていけますわね!」

「……勇者様…では、ご武運を…」

「武運願われましたわ〜! とてもとても感謝いたしますわー!」


水に飛び込み3秒もすればさっさと陸地に登ってしまったエリーナ。草地に踏みおく小さな足。

その足にはずっと靴らしきものは履かれていない。

ずっと、素足のままだった。


風が一つ、優しく吹いた。


柔らかな草葉が足を優しく撫で上げる。

彼女の髪もまた、風になびき空に漂う。


「水風呂よりも43度のお湯の方が気持ちが良かったですわぁ…」


水に入った後だと言うのに一切濡れていないその体。


彼女のドレスや身についていた汚れの全ては取り除かれ、それはとても太陽の様に輝かしかった。

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