第5話 愛しの! 彼女の! 独白!
「…はい。本当にその通りです」
「な?」
はい的中ーっと指を拳銃のように折り曲げて遥さんは白鳥さんに向け、放つ。
「ぅ"致命傷…」
「なんでだよ」
「き、君の弟子入り理由をもう少しちゃんと聞いたら治るかも…」
「いやなんでだよ」
「あの、実は私彼氏がいるんですけど…」
「そんな真面目な顔で話し始めないでよ、いや、真面目な話だったか…」
遥さんは流されていたボケの潮流から浅瀬に帰って来て、呼吸を整えながら語る瑞希の言葉を耳に押し込んでいく。
「私…彼氏にお弁当、作ってあげた事なくて。だから作ってあげたくて…でも私料理なんて一度もしたことなくて、彼氏とかってどう言う料理が好きなのかわかんなくて」
「「ふむふむ」」
「それで、私、彼氏さんにすっごい愛の詰まったお弁当渡してた白鳥さんに、手取り足取り教えて欲しいって、おもい…まして…」
そうした瑞希の独白。
二人は静かに目を合わせ、少しして遥さんが。
「おいおいヨーダこりゃあお前責任取るしかないだろ」
白鳥さんの肩を激しく揺さぶりながら言ったのだが、白鳥さんはかなり真剣な面持ちを残していた。
だからだろう、スッとその揺さぶる手を遥さんは引いた。
「オッケー。…じゃあ、もう一つ聞きたいんだけどね」
「な、なん…ですか…」
「料理を学ぶだけなら普通に入部したら良いと思う。けど私に弟子入りとなったらちょっと要件は変わるのよ」
「ヨーダ、まじめだ…そんな顔テストで欠点取ってる時にしか見たことない」
「う、うるさいなー! しっしっ、さっさと生姜焼き作って来てっ」
「あーい。君、弟子入り頑張ってね」
そうして遥さんは二人に背を向けて遠のいていく。
「あっそう言えば君、名前なんていうの」
「ぁあ! す、すみません! えっとわ、わたしは…えっと…瑞希……です」
「おー!!! 瑞希ちゃん! 名前かわいいね!」
白鳥さんは何気ないのだけれど、きっとそれは本当に今思った事で、新鮮で。
だから産地直送のその言葉を受け取った瑞希は、まるでひまわりが咲いたみたいな顔を浮かべていた。
「じゃあさじゃあさ、そんな瑞希ちゃんに質問なんだけど」
「はいっ」
「彼氏さんのこと、どれだけすーー」
「ーーめちゃくちゃドチャクソ精一杯に大好きです!!」
「おー…私の言葉が食われたよ、まるで映画のジョーズが人間を丸呑みするみたいに」
「私の苗字鮫島です!」
「サメだぁああ!!!!」
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