Prince #6 Purple Rain パープルレイン

Prince & the Revolution

 

 このアルバムは映画のサウンドトラックと言うかたちをとっている。そのためか曲がコンパクトにまとめ上げられているだけに聴きやすくとてもスリリングに感じる。


 楽曲を聴いていてもその緊張感か伝わってきて刺激でいっぱいだ。

 そしてアルバム全体にきらびやかでリッチでそしてセクシーだ。

 それでいて彼の本音が出る楽曲も多く、売れるべく彼の要素がすべて備わっているアルバムだ。


 一曲目 Let's GO Crazy から前作に見られたシンセのアレンジから始まる。

 3曲目 The Beautiful Ones では雄大なスローバラードの美しさはあるが、曲の後半での彼の絶叫さはちょっとひいてしまうが、良い。

 これがラストのアルバムタイトル曲では少しマイルドなパッションの爆発となる印象へとつながる。


 4曲目 Computer Blue は明らかに前作の延長にある曲だ。しかし、曲名ほどニューウェーブ感はない。それは彼の速弾きギターが入ることもあるが独特なビートがそれを思わせる。

 前からもレビューで述べたこのビート感の完成形が6曲目の When Doves Cry にあらわれているが、この曲の内包する音楽的要素は多く、誰も出来ないことだ。

 それが5曲目の Darling Nikki にも言える。


 そして7曲目のこの時代を良く表している都会的でリッチな煌めきの世界の曲 I Would Die 4U は彼にしてみれば異色なほどポップだ。

 この曲から途切れずに8曲目に入るメドレー形式も珍しいが、この曲 Baby I'm a Star はディスコ調のリズムを強調した彼らしいもの。


 アルバム最後のタイトル曲は9分近くもある長尺だが、基本は彼のパッション全開のラブソングだ。

 実際このパープルレインが何を意味するのかよくわからないが、アルバムと共に世界中に広く彼を認知させる語句になるのである。


 この曲だけ長いこともあり全体で40数分のレコード1枚許容範囲の聴きやすい、そして充実した楽曲揃いのアルバムだ。



 これを聴いていると当時を生きた身としては、今感じることはこんな時代はもうやって来ないのだと改めて思う。


 1980年代と言う一瞬でしかない時間にある陰に隠れた悲劇など心の片隅にすらなかった煌めきだけの日々、そんな時代の象徴とでも言えるアルバムなのだろう。

 そんな時代彼の満たされぬパッションを音楽製作の中に情熱を注ぎ込んだ物語でもある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

病人の音楽レビュー 小川初録 @rocketman99

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ