第4話


 あの後。


 先輩からこう言われた。


「全ては、我らの正義のためだ」



「正義」って、一体なんなのだろうか。


 完全悪な敵もいないし、正義だけの味方もいない。


 結局、正義はなんなのだろうか。



 敵だって、善良な人間かもしれない。


 味方が、悪に染まっているかもしれない。


 明確な定義はない。

 それでも、自分にとっての正義は知りたかった。



 ×+×+×+×+×



 サイレンが鳴り響く。

 耳鳴りのようなサイレン。


 敵襲だ。



 銃をとりに行った。



 手に取った銃が強く感じた。

 僕がちっぽけな気がした。


「銃を取れ、これは戦争だ。」


 先輩がいた。


 既に、銃を構えて準備を終えていた。



「やらなきゃいけない。やらなきゃ、死ぬのだから。」


「じゃあ、先輩の正義はなんですか。先輩はどう思ってるんですか。」


「生きることだ。」


「え?」


「どれだけみすぼらしくても、生きることだ。生きているなら、社会はお前を認めている。それなら、お前は正しい。」


「っ!」


「いけ。これは戦争だ。死ぬぞ。」


「……はい。」


 先輩の背中は、頼もしく見えた。

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