第7話

 エクイテスを配下にしたレイドから1週間。拓哉はのんびりと日常を過ごしていた。あのレイドから、毎日のように来ていた、ハンター協会からの招集がぴたりと止まり、仕事に行っていないのだ。収入はエクイテスがどこからかとってくる魔石で賄っている。どこから持ってきているのかは聞いていない。聞きたくない。


 ギルドと呼ばれるハンター達だけで構成される、いわゆる会社の様な機関がこの世界には存在する。ギルドに所属すると、それぞれのギルドがお金を出してダンジョンを買い、好きなようにレイドを行うことが出来る。ギルドの収入源としては魔鉱石と魔物を倒した時に得られる魔石である。


 魔石とは、魔鉱石と同じく魔力の込められた石だ。魔石に含まれる魔力の量は魔石の大きさに比例し、その大きさは倒した魔物のランクに比例する。つまり、SSランクに近ければ近い魔物を倒すほど、手に入れることが出来る魔石は大きくなり、魔力量も多くなる。魔石の値段はこれまた魔鉱石と同じで込められた魔力の量だけ値段が上がるのだ。


 魔石と魔鉱石の違いは何かというと、採りやすさの違いだ。魔石はどんな魔物を倒しても必ず一つ、ドロップする。しかし、魔鉱石は広いダンジョン内の、それもどこか一カ所のみに群生するため、獲得できる確率は非常に低い。魔鉱石を見つける事に時間を割くぐらいなら、さっさとボスを倒して次のレイドに言った方が儲かるという思考だ。


 拓哉はいま、自室のベッドの上に寝転がり、ギルドに所属しようかどうかを考えているところだった。


「なあ、エクイテス。ギルドに所属しようと思ってるんだけどどう思う?」

「ギルド、というものを私は存じ上げませんが、神の決断に口をはさむような真似は、このエクイテス、死んでもしません」

「いやそうじゃなくてだな?俺は単純にお前に意見を聞きたいんだ」

「なんと!この私ごときの意見に耳を傾けて下さると?このエクイテス、感涙でいっぱいです」


 そう言いながらむせび泣くエクイテス。こいつに話は通じない。即座にそう判断した拓哉はエクイテスに意見を聞くことをあきらめた。


 拓哉はベッドから起き上がると、机に移動し、パソコンを起動した。そして、日本にあるギルドについて知らべ始めた。その間、エクイテスは相変わらず泣いていた。


 約一時間後。エクイテスの咽び声に耐えながらも、一通り所属したいギルドに目星をつけておいた。ギルドに所属するためには、実技試験があり、それぞれのギルドが設けた基準に達する必要がある。一番早い試験が一週間後にあったので、ギリギリの滑り込みで申し込んだ。


「エクイテス。これから一週間後、俺はギルドに所属するための実技試験をやりに行く。醜態は晒せないから俺に指輪の力の引き出し方をこの一週間、徹底的に教えてくれ」

「そんな!私如きが恐れ多い!しかしこれも神の頼み事。無下には出来ませぬ」

「今後の生活にもつながる重要なことだ。徹底的にやってくれ」

「御意」


 首を垂れ、拓哉に向かってひざまずくエクイテスを見ながら拓哉は満足げにうなずいた。しかし、拓哉はこの時は気づかなかった。この選択が地獄への片道切符であることを。


◇◆◇◆


「神よ!もっと速く振るのです!違います。ビュンッではなくヒュッという感じです!」

「いやわかんねーよ!もっと詳しく教えてくれよ!」


 あれから三日。拓哉は近所の武道館を貸し切り、エクイテスとの訓練をしていた。訓練をお願いしたときの拓哉は、そこそこきついぐらいだろう、程度にエクイテスとの訓練を考えていた。 だが実際の訓練とは全く違っていた。エクイテスはだいぶスパルタで、しかも説明にやたらと擬音語が多いという、やっかいな指導者だったのだ。


 果たして、これで本当に強くなれるのだろうか?そんな疑問を抱えながらも、拓哉はエクイテスの指導どうりに訓練を行った。

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