第117話 迫りくる嫌な予感(暴君)のせいで計画が頓挫するかもしれないのは流石に狂っている。
自分でもあの後少し考えてみて。
俺としての結論はこうだ。
確かに代償として必要なスキル、『十二宮の星宙』は他のスキルと比べて優秀だし、残しておけば多分俺の今後のピンチから脱するのに大いに役立つだろう。
それでもそのスキルを犠牲にする方が確実ならその方が良い気がする。命はスキルでは変えられないわけだし。
だから俺の意見は変わらなかった。
自分の意見をまとめた俺はその意見をみんなに言うことにした。
「少し考えてみた。というか叡智に聞いてみた。少しそのことを話しても良いか?」
「はい。どうぞ」
「叡智が言うには俺がスキルを犠牲にすれば確実に救出は成功するらしい。次に成功率が高いのは……」
「我が出向くことだろう? そうに違いあるまい」
押しが強いけど、その通りだ。なんかムカつくけどこればかりは仕方がない。
「正解。98パーセントだと。で、どうしたら良いかを聞きたい。俺としては、スキルを犠牲にするのが良いと思うんだけど。確実に救える訳だし。命が懸かってるんだぞ? 絶対に犠牲にした方が良いと思うんだけど……」
「はぁ、ちなみに犠牲にスキルとは?」
「十二宮の星宙ってやつ。確か
「それなら、この竜に任せた方が良いですね。そのスキルを持っていないとあなたはこれから困るでしょうし。それに最悪の場……コホン、何でもありません。話を戻しましょうか。オーグラムに任せるのが良いと思いますが、それで良いですか?」
「ああ、羽澄さんがそう言うなら……」
「我も文句は無い! 存分に受け止めようぞ」
「ええ。頑張ってくださいね、オーグラム」
「分かっておる。我に任せよ……え? あなたはもしかして白亜の魔女様……?」
……ややこしくなるからその展開はやめてくれ。
既視感があるから。 ねぇ、やめてくれって。
もうなんかややこしいことになってしまった感は否めないけど。とにかく念押ししておこう。
そうしたらカオスになる前にすぐ持ち場に付いてくれるかもしれない。
あーでも俺が何を言おうがコイツは聞かないか。はぁ。
「とにかく、頼みましたからね?」
圧が強い。
……あれ? でも沙耶と比べるとそよ風以下かも。
えっ、それだと沙耶の圧って一体何なんだ……?
「あ、ああ……でも魔女様……」
まだカオス展開続くのか……話に置いてかれて重要な話聞き逃すわけにはいかないから聞くけどさぁ。
何してるだあの竜、変な動き始めたぞ……ってごますりか、あれ? ごますりだよな。
あんな動きするやつ本当にいるのかよ……
にしてもまたもや何だよこの展開、余計カオスなんだけど。あとキャラ変し過ぎ。
変わりすぎてキモい。めっちゃキモい。
世の中にはギャップ萌えという言葉があるがこれは多分、絶対にそれには当てはまらない。そう断言できる。
「ほら、さっさと行ってきなさい」
「は、はいっ。分かりましたっ魔女様っ!」
これ、単純に表すなら親にしばかれる子じゃん……
で、羽澄さんが母親ポジで、竜王が子供か。
……ふぇ? やばい。目の前の絵面に全く理解が追いつかない。相変わらずカオスな展開が続くようだ。
そりゃあさ、白亜の魔女が偉大らしいのは前の謎の遠征みたいなやつでわかりましたけどね?
でも威厳だったら圧倒的に竜王の方が上だったような気が……
でももう威厳もへったくれもないなぁ……。
気のせいだったのかなぁ……。
やっぱ見た目で判断したらいけないってことか。
ん……でもなんか何か釈然としないんだよなぁ。
無理やり納得するしかない……それにしてもこの状況、カオス過ぎる(二回目)。何がどうしてこうなったと聞きたいくらいなんだけど。
やっぱり頭で理解しようとしても思いっきり精神が拒んでくるし……
こんな状況どう考えても普通あり得ないって。
常識で物を考えちゃもういけないのはわかってるんだけどさ? やっぱり無理だ。元一般人だもん、元……はぁ。
竜が少女にへりくだってごまをするなんて……
まあいっか。普通にいつも変だし。なんか納得できないけどいっか。良くないけどいっか。
これで解決するならまぁそれで良しだ。良しなのか……?
うん! 多分、多分良しだっ! (
でもなんか忘れちゃダメなことを忘れてるような気がする……まあいっか。
多分大事なことならその内思い出すでしょう……あ。
あったわ。一番忘れちゃいけないことが……
そう、沙耶だ。
あれ? そういえばさっきから沙耶の姿が見えないような……
嫌な予感がする。すっごく嫌な予感がする。
そう、あの時の訓練とは比にならないようなことになりそうな予感。
「すまん。俺急用できた。少しやらないと……というか止めないといけないことができた。だから本当にすまん」
「別に良いですよ。でも、そのやらなきゃいけないこととは一体何でしょうか?」
……やっぱり、白亜の魔女として振る舞う時の喋り方だとむず痒いというかなんというか。
まあそんなことはどうでもいい。
今優先すべきことは沙耶の
「まあそれは、察してくれ……」
「あはは……分かりました。そちらは頼みます」
そうすると急に誰かから念話の受信があった。
……沙耶か? でも沙耶って念話できたか?
もし沙耶ならならかなりマズイ。
もう既にやらかされてしまったということになる。
沙耶が報告するときはいつも事後だ。
俺は恐る恐る念話に応じてみると……
[三倉さんの件は頼んだから。頑張って]
羽澄さんだった。
目の前に居たのになんでと思ったが、労いの言葉、しかもタメ口となると白亜の魔女としての威厳を保てないからだとすぐに分かった。
念話だと俺みたいに素を知るやつには取り繕う必要なんてないもんな。
[分かった。気は乗らないけど行ってくる。]
「魔女様……? 先ほどからボーっとしておられますがどうか致しましたか?」
「少し場の状況を見ていただけです。なんでもありません」
「そうですか……なら我は行って参ります」
そう言って威厳消失竜王は二人の精霊の下へ飛んでいった。
白亜の魔女こと羽澄さんも杖を取り出し、構え始めた。
遠くからそんな光景が見えた。
いよいよか。
こんな失敗の許されない正念場に沙耶は一体何をしでかそうとしてるんだよ、完全に悪役の立ち位置じゃん……みんなも頑張ってるし俺も全力で沙耶を止めないと。
こんな広い空間のどこに行ったんだ沙耶は。
ウンディーネさんのときもそうだったけど大精霊のいる階層って本当に広すぎる。探しだせるかどうか……
もう、なんで沙耶はいつもこうなんだろう。
「クソっ! これ以上疲れさせんなよっ!」
俺は精一杯の声で怒鳴りあげた。
どうせ沙耶は変なところにいるに違いない。
叡智、分担して探すぞ。
[了解しました。捜索のために
絶対に周りに影響を出さないなら使ってもいいよ。
だから一刻も早く見つけてくれ。
[了解しました。周囲への影響をマスターへの情報共有に留めるようにします。それでは失礼します。]
はいはい、分かりましたよっと。
俺も探すかと言いたいところだけど、叡智が探索系スキルを使ってるから俺は今は使えないっぽい。
俺も地道だけど魔力を広げて探そう。
もし沙耶がやらかして、それが悪い方に働けば、俺はきっと沙耶を恨む。断言できる。
まあもう十分恨んでる気はするけど。
でもこれ以上関係をおかしくするのは面倒だし、生活に支障が出そうなので避けたい。
まあやらかしたら俺がスキル犠牲にすればいい話だろうけど……沙耶はきっと、そんなことを考えてるんだろう。
俺の気も知らないで勝手なことばかり、もう俺を困らせないで欲しい。まあ無理だろうけど。
とにかく、沙耶を探そう。話はそれからだ。
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