第116話 バカになりそうな事態と急展開なんて望んでないけど、希望はウェルカムです!
取り敢えず馬鹿な幼なじみは置いておこう。
この流れで沙耶の戯言に付き合っていてはキリがない。
いつまで経っても本題にならないのはただの時間の無駄だ。
ここで無視することで発生する問題はその戯言を実行する可能性があることくらいで……考えるのは止そう。
そこで、俺はどっち優先かを考えて沙耶を無視することにしたと言う訳だ。決してこれは現実逃避ではないよ? 決してな?
コホン……幸いこのバカはまだこの場にいる。
だからまだやらかしてはいないし、やらかしそうになったら総員で止めればいい。
だから今は無視に徹するのは間違いではない。
で話は本題に戻ってここからが問題なんだけど、一体この詰みみたいな状況でどうやって助け出せばいいんだ?
それに加えて救い出すとなるとこっちもかなり危険な状況になる。
今はかろうじて羽澄さんの時間停止が発動してるってだけで……このままだと現状維持にしかならないし、ずっとこの状況を維持するのも流石に難しいと思う。
しかも、最悪助けたいウンディーネさんの攻撃がこちらに被弾するもしれない。
それで俺たちの内ひとりでも死んでしまったら笑えない。
はっきり言ってこの状況から救い出すのは相当難しいのは目に見えている。
「ウンディーネさんだけ時止めの効果を消すってことはできたりする?」
「正直言って無理ですよ」
でしょうね。
最初からできていて、それでしてないならそれは第二の沙耶案件だったわ。
それでも少し……いやかなりマシなレベルには間違いないけど。
やっぱり沙耶がまともな対応をできないだけか。……あ、但し叡智と通知を除く。
あの二スキルも大して沙耶と変わらないくらいにはやらかしてるし。
「なら、どうする? 特に対処法なんて思いつかないよ? ね、習」
「フィーはちゃんと考えてるのか?」
「結構ちゃんと考えるよ……それでもあの二人だよ? ウーちゃんの攻撃は耐えられても、あのゴリラは無理だよ〜〜」
「なぜ突っ込むこと前提なんだよ」
「え? だって同じ四大精霊だし……まああのゴリラが圧倒的に強いんだけどさ?」
さっきから叡智も提案してこないし。
ただただ解説オンリーだし。
「我を忘れていないか?」
誰だよ。我っていう奴は。
沙耶のいたところから聞こえるからやっぱり沙耶なのか?
声がおっさんだけど、沙耶なら十分にやり得ると思う。
何かのドッキリかもしれない。
でも今の状況でそれをやられると俺も流石に言わざるをえない。
「沙耶、今はふざけてる場合じゃ……」
あれ……沙耶がいない。
じゃあ一体誰なんだ?
――ドシンッ
地面が震える重低音がした。
相当揺れた。一体何なんだよ……
「えっ……誰だ?」
「我は竜王オーグラ……」
「あ、オークだ! ヤッホー、さっきぶり!」
フィーが元気よくそう竜に話しかけた。
そう。俺を散々罠で痛めつけてきた張本人の竜王である。
……コイツ、俺を痛めつけたこと反省してないな?
もう嫌だこんな奴まで来るのかよ……はぁ。
「違う! 竜王オーグラムだっ!」
あれ? そうだっけ? まあいっか。
「それで、オーク、何の用でここに来たのー?」
「オークではない……それだと我、あの性欲種族になるではないか……」
「え? 違うの? オークと竜のハーフ的な……」
さっきから名前間違ってるぞ、フィー。
面白いから放っておくけど。
散々俺を苦しめてきたんだし、このくらい放っておいたところでバチは当たらないだろう。
「違うわっ! ボケっ! 前も言ったがな、我はあの火の精霊とやらに復讐しにきたのだが? もしや忘れたのではあるまいな」
あーそうだった。
確かにそんなことを言ってたような気がしなくもない。
でも邪魔しかしなかったコイツに何ができるだろう。
罠が無いと攻撃手段を持たず、防ぐ以外何もできないっていうのに……防ぐ以外何もできないっ!?
それってこの状況にピッタリなのでは?
もしかしたらどうにかなるかもしれない。
「我ならあの攻撃を全て受け止めきれよう」
……それはそうだと思う。
いや、それだと周りに攻撃の余波が……
「余波くらいでは両者とも死なぬよ。それに余波もほとんど我に吸収されよう」
それならまあ良いのか。
取り敢えず羽澄さんには聞かないとな。
「なんか釈然としないけど……羽澄さんはそれで良いと思うか?」
早速、羽澄さんの意見を聞いてみた。
「うーん……少し考えた方がいいかと」
そうだよな、やっぱり慎重にするべきだよな。
あ、クラスのときの口調じゃなくなった。
真剣ムードの時はやっぱりこっちになるのか。
……何考えてんだろ俺。
「まぁだよな」
叡智はどうなのさ。
[現状考えられる最適解ではありませんが、次に最良な手段です。]
うーん……というかその最適解を早く教えてくれよ。
その最適解があれば迷わなくて済むんだけど?
……いやいや、あるなら最初から教えろよ、な?
スキルがスキルとして機能してないぞ。
もうスキル以下のゴm……
[了解しました。最適解はマスターのスキル、十二宮の星宙を生贄に対象のスキルを使用不可にすることです。マスターが十二宮の星宙を犠牲にした場合、100パーセントの確立で事が良く収まります。それ以外では個体名:羽澄ひかり、もしくは個体名:三倉沙耶に
ここまで言ってようやくかよ。
あれ? でもそれって俺にリスクデカくない?
それに最上位で唯一使える優良なスキルだし……
でも背に腹は変えられな……
[なので、成功率は98パーセントまで下がりますが、現状は金剛竜王の申し出を受け入れる方が良いかと思われます。]
まぁ2パーセントしか変わらないならその方がいいのかもしれない。
だけど、命が懸かってるもんな……やっぱり犠牲にすべきか。確実に助けるにはその方が良いに決まってる。
でも俺の独断で決めるのはおかしいし……要相談だな。
もう少し考えてからみんなに伝えよう。
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