第115話 危機的状況(絶対絶命)から危機的状況(鬼畜)に変わっただけなんだけど誰か助けて欲しい。
相変わらず場面の切り替わりが早い。
確かに救援は心強いけど、正直沙耶という特大の時限爆弾がいるという点で不安のほうが大きい。
仮に今の状況が一段落しても、その時に何かやらかすかもしれない。……怖い。
「えっと……取り敢えず時間止めておきました」
「あっそう。時間止めたのか。確かに考える時間が増えるのはありがたいけど……ってえ? 今、なんて?」
「……あ、流石に時間止めるのは不味かった?」
「………うん、まぁ、ね」
どうしよう。上手く頭が回らない。
きっと羽澄さんに悪気は無いだろう。
それに確かに、時間を止められれば、こちらにも時間の余裕というメリットが発生する。
でも、いきなりそんな常識外の対応をされても困惑するだけだろう。
訳の分からないことになってきたぞ。
時間を止める? 何を意味不明なことを。
そんなチート許されてたまるか。悪用されたい放題じゃないか。特に沙耶とか沙耶とか沙耶とか……
流石に時止めはヤバいって。
世界に干渉してるじゃん。おかしいじゃん。
あといつの間に記憶戻ったし。あと敬語だし。
ツッコミどころが多すぎてどこからツッコめば良いのか分からない。
「本当にごめん……習」
「全然良いよ」
行き当たりばったりな沙耶と比べて、考えあっての行動で、最適解だったのは確かだ。
それにすぐに自分の失敗に気付いてくれて、その直後に改善までしようとしてくれていて、素直に反省している。
沙耶のように指摘されても気付かないというたちの悪いタイプではないんだよな。
それだけでこちらとしても全然オーケーなんだけど。
風が突如として強く吹き付けた。
「ちょっと……はぁ、ウーちゃん速いよぉ……」
……フィーが遅れてきたらしい。
感覚的に水の精霊よりも風の精霊の方が速いイメージが有ったのだが、そうでもないらしい。
「ってウーちゃん? おーい……止まってる? これって確か時空魔法だったよね? ……」
フィーが思考を放棄している。
一体どうしたのだろうか?
「……これ、強力なんてものじゃないよぉ。あーあ、どうしよう……時の大精霊に、会いに行けば……でも場所分からないし。僕が四大精霊についてから一度も姿を見せたことが無いっていうし……」
なんか大事みたいになってる?
羽澄さんの魔法ってそんなに強いのか?
[一般人程度のステータスである時、個体名:羽澄ひかりの魔法出力は最大で一般人の約十億倍となります。]
いや、待て。
それって……ヤバくない?
[個体名:羽澄ひかりは自身にステータス、スキル封印のデバフをかけています。そのため問題になるような威力は出ないと思われます。]
そう……それじゃあ沙耶は?
[現在のステータス、保有スキルでは個体名:三倉沙耶のステータスは閲覧できません。]
え、なんで。
[実力差の問題です。]
そ、そう……え?
あの沙耶が? 今のかなりおかしい俺のステータスでも見れない馬鹿みたいな強さを持ったってこと?
……目眩がする。
どうしよう。もう寝ようかな。
「ふーん……へぇ……」
あの、フィーさん?
どうかしました? ふーんとへぇじゃ何言いたいのか分からないんだが。
「……時間止める……面白そう」
おい、沙耶……そんな物騒なこと……
「自重しくれ……」
「え? 自重って?」
「もう嫌だコイツ……」
「酷くない? ねぇ、酷くないかな?」
「今まで沙耶がやってきたことと比べたらすごく些細なことだと思うけど?」
「……なんのことかな?」
……忘れてやがる。この反応はマジの反応だ。誤魔化す反応なんかじゃない。
なんだろう、俺一生報われないような気がする。
「よーし! やってみよう!」
「やめろって! 今は羽澄さんのお陰で大丈夫だけどさ? だからって危機的状況な訳でしてね? それを分っていらっしゃいます?」
「なんで敬語……むぅ~別に良いじゃん、ケチ」
ケチじゃねぇよ。沙耶が魔法使ったらどうなってしまうのか……恐ろしい惨状しか見えない。
頼むから納得してくれ……
「……でも使う」
「だから使うなって。第一お前手加減知らないだろ。そんな奴が急に持った力で暴れてみろ。大惨事になる」
「ならないって! 心配しょうだなぁ〜全く」
「三倉さん……それは私も習と同意見だよ」
「……そう言わないでよ……そういえば誰?」
「同じクラスなんだけどなぁ。羽澄。羽澄ひかりだよ。」
「ああえっと最近転校してきた?」
「そう」
よし、話がズレてきている。
このまま沙耶が魔法ブッパの欲求を忘れてくれれば良いんだが……
「……ともかく問題なんて全くないから大丈夫だよ!」
駄目だ。コイツ思い立ったらすぐ行動ってタイプだった。
でもこう見えて学校では協調性(一部を除く)はあるっていうのがな……やっぱりコイツ分かっててやってるんじゃ?
[否。ただの思い付きによる衝動的行動です。]
……だよな、それだと改善しようがない。
そういえば、沙耶が学校にいるときとそれ以外って一体何が違うんだ?
[個体名:学校などの一部のコミュニティにおいて、三倉沙耶がトレース状態に入っています。なお、本人は自覚していません。]
そのトレース状態をいつもして欲しい……いや無自覚だもんな。難しい……あれ、今本来の目的ってなんだったか?
[ウンディーネの救出です。]
あ、そうそれ。……目的すら忘れさせるとか一体何者だよ沙耶って。
[転生者や何か他の種族の擬態では無いのは確実です。]
本当に? 本当の本当?
信じられない。今までの行動から見てみるとそう疑ってもしょうがない……いやそうじゃない方が、擬態のようなものじゃないと言われたほうが難しい。
それならいっか。
大して大きな障害があるわけじゃないから。
いや、本当にそうか? よく考えると……
「うげっ」
「人の顔見てそれは酷いんだけど……そこまで嫌なら私もやらないよ……別に鬼畜ってわけじゃないし」
「もう既に十分鬼畜だと思いますが?」
「ん? 何か言ったー?」
「何デモナイデス……」
なんで急にそんな冷めた……いや完全に殺気だなこれ。
え? 俺を殺したいのこの人。
何これ怖い。
「コホン。……それじゃあどうするの? 対処法ナーシ! だよ?」
「なんだよその言い方」
「別にいいじゃーん」
「真面目な話をしてるんですが?」
「……もういい加減に本題に入りましょうか」
「だってさ。沙耶もいい加減に大人しくしてて」
「……わかったよぉ、、、でも?」
何が不満なんだよ。至極真っ当な対応じゃないか。
今さっきまでが甘かっただけだっつーの。
……で、本題か。
え? 遅くない?
にしても最後の……嫌な予感がする。
少し聞いてみるか。
「沙耶その意味深な最後の『でも?』はなんだよ」
「べっつにー何でもないけどー」
これ、何かあるな。
……少し、いやかなりの警戒をしたほうが良さそうだ。
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