第111話 授業と戦闘の両立とか無謀なことは考えなければ良かった……
今、俺は
三日前からずっと二人の戦いが続いており、まだウンディーネさんには余裕が見られたため、俺が学校に行っても問題は無さそうだったからだ。
そうして、ようやく非現実から逃れることができたと思った途端にこんなザマである。
クラスメイトの話を聞くたびに次から次へとやらかしが浮き彫りになってきた。
まあ、それが悪い方向に向かったものもそれなりにあるけど、概ね優等生のような振る舞いという方向のやらかしが多かった。
多分、優等生のような振る舞いは叡智の中ではやらかしには含まれないのだろう。
でも、元々俺の言う『やらかすな』は、『あくまで普通に過ごせ』という意味であって、悪いことをしなければ何をしても良いという意味ではないのに……本当につくづく俺の思っていることと反対方向に事が進んでいく。
何もかもが上手く行かない。
「習、どうかしたのか? 先生にみられてるぞ」
「いや……別に何でも」
「そっか、それにしてもお前スゲーよな。今じゃ学校で噂されてるぞ」
「あはは……」
全て叡智のせいだ。俺のしようとしたことではない。
いや、ポンコツを少しでも信じて任せてしまった俺にも落ち度はあるか。
ポンコツはいくら頑張っても変えられないっていうのに、どうして信じてしまったのだろう。ものすごい後悔が俺を襲った。思わず溜め息が出るほどに。
「はあぁぁぁ……」
「お前、昨日から本当に大丈夫か? そんな大きな溜め息なんてしてさぁ……やっぱりあれだけの仕事を受けたから辛いのか?」
誰か話しかけてきた?
誰だよ。今俺一人になりたいんだけど。
って隼人か。あれ? 隼人だっけ?
ヤバい記憶が混濁してる。多分隼人で合ってるはず。
「ん? あー概ねそんな感じ」
俺の意思に反したことをやらないといけないことに物凄くストレスを感じている、ということは流石に言えまい。
そのときは俺じゃなくて叡智がやると宣言したとはいえ、周りから見たらそれは俺が進んで立候補したのと変わりないだろう。
つまり、やめるにやめられない。
本当に理不尽である。
「そっか、まあ程々にな。あんまりとん詰め過ぎると痛い目見るぞ! ほら、テスト前に一夜漬けしたら次の日寝ちゃうだろ? そういうことだ」
「んーそっか、取り合えずお前は勉強しとけ」
「辛辣だな全く。まあいいけど」
俺の状況を知ったらきっとそんなことも言えまい。
でもどうせ言ったところで信じられるような内容じゃない。
……正直叡智のことに関しては本当に何言ってるの?
そういう反応が待ってるに違いない。
そんなことを考えていると、一日の授業が終わってしまった。
何も頭に入ってこなかった。
仕方がない。それどころでは無いのだ。
頭の片方では戦いを見ていなきゃいけない。
そして、叡智のやらかしに関しても考えないといけない。
それももちろん複数だ。
脳のキャパがとてもじゃないけど足りない。
……放課後は合唱コンクールの為のピアノの練習だっけか?
今日は掃除は無いし、部活も無い。
本来なら家でゆっくりできるはずなのに……はぁ……
俺全然ピアノ弾けないのになんで叡智は引き受けたんだよ……それに俺って面倒くさいのは避けようといつもしてるだろ……本当に訳がわかんない。叡智は頭がおかしい。
考える頭は無いから精神がおかしいという方が正しいか。
[スキル『精神快方レベル1』を獲得しました。]
……最近また頻度が上がってきた気がする。
叡智の心配が薄くなったら通知、通知の心配が薄くなったら叡智がやらかす、それ以外では外から苦痛を受ける。
この構図が完成している気がする。
なぜ……いや、そういうことを考えるのはよそう。
やめないとネガティブになってしまう。
取り合えず、ピアノの練習でもしようか……
このままでは課題曲と自由曲の二曲なんてとてもじゃないけど弾けるわけがない。
[スキル『演奏レベル1』を獲得しました。]
はぁ……これ絶対に集中できないだろ。
俺に恥をかかせるつもりかよ。そっちの方向でも苦しめたいと。断固拒否する!
そのためにもできるだけ早く弾けるようにならないと……
なんで俺こんなことしないといけないんだろ……はあー。
[スキル『音感レベル1』を獲得しました。]
だからうるさいって!
全く初めてのことだから集中しないと無理なんだよ!
最悪叡智に放り投げるつもりだけど、というか初めからそうするつもりだけど。
……なんかこのままだとスキル獲得ループに入りそうだから一旦ピアノはやめておこう。
それなら、文化祭の企画の方を頑張るか……
なんかやる仕事やっぱり多すぎるよな。
叡智ならやれるからって俺がやれるとは限らないことを知らないのか。
才能とスキルは違うじゃんか。
いくらスキルが強かろうが、才能が元々あるやつにはスキルだって大体ついているらしいし、やっぱり才能を持っていない俺にはやろうとしても上手くいく訳が無いんだよ。
叡智さん、少しは考えて行動してください。
ただ単に合理的な行動をしないで下さい。
……俺がいくら言っても、伝えようとしても無駄だってことは嫌ほど分かっている。
[スキル『最効率判断レベル1』を獲得しました。]
俺は叡智みたいにはなりたくないんだよ!
はぁ……全く、通知には大した自我が無いから空気とか読めないのはわかってるけど、本当にやめて欲しい。
思考が逸らされる。
……やっぱり少しでも俺の願いが叶うことに期待していたい。そう思うのは普通だろう。
希望的観測なのは分かってるけど、少しでも俺の働きかけが届いて、俺の思うような効果を生んでくれることを期待してもバチは当たらないだろう。
それくらいの希望がないともうやってられない。
[スキル『観測レベル1』、『相乗効果レベル1』を獲得しました。]
最後に関しては完全に当てつけだろ……もうふざけるのも大概にしてくれよ。あーあれか?
もしかして俺が主人公じゃないからそういう働きをした、もしくは主人公がするはずだったことをしそうになったら徹底的に苦しめて阻止しようとしたとかそういうあれか?
……実際にそんな感じがする。
ほら、よく世界をある方向に導こうとする抑止力が働くって言うだろ? 多分それだ。
[称号『抑止力の芽』を獲得しました。]
[スキル『抑止の波動』を獲得しました。]
そのせいで、今みたくうるさい通知を聞くようになって、結果的に苦しむ羽目になったんだろう。
それならいっそ俺の所持スキルを全て没収してくれた方がマシだっていうのに……なぜに増やすんだよ。本当意味わかんね―よ。
取り合えず、また耐えるしかないのか。
ここ教室だし、発狂すら許されないのか……はぁ……。
もうどこまでも俺に厳しい世の中だよ。
主に通知とシナリオ、
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