第108話 せっかくゆっくりしていたのに転移の罠って聞いてないんだけど?
「それにしてもあなたは本当に人の話を聞きませんね」
聞きません……ね?
いやいや、説教するような立場じゃないからね?
フィーさ、ブーメランって分かるかな?
それ特大ブーメランだからね?
もしかして……いや、そもそも言うまでもなくこれは……完全に気づいてないな。
……こりゃあダメだ。いくら言っても直らない訳だ。
……はぁ~〜〜
[いくらなんでもそれは酷くないかなぁ……僕も流石にそこまで酷くは無いんじゃないかなぁって思うんだけど……]
いやいやいや、お前って大概だぞ。
なに自分が全然関係ないような感じの口調で話してるんだ?
[むぅ……まぁいいけど。あ、そういえば僕まだこの竜にお説教! しなきゃいけないから……]
あ、逃げた。卑怯だぞ。
……そりゃあ、何も返答は無しか。
多分念話切ったんだなアイツ……
「それで、一体この件はどうしてくれるんですか?」
「む……それはだな……」
「言い訳は言わなくて結構。この先のことだけを言いなさい」
おー怖いなぁ。
実際、本当の性格を知ってからだと全然怖くないけど、初見だと思うと中々に恐怖を感じる。
本当に可哀想だ。
まあ俺を散々イジメてくれた見返りに説教を受けているんだと思えばそこまで大したことでもないし、むしろ圧倒的にマシな方だと思う。
それよりも、あの程度の説教で俺を苦しめたことへの見返りが終わるとか言われたら多分……いや絶対に納得できないと思う。
「……」
無言の圧力……
ただ頭の中が見え見えだからな……
だってさ、こんなにしっかりした感じで説教してて、威厳も今は見た目では出てるのに……
[これで役に立ってるよね! 何か良いご褒美貰えるといいなぁ〜〜]
うん、やっぱりこの精霊には威厳なんてものは無かった。
威厳のいの字も無かった。
子供っぽくて実に単純な思考である。
仮にこのことを竜王さんが知ったらどれほどがっかりすることやら。
それに竜王さんがさっきからフィーから受けている説教も多分馬鹿らしく思えてくると思う。
いつもからあの調子だったら良いのだけど、中身があーだと改善の余地は無さそうだ。
いつか性格を偽ってるのがバレて恥ずかしい目に遭うことは分かっているだろうに。
少しは普段から礼儀とかちゃんとして欲しいものだ。
多分長くなりそうだな。
ってこれは寝るチャンスだよ……な? よし! 寝よう!
そんなこんなで三時間程経ったのだが……
「す、すみませんでした……我の……わたくしの不手際で……」
竜王さん……ドンマイ。
中々に可哀想だよ。色んな意味で。
それにしても……すっかり威厳が消えて無くなってしまってるな。
さっきまでの威勢も見る影すら無い。
一体何を言ったんだフィーさんよ?
それとも単に四大精霊にビビってるだけ?
もし後者だったら本当にボロボロだな。
「言い訳は聞きたくありません」
いい加減許してあげたらどうなんだろうか?
……俺もいい加減先に進みたいんだけど。
この空気間だと俺も行動できないんですが?
心の中があんなに余裕なんだし、もっと周りのことを考えてくれても良くないか?
「って、え!?」
少し体を解そうと動かした瞬間、視界が急に真っ白になった。
「何だよ、今の! 視界が急に変わっ……」
「ふん。よく俺様のところまで来れたな」
俺が混乱しているのを余所に、誰かが声を掛けてきた。
「え? いや、え?」
もちろん、俺は何がなんだが分からないので戸惑うしか無い。
こんな時に冷静な判断ができれば最高なんだろうが、そんな余裕は無かったのである。
「なぁに、お前は分かっていてここまで来たのだろう?」
「いやぁ~〜そのー」
分かってる訳無いだろ。
混乱してて今はそれどころじゃないのにそんな冗談についていけるような余裕はありません。
「偶然って奴か? クソつまんねーな。」
人の顔見てつまんねーって本当に礼儀大丈夫か、この人?
今ので少しだけ混乱が収まったわ。
「あはは……」
だからといって無駄に刺激するのは良くないってことは知っている。
正直、あんまり我慢なんてしたくはないんだけど、こればかりは仕方がない。
無駄に怒らせたら不死鳥のときの二の舞になってしまうかもしれない。
取り合えず、相手が何であれ慎重に行動すべきだ。
……こんなことならまだあの長ったらしい説教を眺めていた方がマシだったかもしれない。
そういえば叡智は学校であのあと上手くやっただろうか?
多分今頃は放課後……つまり部活くらいだろうな。
いやいや、今は眼の前のことに集中……ってこれ何回目だろう。
「俺様を無視するとは……いい度胸ではないか」
あれ? これもしかしてヤバメ? 何か地雷を踏んだ?
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