第98話 大精霊ら同士の争いが始まってたせいで一人だけ置いていかれそうなのは流石に酷いと思う。



 

 習が寝静まった後、ウンディーネとシルフィードの2体はゴーレムを相手に圧倒していた。

 攻擊が届く前に、彼女らによってことごとく破壊されていた。それを黙って見ている精霊、サラマンダーでは無かった。

 サラマンダーは他の大精霊を率いていた。

 つまり、ウンディーネとシルフィードにそれぞれ刺客が送られることとなった。


「ふぅ……これでようやくですか」


「意外と時間かかっちゃったね〜〜」


「そうですね。そろそろ習さんを起こしたほうが良さそうですかね。」


「まぁ二時間も経っちゃったからねー流石に長過ぎるよーとか言われたりして」


「普通に寝てると思いますよ。すごい疲れてたようだったのでそう簡単に起きれるとは思いませんが」


 二人は戦闘を終えて、そんなことを話していた。

 そう、楽観していた。


「……っ。コキュートス、カーバンクル……まさかあなた達が仕掛けてくるなんて思いませんでした」


「僕もだよ。それで君たちなにしに来たの?」


「大凡、あなた達は分かっているのでは無いのですか?」


「大体は。四大精霊に返り咲きたいってところかな?」


「分かってるなら話は早いわ。さぁ始めましょうか」


「……本当に面倒ですね。話し合いで解決は」


「できるとお思いですか? 知っているでしょう。四大精霊の座は現四大精霊との決闘で勝たないと資格が得られないということを。我々からその座を奪っておいて忘れたとは言わせませんよ?」


 その刹那、氷の大精霊、コキュートスから隙を狙った極冷の一撃がウンディーネに繰り出される。

 ただ、もちろん、それは容易に防がれる。


「その程度防げて当然でしょうね。ですが、ただの試し打ちですから。行きますよっ」


 一方その頃……


「君に会うのはこれが三回目かな?」


「私から座を奪っておいてよくそんなことが言えるわね」


「だって……お母さんが四大精霊になれなれーってうるさかったんだもん。仕方ないじゃん?」


「そういうのが一番ムカつくのよ!」


「そんなこと面と向かって言われてもなぁ……だって全部本当のことだし……」


「事実でも言って良いことと悪い事があるのよ? 完全にあなたのそれは煽ってるようにしか聞こえないわ」


「あ、うんごめんね?」


「残念だけどあなたの言動は全て私に対する煽りとしか思えないの。ごめんなさいね?」


 一瞬のうちに大量のダイヤモンド、ルビー、サファイアを生成し、弾丸を優に超えるスピードで上空から降り注いだ。


 シルフィードは風の結界を張りそれに対処する。


 次から次へと宝石が降り注いでくる。

 シルフィードは防戦一方を迫られる。

 これこそが彼女の計画であった。


 本来、この戦闘にシルフィードがいることは想定されていない。

 しかし、彼女はそのことを察知し、今回の火精霊に協力したのだ。


 苛烈な攻撃は更に勢いを強めていく。


 ただ、それはただのブラフであった。

 本命の攻擊をひた隠す為のただの囮でしか無かったのである。



――――――――――



[警告します! 超級連携魔法『絶零超越エクシード・ゼロ』の発生を確認しました! マスタースキル『絶対解除』を即座に使用してください。]


 何だようるさいな……


[一刻を急ぎます。即座にマスタースキル『絶対解除』を使用してください!]


 分かったってば!

 もう面倒くせ……一体何だって言うんだよ。

 気持ち良く寝てたのにさぁ……

 使う相手も分かんないしな……あ、そうだ。

 命令オーダーで見渡す限りの全範囲に使えば良いのか。


「『命令オーダー』っ! 見渡す限り全範囲を次に使うスキルの効果範囲に!」


 よく耳を済ませると何かが聞こえてくる。

 これって詠唱か?


「「……理を外れし冷気よ、我らの敵を薙ぎ払え『絶零超越エクシード・ゼロ』」」


 ヤバいっ。

 詠唱が終わってる。早くしないと!


「『絶対解除:絶零超越エクシード・ゼロ』っ!」


 これで良いんだよな?

 これで防げたってことで良いんだよな?


[はい。超級連携魔法『絶零超越エクシード・ゼロ』の発動解除には成功しています。]


[大精霊『八大精霊:氷精霊コキュートス』、『大精霊:晶精霊カーバンクル』の魔力を確認しました。]


 はい?

 えっと……雷と結晶かな……?

 あ、これって相性的にウンディーネさんにメタ張れる属性じゃんか……おそらくと言うか、絶対に最初からウンディーネさんをボコボコにする気だったのだろう。

 火の精霊王……思ってたよりも本当に性格が悪い。

 相性考えてあえて悪い相手を呼んでいる辺り、本当に性格が悪いとしか言いようがない。


 というか地味に強くね?

 俺負けるんですが?


 雷、冷気に対する完全耐性を得ているため、一部の攻擊以外は無効化できます。

 それってさぁ、俺が防げるんならウンディーネさんとフィーは……


[もちろんダメージを負います。]


 うん、知ってた。

 と言うことはつまり、俺にこの2体を守れということか?


[いいえ、補助をすることをお勧めします。]


 補助って具体的には……?

 おいっ、反応しろよ!

 まさかの無視? スキルが?

 うわぁーマジか。

 おーい。反応してくれ……

 はぁ……俺一人でどうにかできることだけでも頑張ろう。

 で、何をしたら良いんだよっ!


 それが分からないとできないだろ。

 また実質一対一の戦いが始まったよ。

 あーあ。もう俺必要ないんじゃないか?

 ないよな。


[超級連携……]


 どうせ、超級連携魔法の詠唱でもし始めたとか言うやつだろ? 分かってる。

 だから言わなくても結構。

 でも仮にそう伝えたところで、どうせ無駄になるんだろうなぁ……はぁ。



 

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