第95話 対量産型高エネルギー対象自動捕捉型砲台なんて誰が予想出来ようか? いや出来ないだろ。




 取り合えず100パーセント面倒なのは確かだ。

 それとこんな物騒な中に住んでいたこの二体の竜もかなり頭おかしいと思う。


 それとなんで砲台破壊しなかった。

 攻撃されるだろ。

 それでダメージ食らっちゃうから先に壊しといた方が絶対に良いだろ。

 それに竜だから防御力高いやらなんやらで仮に効かなかったとしよう。

 それでも突かれて鬱陶しいとか考えなかったのか?

 音もかなりうるさいぞ。

 それなのになんで起動させたまま放置してるんだよ。

 ビームショットかなんだか知らんがSFを持ってくるな。

 余計に話がややこしくなるだろ。


「こんなところでよく暮らせるなぁ! お前ら!」


 そして、俺は今ビームに打たれそうになりながら……いやかすりながら一つ一つ丁寧に壊すという恐ろしくて別にやらなくても良かったことをやらないといけなくなっている。

 怒鳴っても仕方がないだろう。


「だってワシ面倒クサいし……」


 面倒くさいだ?

 その結果が俺の大変な苦労に繋がってるんだぞ?

 とか言ったら孫の竜が俺のことを殺しにかかってくるんだろうなあーー理不尽。


「へいへい、理不尽だな全く!」


 幸いビーム砲台自体はただの攻撃一回で壊れてはくれるけど、電磁バリアみたいなののせいで遠距離攻擊は何か反射されるし、とにかく効率が最悪過ぎる。


 簡単に今の状況を説明すると、持久走を走った後に急に体力が回復してまた持久走を走ってを繰り返してる気分である。つまり最悪だ。

 それに加えて飛んでくる攻撃を避けなければならないとかいうクソ性能まで付いている。


「こんなのやらせんなよ……」


「あはは、はあー仕方ないよ」


 ほら、フィーも疲れてる。

 大精霊とあろうものがこんなにヘトヘトになるくらい疲れてるのに人間の俺が疲れないわけ無いだろ?


 ついでにこの空間なんか魔法が使えないし、範囲攻撃も使えないというクソ空間になっている。


「せめて範囲攻撃さえ使えれば……」


「ワシらがワシら自身の寝相で寝床を壊さんように念入りに術とスキルを駆使して防いでるんじゃよ。」


 あっ、そう。

 確かにその対策は必要かもだよ?

 それでも俺の苦労も考えて欲しい。

 俺の考えが滅茶苦茶なのは分かってる。

 けど仕方ないだろ?

 こんなにやられてまだ耐えられる完璧超人がいたら教えて欲しいくらいだ。


[ユニークスキル『完璧超……祝福ギフト恩恵ギフト』に妨害されたため、ユニークスキル『完璧超人』の獲得が失敗しました。再度獲得の施行をしますか?]


 やめろ。

 また同じように妨害されるだけだ。

 そんなの繰り返してたら鬱陶しいったらありゃしない。


 あれ……そういえば何か忘れてたような……あ。


「すっかり羽澄さんのこと忘れてた……と思ったらもう既に羽澄さん放心しちゃってるし。まあこんな意味不明が続いたらそうならざるを得ないよな普通は」


 同情するよ。俺も最初はそうだったから。

 すぐに慣れさせられたけどな。クソっ。

 誰がこんな目に遭わせたと思ってんだ? お前らだよ、叡智と通知野郎。いや、もう片方はギフトだっけ?

 それはどうでもいいとして、俺の例から見るにもうどうしようもないんだ。

 それでも理解したくないの嫌なほど分かる。

 がとにかく今は割り切って守りに転じるか避難に転じて欲しい。

 たまたま今まで攻擊の標的にされてこなかっただけだろうから、普通に当たって死ぬ可能性もあるのだ。


 叡智曰く、死んだと思ったら死ぬらしい。

 どこのお笑いかな? とも思ったが、前世の記憶を取り戻していない状態で体が死んだと判断したらもうそれは死らしい。


 本当にとことん意味不明である。


「あ、習〜〜どうする? あかりちゃん誰が守ろっか?」


 フィーが来た。

 俺が迷ってる様子を見て戦闘中ながら来てくれたらしい。

 ついでに周囲に結界を張って壊されたら張り直すのを繰り返してくれている。

 こういうのってオートマなんちゃらって言うんだっけ?


 ……それにしてもこの技使いやすそうだな。

 風転だっけか? 名前はどうでも良いか。それはともかく使い方教えて欲しいんだけど。


「あー無理だと思う。風の精霊王固有の能力だからねー……あ、一応方法はあるにはあったかも」


「方法とは?」


「僕が貸し出せばできるけど、それだと僕が使えなくなるからどっちにしろ無理だよー」


 あ、無理なのか……いやさ、少しは楽になるって思ってたんだけど……そうか、無理なのか。

 無理なら仕方がないよなーって、フィーって精霊の女王だったの!?


「あーうん。大体そんな気はしてたから全然大丈夫。まあ風の精霊に限るけどね」


 ウンディーネさんも確かそんなことを言っていた気がする。……あ、そういえば精密機械って雷に弱くね?

 ってことは……いや範囲攻擊はできないんだった。

 じゃあ連鎖系の攻擊とかってあったりしたっけ?


[スキル『連鎖』の他に、チェイン系の攻擊は判明している限りでは火属性、雷属性、光属性、闇属性、物理のみです。]


 え、マジであるの?

 適当にあったらいいなぁ程度に思ってただけなんだけど。

 ちなみにどのくらい連鎖する?


[物理攻撃による連鎖チェイン攻撃は十回命中した時点で、魔法による連鎖チェイン攻撃は魔力を保有する対象が十回命中した時点で連鎖が終了します。]


 あの砲台って魔力持ってたりする?


[いいえ。保有していません。]


 おっと。これなら現状を打開できるかもしれない。

 砲台には無限に連鎖してくれるっぽいから何とかなるのかもしれない。

 それでなんだけど、ここって魔法使えたっけ?


[精霊のみ可能です。それ以外の存在は魔力を使用できません。]


 何故に精霊だけ魔法を使えるんだよ。理不尽だろ。

 そういえばさっきからフィーずっと使ってたな。


[この火山は噴火以前は精霊神の旧聖地だったことが起因しているようです。]


 うん、今のただの愚痴ってわかるよね?

 でもさっき俺魔力使えてなかったか?

 魔力弾は飛ばしてたような……


 精霊の付近にいると魔力の制限が緩和されるようです。

 へーそうなんだ。

 で、結局のところチェインん系の攻撃って使えるのか?


[現状では風精霊シルフィードの傍、もしくは水精霊ウンディーネの傍でのみ魔法の使用により可能です。]


 良かった……これでようやく終わりそうだ。

 因みに連鎖速度は秒間三体って、どんだけ時間掛かるんだよそれ。


「ごめん。また記憶が欠けちゃってたみたい」


 ついでに羽澄さんの記憶がまた戻った。

 ん? えっと……これ結果的に俺があれこれする必要なかったんじゃ……

 ただ無駄骨を折っただけかよ。

 本当に最悪なんだけど。もう地獄くらい苦しくなってきたんだけど。

 あーあ。もう最悪だ。

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