第94話 どう見てもファンタジックな異世界で終末感溢れる近未来都市の廃墟群は意味が分からない件について。



 断崖絶壁を急上昇した。

 どれだけ体に圧が掛かってるのかは分からないが耐性盛り盛りなお陰か大丈夫らしかった。

 羽澄さんは多分……もうなんか身体能力とか耐性とか素がそもそもバケモンなんだと思った。

 うん。今考えても彼女は絶対に人の姿をしただけのバケモンだ。そうに違いない。そう思わされた。

 今能力とかが低い判定になってるのは本人がステータスを無意識に制限しているとかただそういう感じなだけにしか思えなかった。

 そんなこんなでようやく火口の内側に行けそうになった。


 そのまま一時間ほど掛けておおよそ宇宙空間的なところを通り越して、今それからまた下降している最中なのだが……

 ちょっと待て。

 なんだあの景色は。

 あのさ、また世界観が狂いそうになるんだけど。

 どうしてこんな意味不明な光景が広がってるのかが分からない。

 どう見ても近未来、いや未来の兵器みたいな物とか朽ち果てた変な形の建物とかあるし。

 うん、頭がおかしくなってきた。

 そういえばとっくの前におかしくされてるんだった。


「あの、あれ何?」


 おっと。疲れ過ぎて敬語で話せなかったぜ。

 もう面倒だから敬語使うのもやめるか。

 よし、そうしよう。

 第一こんな敬意のへったくれも無い失礼極まりない奴らに対して敬意を示す必要があるのだろうか。

 こっちは異常に迷惑かけられてわざわざ苦しい目に遭って、それで敬語とかもうかける必要ないよな。

 タメ口で十分だ。うん。


「ワシ……舐められてる?」


 舐めてる訳じゃない。

 ただ敬意を示すような相手じゃないって判断しただけなんだけど。

 と言ってもまあ内容的には舐めてるのとあまり変わらないか。


「おじいちゃんをいじめるな!」


 いや、虐めてないから。

 それとその見た目で言われても違和感がすごいんよ。

 ただでさえ周囲の景色に頭がバグり散らかしそうなのに、同行者もアベコベというなんか終わってる。

 ほら、現実に語彙力が無いなってだろう?

 そういうことだ。本当に狂いそうたらありゃしない。


「あれ……ここどこ……なんか崩れたビルが見えるような気がするんだけど」


「そのまさかだよ。ほらあっちなんて橋が崩れてる」


「あ……え? どういうこと?」


「そういう場所らしい。俺も良く分からん」


「はいは~い! 私も分からないっ! と言いたいところだけど心当たりはあるかな」


「というと?」


「多分ここ異世界人が街ごと大量に転移してきた跡地だと思う。これは推測だけど、世界間の歪みは時間とか関係無く移動させちゃうらしいんだ。未来の習の世界からか、習の世界よりも科学だっけ? が発展している世界から転移しちゃった都市の残骸だと思うな」


 フィーって実は頭良いよな。

 少なくとも叡智よりは頭が断然良いと見える。

 それはもう自明の理か。


[ユニークスキル『自明の理』を獲得しました。]


 ……ウザっ。


「思うんだけどさぁ、習の頭の中って漫才か何かだよね」


「いや、仕方ないじゃん。頭おかしい奴らしかいないもん。てかナチュラルに呼び捨てしてんのな」


「習だって僕のことあだ名で呼んでるし別にそこまで大差ないじゃん。別に呼び捨てくらい許してよぉー」


「それはそうだけど……年の差みたいなのがあるじゃん」


「精神年齢は同い年くらいだよ?」


 それってどうなんだろう。

 俺よりも年齢が圧倒的に高い時点ちょっとでなぁーやっぱりこういうことは考えない方が良いのかもしれない。

 でも無理だ。

 正直言って同年代みたいに相手することは可能かもだけど精神的にはどうあがいても無理な気がする。

 精神は下で経験は上なやつ何だぞ?

 少しどころかそもそもこいつもゴチャゴチャしてたのかよ。

 

――シュー


 変な音が聞こえて来る。

 なんか嫌な予感がするのは気のせいか?


――シュー


――シュー シュー シュー


 めちゃくちゃあちこちから聞こえるんだけど何この音?


[警告します。数千台のエネルギー砲台の稼働を確認しました。至急個体名:羽澄ひかりの避難を推奨します。]


 そんなことだと思ったよ。

 それに数千台って……多い多い。

 しかも砲台だから敵判定にすらならないという。

 魔力が一切入ってないから


――パーンッ


 なーんか聞こえてくる音はショボいくせして実際の着弾地点はちゃんと熱で溶けて貫通してるっていううーん……緊張感がいまいち持ちにくいのに結構ヤバそうなのがまた酷い。

 

「取り合えず結界張っておくよ?」


「あ、ありがとう」


「これで羽澄さんを守る問題は解決だな……守る必要あるのかって思うけど。ついさっきあの速さで上昇したのに生身で耐えてた訳だし。まあそれで外圧に耐えられたからって防御力が高いとは限らないけど」


「備え有れば憂い無しだよ! え、そうだったよね?」


「ああ、合ってる」


 にしてもこの数の砲台をどうしようか……

 面倒で済む量じゃない。

 幸い数千台らしいからまだ壊せなくも……


[周辺エリアに存在する稼働可能な自動砲台の総数は最低約三億台と推定されます。]


 無理ゲーじゃんか。

 もう、装備無視して帰って良くね?

 それとグランドシナリオを失敗するだけで魂ペナルティーとか酷過ぎじゃなくないか?

 はぁ……取り合えず何とか処理しますかね……はぁ……

 取り合えず戦闘手段が乏しいし、今は剣を使って砲台を破壊しに行くことにしたよう。


 それといつものことと笑ってる竜の二人よお……本当に覚えておけよ?

 全く、疲れる限りだよ。

 本当に怠いな……はぁー


[グランドシナリオ『白亜の魔女』が進行します。]


 あっそう。

 取り合えず俺が今やるべきことに最大限集中させてくれ。


 あーあ。本当に何もかもタイミングとか考えが合わない。

 本当につらすぎる。

 よし。こうなったらもうヤケクソでいいや。

 砲台壊すにしてもヤケクソになって壊せばいい話だし。


 あ~あ。それにしても……この違和感うぜー!

 はあー。

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