第78話 突然のカオス事態から抜け出そうとするのは当然のことだよな。




 目が覚めた。

 その途端に聞こえたのは……

 謎のラッパ音。

 へ? 俺は結界を張ったはずなのになぜ結界の外に出ているんだ?

 それに、周りの気配が多すぎる。何人いるんだよ。

 なんかのパレードかな?

 探知系のスキルで周りの状況を確認するか。

 うわ、すごい人だかり。

 みんなこっちに向かって勇者様、勇者様って叫んでる。

 あれ? もしかして俺が今この馬車みたいなものの上にいるのって……魔王軍五臨衆の一人を封印したから?

 あ、面倒事の匂いがすごくする。

 きっと俺のことを祭り上げる気だろう。

 ってことはこれ、目が覚めてない振りをしたほうがいいかもな。


[それはそうかもね……このまま目を覚ましでもしたらただの晒し者になりそうだもんねぇー]


 そういえばお前はどうしてんの?

 辺りに気配はあるけどすごい薄っすらしかないからさ。


[えっと……霊体化してるんだぁ……]


 そうか……あ、それなら俺もできたわ。

 俺も霊体化使えばここから逃げれるんじゃ……


[裸になる気!? それはやめてよぉ……僕も一応女の子なんだよ?]


 めちゃくちゃ生きてるくせに?

 女の子? 確かに性格はそうかもだけどさぁ……

 正直言って見た目は若くとももう数万年……


[それ以上言ったら怒るよ]


 うわっ、怖っ。

 マジじゃん。ガチトーンじゃん。

 そりゃあ女性の前でさ、年齢の話した俺も悪いよ?

 でもよく考えて見て欲しい。

 これは一応思考なんだよ?

 制御なんて出来っこないだろ。


[まあ、それは確かに。あはは、でも今は僕は安心かな]


 えっと……急にどうした?

 話がズレてるような?


[あーえっと……今の習くんって僕の正確な場所知らないでしょ?]


 あ、うん。

 ここら辺にいるかなぁってことくらいしかわからないけど……

 それがどうかしたのか?


[相手の正確な位置を把握しておかないと心は読めないんだよ? 知ってた?]


 初耳なんだけど。

 要は俺は念話している訳ではないけど、今まで会った念話できる人とか精霊とかは心を読めるから会話が成立したのか……


「異境より舞い降りし勇者様に盛大な祝福と女神の加護を!」


 女神の加護!?

 ふざけんじゃねぇ!

 もう加護系統はウンザリなんだよ!


[マスタースキル『万象魔法』の使用を推奨します。]


 えっと……それでどうすんの?

 万象魔法とは?


[一部を除いてあらゆる魔法の行使が可能です。]


 いや、詠唱しなきゃじゃん。

 そんなことして逃げたらやばい奴じゃん。


[ユニークスキル『叡智・熾天』によるフルオート機能を発動します。]

[称号『放置ゲーマー』の効果を発動します。]

[hpq@zl^スキル『kdo3j@Ⅲ』の効果により、意識の喪失効果が無効化されました。]

[『転移テレポート』……完了しました。]

[ユニークスキル『叡智・熾天』によるフルオート機能を解除しました。]

[称号『放置ゲーマー』の効果を解除しました。]


 ふぅ……抜けれた。

 女神なんぞの加護を押し付けられる前にこうやって逃げれて良かった。

 あの人たちにとっては一瞬で非常事態を起こして悪いとは思う。

 それでも寝ている体を強制的に祭り上げるのは違うんじゃないかと思う。


「ふぅ……転移してきたよ……」


 もう転移、転移って魔法でしか使えないのかよ……

 一々詠唱をしないといけないとかクソゲーじゃないか。


[ユニークスキル『転移門ゲート』を獲得しました。]

[ユニークスキル『通知簡略化Ⅲ』が『通知簡略化Ⅳ』にランクアップしました。]


 それってわざわざ通らないといけないから今みたいな状況とかだと使えないじゃないか。

 もっと簡易的な移動方法が欲しいんだが。


[ユニークスキル『万能移動』を使用することによって瞬間移動が可能です。]


 じゃあそれを先に言ってくれよ。

 だってさっきそうすればよかったじゃんか。


[半径200m以内にしか瞬間移動はできません。よって、あの場での使用は不適当でした。]


 あ、そう。

 正論言われるのが一番怖いんだが……

 言い返せないし自分が悪いって明確に分かっちゃうし。

 でもそれならそういう詠唱とか技名をいうこと無しに長距離転移する方法が欲しいんだけど。


[風属性魔法でも転移魔法はあるよぉー。使用魔力は普通の転移魔法の『転移テレポート』と比べるとかなり大きくはあるけど……]


 あ、それ教えてくれ。

 頼むから。教えて、ね?


[オッケー! その代わり僕と契約してくれる?]


 ……まあそのくらいなら。

 だってもうシナリオが追加される心配はない訳だし。

 別にってどころかむしろありがたいレベルだ。

 

[オッケー! じゃあ交渉成立だね! えっと……この魔法はね『旋風孔ウィンドポータル』っていうんだけど……それでね、風で空間に穴を開けてそれを繋げて移動するっていう魔法なんだけど……触れたらもう一つの穴のところに一瞬で転送されちゃうんだけど……]


 うわっ丁度欲しかった奴じゃん。

 叡智なんかよりもよっぽど頼りになるな、お前。


[お前ってやめてよ……せめてシルフィーとかさあ……]


 じゃあフィーで。

 よろしくねフィー、これからも手助けを頼む。

 とりあえず……契約するか。


[四大精霊:風精霊シルフィードとの契約が完了しました。]

[一部のステータスが上昇しました。]


 すごい。

 ちゃんと通知が簡略化されてる。

 この調子で通知が無くなってくれたらいいなぁ……

 まあそんなこと絶対ないけど。


 っていうか通知簡略化の存在すっかり忘れてたわ。

 あとランクアップ遅すぎませんかね?

 こういうものなのかな……


「勇者様がいたぞ!」


「今すぐにお呼びしろ!」


 やべぇ……見つかった!

 早く逃げないと。


「オッケー! 僕に任せてー!」


 本当に助かるけど出来るだけ早くしてくれ!



 

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