第77話 取り合えず心を読めるようにしてくるのはやめてもらえないだろうか。



「ねぇさ、俺もう動きたくない。ここで寝て良い?」


 俺は唐突にそんなことを言った。

 というのも、色々疲れたからだ。

 スキルでいくら精神的なダメージを回復させたとしても、その時の地獄がフラッシュバックして来るのでかなり精神的に辛いのである。

 こういうときは早く寝て、記憶を整理してもらうのが一番だろう。


 ……こういうときって普通記憶整理とかいうスキルくれるところじゃないのかよ。

 本当にこの状況でくれなかったらただの非道すぎる最低の権化になるぞ通知さんよ。

 うん、通知はこれからは最低最悪の非道塵屑権化だ。

 間違いない。きっとこの光景だって笑ってるに違いない。


[スキル『嘲笑レベル1』、『煽りレベル1』を獲得しました。]


「え? どうしたの本当に急だね」


「それがさぁ……」


 俺の身にあったことをシルフィ何とかに話した。

 ウンディーネさんとの扱いが違いすぎと思われるかもしれないが、それは仕方ない。

 あの人は癒やし、そして気遣いができる。

 しかしこの駄精霊はからかってきて、さらにおふざけも過ぎる。こんなの人間関係だったら崩れる原因になるぞってくらいにはヤバい冗談もある。


「うんうん分かった。分かったけどね? その前になんてこと思ってるの? 結構ショックなんだけど?」


[エクストラスキル『絶対読心』を獲得しました。]


 いらねぇよ!

 誰がいるって言ったよ。うぜぇよ。


「あ、ゴメンな?」


「軽ぅー。……まあいいけどさぁ……君は……習は辛かったのは知ってるから今は許すけどね?」


「おい、誰が名前下で呼んで良いって言ったよ。急に下で言われると気持ち悪いわ」


「酷いよぉ…… って、もしかして君……これは言わない方がいいね。何でもないよ」


(流石に陰キャとか童貞とか言うのは失礼だもんね。僕、よく耐えた! すごいぞ、僕っ!)


 ……読めなくて良いのに。

 コイツ……ウザすぎる。

 もう嫌だ。もう嫌だわ!

 なんてスキルくれてんだよ!


「絶対に何か言おうとしてただろ! しかも俺を馬鹿にするような話じゃないか?」


「えっと……ごめんなさい」


(本当にごめんね……さっきのは言い出すべきでも無かったよね……ごめんね、だから嫌いにはならないで欲しいな……)


 意外とすんなり謝ってくれるところは性格的には良いって思えるんだけどな……

 ってか性格可愛いかよ

 でもなあ……コイツからかって来るからな……


「なんか複雑……それに関しては悪かったって……」


(うーん……何で急に性格可愛いかよなんて思って来たんだろう……すごい、全然分からない)


「別に良いよ。今度からしないっていう条件付きだけどな」


「分かったよ……」


(できるかなあ……でもなあ……嫌われるのは嫌だし……気をつける他ないよね! よしっ頑張るぞぉー)


 意外と素直?

 あと、どこのキャラですか? みたいな性格だな。

 っていうことは沙耶よりマシと言うより、感覚を修正できれば結構優しいし、優良株なのでは?


「誰が優良株なの! もう……まあ褒めてくれてるんだろうけどさぁ……なんか上からっていうか……少し納得いかない……」


(……もしかして、僕の思考読まれてたり……だってそうとしか思えないし……それにしても純粋に褒められた。えへへ……)


 あー面倒くさいなコイツ……

 いや、普通に女子ってことかな。

 少なくとも沙耶よりは女子力は圧倒的にあるんだろうし、そういうことか。まあ本当のところはどうかは分からないけどな。

 あと、えへへって使うやつ現実にいたのか。

 創作の話だと思ってたわ。


「うーん……なんか良いようにされてる気がする……まあいっか……話変わるけどさ、もしかして思考読んできてる?」


 あ、流石にバレるか。

 でもなあ……バレたとしてもなあ……止められないし。

 叡智がどうにかしてくれるのを待つ以外にないからなぁ。

 でも逆にここまで気付かないのやばくね?

 

「ヤバくないもん!」


(やっぱり読んできてたんじゃん。……っていうか僕すごい恥ずかしいよぉ……ってこれも聞かれてるんだよね、何も考えちゃだめ……)


 もう手遅れだと思うけど?

 まあ別にそれでいいなら俺は構わないけどさぁ……

 カオス何だよ。

 人の心情が入ってくるとかさあ……本当にクソ面倒。


「いや、やばいだろ。読心してるのに読心されていることに気付かないのはもう鈍感って域を通り越して感覚ないんじゃないのレベルじゃないか?」


[スキル『感覚遮断レベル1』を獲得しました。]


(えっと……どうしよう……言い返せない……取り合えず話題を変えよう、うんそうしよう!)


「……本当にそのスキル通知邪魔だね……」


 それはそう。本当に邪魔だ。

 でもそれはともかくとして、話題そらし方あまりにも雑すぎないか?

 流石にその言い方は話題を逸らそうとしてるのがモロバレですが?

 あと読心してること忘れんなよ。あー面倒くせ。


 まあいいや、面倒だし。

 反応するのももうやめよ。


「それはそれでなんか傷つく……」


(無視されるのは嫌だよぉ……)


 だから可愛いかよ。

 でももう普通に全てにおいて反応したくないからな……

 よし、寝よう。そうしよう。

 ここは平原の真ん中だけど結界張れば大丈夫だろ。


[称号『風精霊シルフィードの寵愛』の効果が発動します。]


「『万能結界:風帝結界』」


[称号『超重溜息迫撃砲』の効果が発動します。]

[溜息の回数を測定……2720回。]

[威力の計算を算出……倍率、5540倍。]

[称号『超重溜息迫撃砲』の効果が発動しました。



(あー……それなら仕方ないかなぁ……少し寂しいけど。さっきの可愛いかよで十分補充できたしいいや)


 何が補充できたんだよ。

 すげぇ気になるわ。……まあいい寝るか。


「『睡眠動作:入眠』」


 話変わるけどさ、これで俺が外で寝るの何回目だっけ?

 俺さ、最近外で寝すぎじゃないか?

 ……あ、眠くなってきた……おやすみなさい

 そのまま俺は草原のど真ん中で眠りにつくのだった。

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