第68話 やっぱり幼馴染もシナリオも、俺を徹底的に追い詰めて来てるに違いない




 本当に紗耶がいるとろくなことにならない。

 事実この状況は最悪と言ってもいい状況だ。


 俺じゃあどうしようもない。

 もう時間がない。どうしたら……あ。

 ウンディーネさんを呼べば……

 でもなーウンディーネさんもこんな頻度で呼ばれたら大変だもんな。

 いや、でも呼ぶしかないだろ。

 フェニックス……赤い鳥はなんとなく呼びたくないし。


「もしかして呼ばれましたか? そうでなければすみません。」


 へ? まあ呼ぼうとは思ってたけどさ。

 まだ呼んでない。ありがたくはあるけどね?

 

「ってなんですかこの状況!? どうやったらこうなるんですか!?」


「それが……沙耶が……」


「……大体把握しました。大変でしたね」


 あ、それで分かるんだ。

 俺と同じ沙耶の被害者だしね。

 そっか……ふぅ……ひとまず安心かな。


「水よ、消えなさい」


「え、スゲェ……」

 

 やっぱりマジもんのチートじゃん。

 ただの究極上位互換なんだよな……


――ゴゴゴゴッ……


 え……何?

 沙耶の魔法でも、ウンディーネさんの魔法でもない。

 一体何が……ってはあ!?


「おいおい……ダンジョン復活してんじゃん……」


 いや、それ以上のことが起きてるって言われても驚かない。それほどまでにデカい。


「わぁー! 大きな穴〜〜ねえねえ! 習くん! ほらすっごいよ!」


 いや、求めてないことが起こってそれに対してはしゃがれてもな……


「これは……次元の亀裂ですね……ってなんでこんなところに……」


 どうやら考え込んでる様子だ。

 そんなに重大事態ってことか。

 

「ねぇ! この穴どこに続いてるのかなー? 私めちゃくちゃ気になる!」


 おい、沙耶。空気を読め、空気を。

 今はどう考えてもそんな状況じゃないだろ。


「……っあ……」


 会長と羽澄さん放心しちゃってるよ……

 むしろこうなるか狂うのが普通だよな。

 いや、もはや普通って概念がわからなくなってきた。


「取り合えずこれでよしっと、一時的ではありますが対処はしておきました。とは言っても本当に一時的ですけど……」


[グランドシナリオ『白亜の魔女』が進行しました。]

[次の目的地を表示します。]


 ……俺に死ねと言いたいのか?

 こん中に飛び込めと?

 無茶が過ぎる。殺されるか死にに行くかの二択って終わってない?


 行くしかない感じだよな……


「……通りでここに裂け目が生まれた訳ですか。にしても流石にこんな場所ではなくとも他に作る場所ならどこでも良かったでしょうに……っあすみませんこちらの話です。気にしないでください。」


 なんか……ウンディーネさんも張り詰めた様子だし本当に行きたくないんだけど。 

 

[個体名:鈴村習に伝令、次の目的地に向かってください。]


 文句言わずにさっさっと行けって訳ね……

 流石シナリオ、いつにも勝ってクソだわ


 で、これどこに繋がってるんだ?

 

[古龍の魔力を確認したためいずれかの古龍の住処、またはその周辺の可能性が高いです。あと、異世界です。]


 いやいやいや。

 確かに龍ってだけでも意味わからないのに異世界って。

 急が過ぎないか?

 あと取って付けたようにそんな重要なことを話すな。

 仮に聞き漏らしてたらどうするんだよ。


「……この気配は、やはりですか。くれぐれも粗相の無いようにして下さいね? 私のときみたいに心の中で愚痴を上げていたら怒らせちゃいますから」


 ……知り合い?

 えっと……付いてこないの?


「以前のポイさんのところでもあった結界が張られてるんです。本当にすみません……」


 ポイさん……? えっと……誰?


[マスターが契約している不死鳥フェニックスの個体名称、ポイニクスにちなんだニックネームのようなものでしょう。]


 あ、そう。

 ってあれ? もしかしてまた一人?

 

[それは違うようです。マスターと同時に羽澄ひかりもこの結界からは除外されているようです。]


 こんなとき聞くのもあれだと思うけどさ、ウンディーネさんが入れない結界を張れるなら最初から戦闘前に張れば良いのでは?

 あのさ、前から思ってたけどそうすればダメージゼロだよね? なんで?


[それは結界の強化代償作用によるものです。]


 強化代償作用とは?


[結界は多様な設定が可能ですが、その性能を高める場合には膨大な……]


 概要は良いから。本題を話してくれ。


[……この結界は内側からの攻撃は完全に遮断するようになっています。最小展開サイズも決まっており、MP最大時にしか使用できません。よって使用機会が限られた結界ですから防御としてではなく、基本的には決闘の際の結界として使用と防犯用としての使用がほとんどです。]


 うん、最後の情報いらないね。

 まぁ面倒くさいのは分かった。

 そして一人でいかなきゃってのも分かったよ……

 一応一人って訳でもないけど……これは実質一人だな。


 ……はあー。面倒事に巻き込むなよ全く。

 情報量が本当に最近は多すぎるよ……はあ。

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