第69話 マイペース暴君と、シスコンの極み乙女に精神がボロボロにされそうだから異世界に逃げ込むのは間違っているだろうか。
今俺は会長に引き留められている。
いや、まあこうなるだろうとは思ったけどさ。
——遡ること二分前。
[ユニークスキル『
ふぅ………はぁ……ごほん。
――遡ること二分前。
「お姉ちゃん……私あの中に行かないと……」
「何言ってるの? そんな危険なこと認められる訳ないじゃない!」
「ごめん……私にも事情があるから……」
「よっし、ふう……俺行ってくるわ」
「あなた正気!? そんな得体の知れないところに行くなんて自殺行為よ」
知ってるんだよそのくらい。
俺だって強制されてなければ普通に行こうとは思わないからな。
強制されててもかなりの抵抗感あったし。
それに抵抗感どころか忌避感を感じていたくらいだし。
そんなに面倒なことはしたくない。
ましてや死にゲー案件なんて以ての外だろう。
[スキル『コマンド操作レベル1』、『確率調整レベル1』、『遊戯レベル1』、『HPゲージ表示レベル1』、『MPゲージ表示レベル1』、『コマンド表示レベル1』、『スタンゲージ表示レベル1』、『奥義ゲージ表示レベル1』、『クールタイム表示』、『予備動作察知レベル1』、『攻撃範囲表示レベル1』を獲得しました。]
……はあ。
でも行く以外の選択肢が与えられていないんだよ。
断ったら死に直結するし。こういうのはきっと前世で死にゲーVRとかをやっていた中でも狂った奴らが転生してやることだ。
決して人生一回目の経験の浅いたかが高校生にやらせることではない。
はずなのに……現実はこうも残酷なものしか見せてくれないのだ。
異世界転生とかしたいって言ってる奴をぶち倒したくなるよ、本当。
「そうだよ? でも俺ここで断っても死ぬんだからどっちにしろ同じだし……」
「それってどういうこと? 詳しく説明しなさい」
「シナリオとかいう世界から理不尽に与えられるゲームでいうクエスト、学校の例で挙げるとそうだな……まあえっと部活強制の学校でなんとなく運動部に入った子が部員の少なさ故に大会に出させられるようなもんだ。それで負けたペナルティーは死っていうだけ。だけっていうのもおかしいけどそういうことだ」
勢いで言ってしまったが大丈夫だっただろうか。
特に問題は起こらないとは思うが……
「あらら、習くんはシナリオ? えっと……取り合えず頑張れ! 私も今ユニークしてるからね〜〜」
気楽だな。
ユニークシナリオで喜べるのなんて頭おかしいほど強いやつか、頭のネジ外れてやつしかい無さそうだよ。
少なくとも俺の知る限りでは沙耶以外には思いつかない。
「もしかして……ひかりも……」
「あはは……そうだよ。悪い? 家族に迷惑掛けたくなかったの。少し前までは入院してて」
「どうしてすぐにお姉ちゃんに相談してくれなかったの! そんな一大事に悩んでるひかりを助けられない方がよっぽど辛いのよ? きっと……」
「私の気持ちなんてお姉ちゃんには分からないよ……」
こっちはこっちでシリアス展開だし……
何がなんだか分からなくなってきた。
正直、こんな状況にいても耐えられそうにないからもういっそ飛び込みたい。
叡智さん、もう離れたら死ぬっていうほぼ呪いの効果は解除されてるか?
[スキル『解呪レベル1』を獲得しました。]
[前回のシナリオ進行によりその効果は解除されています。よって単独での突入も可能です。]
オッケーならもう行こう。
シリアス展開なんて見たくないし。
正直この状況に居合わせるのは気まずい以外の何ものでもない。
沙耶はそんなことお構い無しみたいだけど。
ともかくもう行こう。この空気に耐えきれそうにない。
怖いな。大穴じゃんか。
ゆっくり落ちていきたいけど……
飛翔を使うか?
[スキル『滑空レベル1』を獲得しました。]
滑空か。
うんまあ一番今は良さそうだ。
でも怖いな……底が見えない。
そりゃあ別の世界に繋がってるからなんだろうけどさ……
えーい、躊躇なんて無駄だ、行こう。
え、なんで止めるの?
「あなたそんなに死にたいわけ!?」
「いや? 行かなくても確実に死ぬ、行ってもほぼ死ぬなら、死ぬ確率が低いほぼ死ぬの方を選ぶのは当然じゃないか?」
「ひかりが仮にあなたの真似でもしたらどうするの……」
「でも俺死にたくないししょうがないだろ。」
流石に俺でも死ぬのは無理だもん。
そりゃあ行かせてもらわないと……
「会長? 俺を殴りこみながら掴まないで……ドンドン威力上がってるから! 羽澄さんが好きなのは分かったって! このシナリオ過ぎたら金輪際関わらないって約束するから!」
「えっと……それは困るかな。学校で本音を話せる唯一の仲だし……やっぱりそれは嫌かな」
「鈴村さんこっち来なさい。話があります。」
というわけだ。
つまり全部沙耶が悪い(投げやり)。
もうそういうことにしておこう。
そういうことにしておかないとやってられない。
「ですって。良かったですね。ひかりに信用されて。それでも勘違いはくれぐれもしないように。よろしいですか?」
話が脱線しすぎだろ。
訳が分からなくなってきた。
会長の目線が俺の反対側に向いた。
さっきまで拘束されてたが、今はなぜか拘束がない。
これって見つからずにあっちの池までいけるかも……
でも今こそ絶好の機会だ。この瞬間なら、行ける!
まあ行きたくないけど
「『跳躍』……よしっ、『滑空』……ってうわあ!」
加速が止まらない!
ヤバい、速度調節できない。
このままだと外壁に衝突する……
どんどんと加速が早まっている。
恐らくはそういったスキルが働いてるのだろう……って冷静にそんなことを考えてる場合かよ!
今大事なのは加速が止まらない原因を見つけることじゃないし、絶対に対処法を考えるのが先だろ!
早くどうにかしないと……
[スキル『速度調節レベル1』、『加速攻撃レベル1』、を獲得しました。]
「『速度調節:減速』! 『速度調節:減速』! 『速度調整:減速』! 『速度調整:減速』」! 『速度調整:減速』! 『速度調整:減速』!」
マジで衝突寸前だった。
少しずつ気力が持たなくなってきた。
って滑空が解除されてる!?
おいおいおいおいおいおいい!!
これはマズすぎだろ!
ぶつかる!
[個体名:鈴村 習は死亡しました。]
[称号『
一回死んでるじゃん。
落下耐性くらいつけておいてくれよ……
[スキル『落下耐性レベル1』を獲得しました。]
本当に今更だわ。
もう少し早かったら助かったかもしれない。
けど、今のはただの皮肉だろう。うっざ!
[ユニークスキル『肉体操作』を獲得しました。]
肉しか共通点ないだろ!
っていうか通知、絶対に俺のこと見て嘲笑ってるんだろう。
異世界に来たばかりっていう事実がある時点でかなりきついのにお前のちょっかいはただの障害でしかないぞ!
……はあ本当に最悪。
さてと、ここの近くに住む古龍っていうのの探すか。
まあ生きて帰れるかはわからないけど。……クッソ。
それにしても移動するだけで死ぬってどんな鬼畜設定だよ。キショすぎるだろ。この世界はキショイことしかできないのかよ。
ああ、そうだったわ……はあぁ……
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