第63話 やっぱり俺が辱しめを受けるのはどうやっても回避はできないらしい。




[―――条件を満たしました。存在進化を開始します。]

[存在進化に伴い、スリーブモードに移行します。]

[存在進化、実行開始。]


_____________



[―――存在進化が完了しました。]


[個体名:鈴村 習は種族:『人間』から種族:『人間―霊人』へと存在進化しました。]

[個体名:鈴村 習に特別な称号が与えられました。]

[称号『進化の系譜』、『存在進化先駆者』を獲得しました。]


[個体名:鈴村 習に特別なスキルが与えられました。]


[スキル『死霊魔法レベル1』、『霊子攻撃レベル1』、『霊力充填レベル1』、『霊術レベル1』、『幽体化』、『降霊術レベル1』、『祓除レベル1』、『退魔レベル1』、『自然力吸収レベル1』、『霊子感知レベル1』、『霊力感知レベル1』、『魂干渉無効』、『霊子・霊力攻撃無効』を獲得しました。]


[スキル『死霊魔法レベル2』に統合しました。]


[ユニークスキル『魂操作』、『死霊操作』、『魂魄魔法』、『精霊化』、『精霊眼』を獲得しました。]


[エクストラスキル『霊子支配』、『霊力支配』を獲得しました。]


 ……急にうるさい……全く何なんだよ……ってあれ……? もしかして……俺……寝てた、のか?

 っていううわあ! えっ? はっ? なんで空中!?

 そういえば戦ってそのまま寝たんだっけ?


 ……ん? 誰か隣で浮いてる!? って沙耶かよ……って沙耶!?

 なんで横で浮いてんの!? 意味わからないんだけど?


 ……あ? また何か飛んでくる!? ってヘリか……

 ってヘリ!?

 このまま浮いてたらすぐに気付かれるし、最悪魔物と勘違いされて銃撃されるかも……


「おい、沙耶! とにかく早く起きろ!」


「……あと3時間だけ……ムニャムニャ」


 何を呑気なことを言ってるんだよ!

 おかしいだろ! いや、俺も寝てたけど……

 人のこと言えないのかもしれない。

 でも緊急時に


「3時間も待ってられるか! とにかく起きろ!」


「え……何……私もうちょっと寝る……」


「寝るな! 寝るならせめて地面に降りろ!」


「ハイハイー分かったから。……ムニャムニャ」


「やっぱりからかってるだろ? 朝の気遣いできる沙耶はどこに行ったのやら」


「え? 私学校来てたの? いつの間に?」


 何言ってるんだコイツ。

 いやまあ……沙耶は確かに変だけどさぁ~〜

 覚えてないなんてことあるか?


「はあ? いや来てただろ。なんで覚えてないんだよ」


「そう言われても覚えてないんだもん! 取り合えず私もう一回寝るから!」


 あの一連を覚えてないとは……

 でもそう言えば沙耶にしては妙にカバーのタイミングも最適だったような?

 つまり沙耶は何かのスキルを使ったんじゃないか?

 もしくは乗っ取られていたか。

 どっちかだろうな。性格が改竄されすぎてたし。

 それにしてももう一回寝るって……

 一体全体こいつは……はあ。もういいや。


[ユニークスキル『情報改竄』を獲得しました。]


[その考えに近いかと。三倉沙耶はユニークスキル『叡智』の特殊技能である人格擬態を使用していた模様です、よ?]


 納得。それと最後の方、『です、よ?』がウザい。

 正直やめて欲しい。

 ……それはともかく、でもあのままが良かったな……

 その方が俺からしても、他の人からしてもかなり普通な立ち振る舞いができるようになると思う。人に無理やりやりたくないことを強制して、挙句の果てに幼馴染を殺した実績のありまくるあの沙耶狂人が。

 

 納得してスッキリしたのは良いが、むしろ沙耶がやっぱり沙耶鬼畜だったことにガッカリする気持ちと、俺の『叡智』と沙耶の『叡智』の有能さの格差に絶望したくらいだ。


 知らなかった方が幸せだったかもしれない。

 本当に俺はついてないと思う。


「……あのー! 早く降りて欲しいんだけど! 私ここから動けないのー!」


 あ、やべ。羽澄さんだよな。

 そう言えば彼女と俺、離れたら死ぬんだったな。

 戦闘に行かざるをえなかったとはいえ、ユニークモンスターの巨大蜂を倒すことに気を取られ過ぎて、羽澄さんのことをちっとも念頭におけなかった。


 俺もやってることは沙耶と変わんないな。

 ……はあ、取り合えず俺も気をつけないと。


 って早く降りないと!


「沙耶無理やりにでも起こすからな! 恨むなよー」


「え……ヤダ」


「問答無用! わがまま言えば何とかなるとか思ってるよな、沙耶。わがままがいつまでも通じると思うなよ!」


「分かったってば……もう。『範囲転移エリアテレポート』これでいい? それじゃあお休み〜〜」


 マイペース過ぎる。

 なんだろう。

 取り合えずいつか何かで後悔とかしてくれないだろうか。

 本当に切にそう思ってしまう。


――カシャ


 スマホのシャッター音が聞こえてきた。

 

 は? もしかしてこれSNSに上げる気か?

 冗談じゃない! 早くどうにかしないと……


[ユニークスキル『情報改竄』により、マスターの活躍は全て小さなネズミの功績によるものという誤情報に改竄しましたよ。]


 その最後の『よ』って何? 『よ』って。

 めっちゃムカつくんだが?

 まあ、でもそれなら良かったのか?

 俺の話題が世間には広まってないわけだし。

 でも何気にすごいスキルだな。

 出回った情報を改竄できるとか神レベルだろ。

 一番有能だったかもな、このスキルが。


[ただし、直接目撃したものにはスキル『情報改竄』の効果は無効ですけど?]


 それ『よ』を『けど?』に変えただけだろ。

 煽られてる感半端なくて逆にってウザいんだけど?

 ……は? ってことはつまり……この後俺ヤバくないか?

 めっちゃ恥ずかしいんだけど。

 ただただ何もない場所で叫びながらはしゃいでた変態に見えてるじゃんか。

 高校生にもなって、はしゃぎ倒すヤベェ奴だと思われたに違いない。

 クラスメイトはまだ状況が分かっているので、大丈夫かもしれないけど、他のクラスの奴らとか先輩とかがなぁ……あーもう無理だ、寒気がしてきた。


[スキル『冷気纏いレベル1』を獲得しました。]

[スキル『冷気纏いレベル2』に統合しました。]


 うわぁ恥ずかし過ぎる~〜もう死にたい……

 

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