第61話 転校生が入ってきたと思ったら、魔物も乱入とかふざけてるとしか思えない件について。




 ヤダ……

 えっと……取りあえず落ち着こう。

 叡智がおかしくなったけど、これは元からだし。

 ここまで反論はしてこなかったはずだけど……

 あ、確か自我が成長するとか言ってなかったか?

 これ、ウンディーネさんを元に自我を作ってくれないかな……

 無理だろうな……はぁー

 

「それじゃあ入って来なさい」


 ……やっぱり羽澄さんだった。

 まあ、前も言ったように転校生がそんなたくさん来るわけないもんな。

 それに担任がくる直前に叡智ポンコツが警告してきたし。

 まあそうだよな。


「え! めちゃくちゃ可愛い……」


「本当にねー! モデルとかやってるのかな?」


「「「うおおおお美少女だあああああ!」」」


「なあ! 見たか見たか! スゲー美少女だよな!? ついさっき俺の方見てきたぞ! これ告白したら行けるんじゃないか?」


「かもな。」


 もう面倒だから告白してそのまま玉砕しろ。

 隼人にかけてやる言葉はない。


「取り合えず自己紹介してくれ。みんなも一旦黙って自己紹介聞いてやれ」


 この先生本当に口悪いな。

 口の悪さに見合わず優しいけどな。

 体育はスパルタだけど。


[スキル『厳格訓練レベル1』を獲得しました。]

[スキル『厳格訓練レベル2』に統合しました。]


「えっと……羽澄ひかりです。札幌から来ました。趣味は料理です。よろしくお願いします。」


「「「うおおおお可愛いいい!!」」」

 

 クラスメイトの量産型隼人たちがアホみたいな大声を出した。

 これでも通知よりうるさくないどころか大分静かっていうのがおかしいよな。

 ふざけてるよ。


[スキル『巫山戯レベル1』を獲得しました。]


 うっさ……俺に休憩の余地すら与えてこないとか地獄だろ。


[スキル『回復レベル1』を獲得しました。]

[条件を満たしました。]

[ユニークスキル『超回復』を獲得しました。]


 だから……あ、そういえば通知は変わらないのか。

 まあでも鬱陶しいわな。

 ということで止まってくれ。


「ちょっと男子! 黙って!」


 うん、完全にとばっちり。

 まあ、俺のことではないんだろうけどさ。

 あれ? 沙耶が睨んできてる。どうしてだ?


「羽澄、本来は出席番号で並んで欲しいところだが……取り合えず後ろの空いてる席に……そうだな、三倉の隣に座ってくれ」


 ふぅ、助かった。

 下手に隣の席に来て休み時間うるさいのは嫌だもんな。

 ……沙耶、あんまり羽澄さんを睨むな。

 ってかなんで睨んでんだよ。

 あんまり威嚇し過ぎると萎縮するだろ。

 あ、次はこっちを睨んできた。

 全く何なんだよ……


[スキル『威嚇レベル1』、『威圧レベル1』、『睥睨レベル1』を獲得しました。]


「それじゃあホームルームを続けるぞ。今日は……」


 あれ? なんかすごく大量にいる何かの気配がする?

 えっとそれらがこっちに向かってきてる!?

 どうにかしないと……


[了解致しました。スキル『万能結界』、『万能障壁』の発動を行います。その際に風属性を付与する予定ですがどう致しますか?]


 とにかく早く! 頼む!


[称号『超重溜息迫撃砲』の効果が発動します。]

[溜息の回数を測定……2299回。]

[威力の計算を算出……倍率、4698倍。]

[称号『超重溜息迫撃砲』の効果が発動しました。]


[『万能結界:暴風結界』、『万能障壁:黒風障壁』の発動を行いました。]


――パリーン


 窓ガラスが割れる音がした。


 あと少しのところで間に合わなかったらしい。

 その亀裂から続々と魔物が入ってくる。


 キモッ……でっかい蜂とか見たくもないんだけど……

 こんな状況で沙耶は何してるだよ……あ。


 おいおい! ここで大火力魔法を打ち出す気かよ!

 全員吹き飛ぶって!

 もうどうしたら……


「『風蝶舞ウィンドバタフライ・ワルツ』――えへへ、どう? 習くん? 私頑張ったよ!」


 あれ? 流石にそんなことはしなかったか。

 まあそこまで馬鹿じゃないんだろうな。

 というかほとんど全部沙耶に任せればなんとかなるんじゃ……まあいっか。


「今回は威力も調整できてて良かったな。いつもがそれだったら良かったのになー全く」


「む~~もっと褒めてくれてもいいじゃん。……でもそっか、これがいいんだ」


 うわ、また飛んできたし。

 沙耶は勝ち誇って油断してるっぽい。

 ここは俺がスキルを……


「俺の生徒に何してくれとんじゃあああああああ!!!!」


 でっかい蜂は跡形も残さず消しとんだ。

 あれ? 先生……もしかして順応してる?

 先生ってもしかして能力使うのワクワクしてた勢?

 いや、まあ何とかなったけど……外の大群どうすんだよ。


 そういえば街は?

 無事なわけないよな、学校がこんなたくさんの虫に群がられてるんだ。当然町のほうも大群っ……あれ? そこまでっていうか被害出てない?

 あ、グラウンドに変な穴が空いてる。

 あれか。あれから出てきてる訳か。


大氾濫スタンピードが発生しているようです。]


 えっと……はい?

 聞いたことない単語なんですが?


大氾濫スタンピードとは迷宮に発生した魔物が何らかの影響によって溢れ出し、迷宮の外に影響を与えるほどの大群になることを言います。よって数え切れない数の個体があの穴の中に存在すると予測できます。]


 ……今ドヤっとしたよね?

 そんなことしてる場合じゃないだろ。

 そんなことよりも……もしかしてこのままだと沙耶が魔法使っちゃうかも。

 うーん。それは駄目だな。なんとかしなくちゃ。


[スキル『水操作』により、水球を作り、溺れさせるのはいかがでしょうか?]


 それ採用。


「『水操作:水球幽閉』!」


 水の中に巻き込まれた蜂は最初は抵抗していたが、少しずつ弱っていき、水耐性持ちも中にはいたものの、3分後には全個体の死体が散乱していた。


[『異空間収納』の発動を行いました。]


 流暢になったせいで本当にウザいな。

 全くもってうるさい。

 本当にウザい。鬱陶しい。邪魔くさい。


「お、お前、今の何だよ!」


「それは俺も聞きたいな。いかんせん状況が掴めないから把握しておきたいんだ」


「急に言われてもな……」


 まだ対処しないといけないのに……

 これ学校じゃなくて新手の訓練か何かだろ。


「先生! さっきのなんですか!?」


「あれどうやってやるんすか? かっけーので教えて欲しいっす」


「沙耶ちゃぁんさっきの何なの? 鳥がふわふわって」


「そうそう、それであの化け物倒しちゃうし……」


「ねー! 教えてくれない?」


 まあ教室中こうなるわな。

 あとは……教室の角で怯えてるか。

 無理もない。あんな化け物近くで見たら普通こうなる。

 それは昔の俺も同じだ。


。『範囲精神治癒エリアメンタルヒール』」


 今はもう感覚が麻痺してるけど。

 俺も少しは怖かったんだ。

 戦闘経験もない他のクラスメイトたちが怯えるのも無理はないだろう。

 だからこのくらいはしてやった方がいいだろう。

 最悪の場合、精神崩壊しちゃうと思うし。

 そういう奴らに比べて、こうやって聞いてきてるほうがおかしいんだが……


 それにあの巣の問題は解決していない。

 取り合えずどうするべきか……


[警告します。ユニークモンスター『エンプレスホーネット』を確認しました。]


 またユニークモンスターかよ……

 沙耶もいるし大丈夫だろうけど……はあ。


[対象は魔法を無効化するようです。]


 嘘~~嫌なんだけど……

 マジでこれ俺一人でやらないといけないやつかよ。

 あーあ。やりますか、やりたくないなーいやだなー

 やっぱりやらなくても……ってこっちに向かってきてるし。

 もうどうにでもなれだ。

 スキル名をクラスメイトの前で言うのは恥ずかしいけど。

 ……よし、行こう。……はあ。


「『完全強化パーフェクト・エンチャント』――これで行けそう? 私は戦闘しても意味なさそうだから……あとは頼める、習くん?」


 ……え、いや、沙耶?

 急にどうした?

 なんか急に理想の幼馴染になってる。なってる?

 うん? ……ヤバい、全然情報が完結しない。

 考えるのはやめよう。考えるだけ無駄そうだし。うん無駄。

 せっかくあの沙耶がかけてくれたんだし行くか。

 

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