第57話 予想はしていたが、周囲までおかしくなっていたことに混乱が隠せない件について。
どうしよっかなあ。
いやだってさあ何にも手掛かりないでしょ?
それどころか探す対象も女性ってこと以外に何にもわかってないし。
どうやって探せと?
[スキル『推理レベル1』、『
[スキル『生命探査レベル2』、『魔力探知レベル2』に統合しました。]
推理じゃどうにもならんつの。
あらゆる情報が不足しすぎている。
例えばある問題の答えがトイプードルだとして、与えられたヒントが哺乳類ってだけで答えを導き出さなきゃいけないようなみたいなものだ。
[スキル『天啓レベル1』、『導きレベル1』を獲得しました。]
[ユニークスキル『神託』を獲得しました。]
[転職可能職業に導き手が追加されました。]
そう、つまり俺はこの世界そのものからそんな推理もクソもできるはずがない超過酷なことをさせらせれようとしているのだ。アホかよ。アホだったな。
本当に疲れるわ。
[スキル『推理レベル1』を獲得しました。]
[スキル『推理レベル2』に統合しました。]
それなのに一切俺のことを気遣う様子がないとか……頭おかしいんじゃね?
人の心とかないんか?
まあないんでしょうね。人じゃないしね。
機械的に物事をやれるわけがないだろうが……そんなことしたら俺精神持たないからね?
スキルで無理やり維持されてるだけだからね?
普通だったら今ごろ廃人だよ? 分かってるの?
[スキル『機械操作レベル1』を獲得しました。]
[スキル『機械操作レベル2』に統合しました。]
え? ………あ!?
「はああああ!?」
何であの人、空をナチュラルに飛んでるの?
いやいやいや。
え? どういうこと?
……異世界か? 異世界なのか?
でもスーツ来てたしな……電車遅れるとか言ってたし。
つまり……どういうことだ?
[グランシナリオ『白亜の魔女』の発生に伴い、全人類を含む全生物にスキルが付与されたためです。]
もう何でもありかよ……
……ちょっと待って。
これってスキルありが前提になったスキル主義の世界にとかならないよな?
もしそうなったら嫌なんだけど。
[十分にその可能性は高いと推測されます。別世界線上においては97.8パーセントとという高確率でスキル優位性社会が形成されています。]
あー面倒くせー
クソウザ案件なんだけど?
特に沙耶が調子に乗りそうで怖い。
めちゃくちゃ怖い。
ともかく、白亜の魔女っていうのを探すのが先何だろうけど、なんだろう……それ以外が衝撃的すぎて何も情報が入ってこないし、何も手につかない。
[スキル『推理レベル1』、『
[スキル『
……はあーー……
だってさあ……まず色々おかしくない?
何でみんなこんなに順応してるわけ?
[スキル『適応レベル1』を獲得しました。]
[スキル『適応レベル2』に統合しました。]
[表面上は順応しているように見せかけていて、内心では混乱していたり、苦悩していたり、歓喜していたりする者がほとんどのようです。]
あ、そう。
まあ確かに言われてみれば変に能力使えるようになったからといって学校休むとか会社休むとかするのはおかしいかもな。
[スキル『休暇レベル1』を獲得しました。]
えっと……SNSの方は見てなかったな……ヤバいめちゃくちゃ荒れてる。
自慢する奴もいれば、嘆いてるやつもいる。というか後者がほとんどだ。
実際には混乱してよく分からなくなってる人たちが一番多いんだろうけど。
中には政府を批判している奴もいる。
でもそれはとばっちりだ……
すみません……多分これ俺が悪いです……
[その発言には少々誤りがあります。実際的にグランドシナリオ『白亜の魔女』の発生が早まっただけです。マスターが干渉しなくとも五日後に自然発生するものであったため、マスターの過失は少ないと判断します。]
そうとはいってもな……
そううまく飲み込めることでもないし。
[スキル『吸収レベル1』を獲得しました。]
[スキル『吸収レベル2』に統合しました。]
[システムメッセージです。個体名:鈴村習に伝令、対象の存在範囲が移動しました。現在は駅前広場のいずれかに存在しているようです。よって当該箇所に急行してください。]
……そうだった。
そういえば俺シナリオをやりに来てたんだった。
でもこの状況だしさ……許してくれないか?
頭が全然回らないし。順応できる気がしない。
今はこの状況を飲み込むので精一杯だ。
[スキル『適応レベル1』を獲得しました。]
えっと……俺、無理なんですけど?
少しくらい期間を延ばしてくれません?
[シナリオにおいて設定される制限時間は一定であるため、あらゆる障害及び突発的な事象が関係した場合であっても変更することは不可能です。]
余りにもそう淡々と言われると本当にムカつくからやめてくれ。
特に今のなんて完全に煽ってるようにしか感じないから。
[システムメッセージです。個体名:鈴村習に再伝令、対象の存在範囲が移動しました。現在は駅前広場のいずれかに存在しているようです。よって当該箇所に急行してください。]
何だよ、そんなに俺のこと苦しめたいのか!?
もう十二分に苦しんだだろ。
止めてくれよ。ってこれ何度目だよ。
「よお! 習じゃんか。こんなとこで何してんだ? 確かお前って家こっちの方じゃなかったよな? 結構学校に近かったはずだし。真反対の駅の方に来るなんてもしかして俺に惚れてる? ゴメンな……習、俺女が好きなんだ……」
……隼人か……
何か3日ぶりくらいなのに数ヶ月ぶりな感じがする。
それにしても会って早々ネタを入れてくるとか面倒なんだけど。
「誤解を呼ぶようなことを言わないでくれ。俺はお前のこと好きなんかじゃない。おふざけも過ぎるぞ」
[スキル『巫山戯レベル1』を獲得しました。]
[スキル『巫山戯レベル4』に統合しました。]
「それにしても習、どうしてこっちの方に? ……まさか能力的なやつの暴発か? お前なあいくら能力を試したいからってそれはヤバいだろw 順応早すぎ案件なw?」
[スキル『適応レベル1』を獲得しました。]
[スキル『適応レベル3』に統合しました。]
隼人も大概だと思うけどな。
それはそれとして、まあシナリオの暴発だし、隼人の言葉の意味合い的には前半の部分は間違ってない。そう伝えておくのが無難か。
……でもそれだと一緒に学校行くことにならないか?
それってシナリオ失敗扱いになるのでは?
それは絶対に駄目だ。
最悪の場合、俺が死ぬ羽目に遭う。
そんな理不尽は絶対に認められない。
だったら他の言い訳を……
「いやそんなんじゃないから。ちょっと急用があってな。そういうことだからまた学校で」
「おいっ、急用ってなんだよ。どうせサボりだろ? 俺のグチに付き合ってくれよ~~」
「だ、か、ら、俺は用事あるの。どうせグチってまた振られたとかだろ? 安直な告白からの振られる展開を長々と説明されてそこからまた長々とグチって来るのはマジで疲れんの! だから聞かないし一緒に学校も行かない。オッケー?」
[スキル『展開レベル1』を獲得しました。]
「おいっ! 待てよぉーそんなこと言うなよ……虚しいだろぉ……」
もちろん俺はそんなことに構っている暇はない。
あーあ。探すか、それにしても白亜の魔女ってなんだよ!
チョークの魔女かなんかかよ……そんな奴いないだろ……
[スキル『染色(白色)レベル1』、『
[スキル『生命探査レベル3』、『魔力探知レベル3』に統合しました。]
何一人で乗りツッコミしてるんだろ……虚しくなってきた。
[スキル『乗りツッコミレベル1』を獲得しました。]
ふと振り返ると、隼人がまだ俺のことを視線で追っているようだった。
そこで俺の姿を虚しそうに眺める隼人に向かって訴えた。
『今の俺の状況と比べたらマシだから気にすんな』と。
そう思っているとやっぱり虚しくなった。
もうネガティブに考えるのはやめよう。うん、やめよう。
楽しい。そうだ、
「『楽観』。よっしゃ! 探すか!」
無理矢理テンションをスキルで持ち上げた俺は、気を引き締めて無理ゲーに挑むのだった。
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