第49話 ただ戦闘をしなくていいだけでこんなに楽だとは思わなかった件について。(但し、通知はうるさい)




 ウンディーネさんと共に第三階層に到着した。

 この階段が無駄に長いのが疲れる。

 

 青い光に一瞬包まれる。

 すると疲労が一瞬で吹き飛んだ。

 おそらくウンディーネさんが掛けてくれたのだろう。


 どこまでも人間が出来ている。いや精霊が出来ている?

 それはどうでもいい。

 問題なのは……次の試練が何なのか、だ。


[第三試練:掃討の間です。このエリアに存在する全ての敵を討伐しなさい。]


 本当に何で一々命令口調なんだろう。

 ただただムカつく。

 本当に何様のつもりなんだか。

 まあ、通知よりは確実にマシだけど。


[ユニークスキル『命令オーダー』を獲得しました。]


「かなり、数が多いですね……ざっと数えた辺り三万ってところですね……このあとどうしますか?」


「えっと……分かりません……」


 確かに俺の事情だから俺が考えるのは当然か……

 でもな……普通にゴリ押すか?


[スキル『ゴリ押しレベル1』を獲得しました。]

[スキル『ゴリ押しレベル2』に統合しました。]


 うるさいな~~

 まあ、とりあえず鑑定するか。


「『鑑定』」


__________________________

    【ステータス】


 種族:フレア・サーペント

 名前:なし  

レベル:56

 HP:10602000/10602000   

 MP:5237/5237

 ST:2418/2412

 筋力:2343

 魔力:2781

 防御:2102

 魔防:2299

 俊敏:1028

 幸運:204

 

【スキル】

〔アクティブスキル〕

火魔法Lv.4、支援魔法Lv.5、回復魔法Lv.MAX、業火Lv.6、十連攻撃Lv.3、連携攻撃Lv.MAX、曲刀術Lv.9、火炎放射Lv.6、仲間呼びLv.3、威圧Lv.6

〔パッシブスキル〕

熱源感知Lv.5、物理強耐性Lv.2、魔法強耐性Lv.3、火炎無効、全状態異常無効

〔ユニークスキル〕

詠唱破棄、超嗅覚

〔エクストラスキル〕

無限再生


__________________________


 

 ステータスは今の俺と比べるとそこまででもない。

 でもHPが如何せん多すぎる。

 でもゴリ押し以外に思いつかないしな……


 いや、それは駄目だ。

 またうるさい地獄に囚われることになる。

 それなら何か一箇所に集めて一掃できる手段があれば良いんだけど……


[スキル『収監レベル1』、『収束レベル1』を獲得しました。]


 攻撃収束と何が違うの?

 いらなくね? 


[スキル『攻撃収束』は攻撃を収束させて威力を高めるスキルです。スキル『収束』は周囲の指定した対象を一点に集めるスキルです。よって運用方法が異なります。]


 あ、そう……

 ん? それって闇魔法使った方が早くない?

 だって『収束』ってレベル1だし……

 それに集めるって言ってもどこまでできるのか分からないし、余りリスクを負うのはな……


「敵を一点に集めれば良いんですか? そのくらいならできると思いますよ。どうしますか?」


 ちゃんと聞いてくれるところとかも良いな。

 ……というかよく考えなくてもそれが普通だよな。

 でもやっぱりこれだけでも相当嬉しく感じてしまう。

 まあ沙耶と比べてしまえば何でも嬉しく感じてしまいそうだしな。

 ウンディーネさんが優しいことには違いないし。


「えっと……あはは……」


 困らせてしまったらしい。

 思考が読めるっていうのは大変だな。

 本当にご愁傷さまです……

 えっと、なんだっけ?

 確かウンディーネさんが敵を集めてくれるんだっけ?

 まあウンディーネさんに任せれば大丈夫だろうし、お願いするか。


「それじゃあ、お願いしても良いですか?」


「分かりました。えっと取り合えず正面に集めれば良いんですよね?」


 正面だと、もし一掃できなかった時に一斉にこっちに向かってくる可能性があるからな……

 そうなると蹂躙されるのはこっちだろう。

 となると、右側の高い壁の裏の上空の方が好ましいな。


 とは言っても、もしもの可能性だけど。


「分かりました。それなら今から集めますね」


 そう言うと、ウンディーネさんの手から光が溢れ出した。


 暫くするとついさっき俺が指定した辺りに大きな水の渦ができ始める。

 周囲のモンスターだけがその渦の中に放り込まれていく。

 本当に何から何までありがたい。


「これって私が倒して良いものなのでしょうか……習さんが倒さないと経験値は得られませんし……」


「別に良いですよ。俺がやるよりもウンディーネさんがやってくれた方が加減とかができると思うので。それとも休みたいんですか? それなら俺がやりますけど……」


「そういうことでしたらやらせて頂きますね」


 ウンディーネさんが人指し指を空中に浮かんでいる渦に向かって指した。

 すると指の先に剣のようなものが現れて、その次にはその渦の周りを切り刻んでいた。


 そして気づけば、また俺の周囲に結界が張られている。

 本当にどこまでも他人を立てれるタイプのようだ。


[称号『unknown』の効果が発動しました。]

[スキル『攻撃技能レベルMAX』、『防御技能レベルMAX』、『生産技能レベルMAX』に強制統合しました。]

[ユニークスキル『万能結界』、『万能障壁』、『万能付与』に強制統合しました。]


 なんの脈絡もなく獲得するのは止めてくれよ。


 そんなことを思っていると、一瞬で敵の姿は無くなっていた。

 辺りには敵の死骸だけが残っている。

 周囲に影響は一切与えていないようだった。


 何もかも後のことを考えて行動してくれて本当に助かる。

 本当に死ぬウンディーネさんが癒しだ。

 通知さえなければ、本当に完璧だったのにな……


 そのまま階段を降りた俺たちは次の階層に向かう。

 そして第四階層についた。


[第四試練:耐久の間です。ひたすらに生成され続ける壁を掘り進め、次の階層への道をつなげなさい。]


 ……え?

 いやいやいや。

 最高に面倒で、クソウザイ試練じゃん。

 何やらせようとしてくれてるの?

 

「すみません……これに関しては手伝えそうにないです。できるだけ治癒し続けるので申し訳ないですがここは習さんにお願いできませんでしょうか?」


「……はい。分かりました……」


「あははは……すいません……」


 しょんぼりさせてしまったらしい。

 頑張らなくっちゃな。やる気が出てきた。

 ウンディーネさんが思いついたように何かを生み出した。

 どうやら自動で掘ってくれる掘削機のようだ。

 それとツルハシ。……ツルハシ?


「私もできる限り助力しますが、特に習さんが頑張ってくださいよ? 私習さんよりも非力なので絶対効率悪いと思いますし……サボってるとか絶対に思わないでくださいね?」


 いや、そこで壁一面埋まるほどの掘削機を作ってくれてなおその手で自ら掘ってくれているウンディーネさんに感謝こそすれど、そんな失礼なことは思わないだろう。

 作業量もウンディーネさんの方が多いし、むしろ俺の方がサボりみたいにみえてくる。


「感謝こそすれどそんなことは思いませんって! 本当にありがとうございます!」


「あ……うん、それならいいですけど……」


 そうして俺はウンディーネさんが創造魔法で作った掘削機と共に、ツルハシ片手に地道に道を掘り始めた。

 なぜかいつもより作業を始めるのが辛くなく感じた。

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