第48話 俺をシナリオで苦しめていた水精霊さんが、幼馴染の完全上位互換(いい意味)だった件について。
すごい頼りになる。
俺が頼むと嫌そうな顔一つ見せずに綺麗な笑顔を浮かべて、すぐさま黒竜の方に向かっていった。
[スキル『依頼レベル1』を獲得しました。]
[スキル『依頼レベル2』に統合しました。]
……
あまりにも都合のいい状況に、驚いて止まっていると、俺の周りに何重もの水の結界が張られた。
どうやらこの結界は俺が動くと同時についてくるらしい。
親切設計……(泣)。
まじかよすごく気を遣ってくれるじゃんか。
[スキル『硬直耐性レベル1』、『移動結界レベル1』、『設計レベル1』を獲得しました。]
[スキル『硬直耐性レベル2』に統合しました。]
それと比べて通知は一切気を遣ってくれない。
いっそ、通知がウンディーネさんだったら良かったのに。
そんなことを考えている矢先に黒竜が突進してくる。
ウンディーネさんは宙に舞い上がり、俺はかなり後方に転移させられる。
そしてそのままウンディーネさんと黒竜の戦闘が始まった。
[スキル『突進レベル1』、『飛翔レベル1』を獲得しました。]
最初に動いたのは黒竜だった。
——グオオオオッ!
竜が叫ぶと同時に雷が辺りに降り注ぐ。
しかし、ウンディーネさんはその雷を避けようともせずにその攻撃を受けようとしていた。
[スキル『避雷針』、『絶縁体』を獲得しました。]
……危ない! そう思った矢先、無数の白い雷がウンディーネさんに落ちる。
土煙が舞い、爆風で煙が周囲に広がっていく。
[スキル『視界妨害レベル1』、『夜目レベル1』、『視界安定化レベル1』を獲得しました。]
そのせいでウンディーネさんがどうなったのかが見えない。
大丈夫だよ……な?
視界が開ける。
そこには傷一つ負っていないどころか、汚れ一つないウンディーネさんがその場に浮遊していた。
……すごい。
思わず息が漏れる。
黒竜の攻撃が何一つ当たっていない。
空かさず黒竜は追撃を入れる。
黒曜石のように鋭い漆黒の爪がウンディーネさんに猛烈な勢いで差し迫る。
しかしバリアのようなものに阻まれて、その攻撃は通らなかった。
[スキル『追撃レベル1』、『掻裂レベル1』、『染色(黒色)レベル1』、『攻撃阻害レベル1』を獲得しました。]
すると黒竜は何を考えているのか、一旦後ろに下がった。
その刹那、ものすごい突風が吹いた。
周囲の大気が黒竜のほうに向かって吸い込まれていく。
それとほぼ同時に周りの壁や、天井、床を崩れ、その口に吸い込まれていく。
[スキル『崩壊レベル1』を獲得しました。]
[スキル『崩壊レベル2』に統合しました。]
俺もこの結界が無かったらきっと今頃あの口の中だろう。
——グァアアアア!!!
黒い炎、黒炎というべきだろうか。
それが渦状に収束していき、ウンディーネさん目掛けて一直線上に目にも止まらぬ速さで放出される。
それと同時に、このダンジョンの第二階層は一瞬で黒く染まった炎で埋め尽くされ、何も見えなくなった。
[スキル『攻撃収束レベル1』、『エネルギー放出レベル1』、『
[スキル『染色(黒色)レベル2』、『視界妨害レベル2』、『夜目レベル2』、『視界安定化レベル2』に統合しました。]
約三十秒もの間、その炎は辺りを埋め尽くしたままの光景に、俺は結界の中で震えていた。
しばらくして、紫と黒の炎が晴れると、辺り一面が灰で覆われた無残な光景に切り替わった。
[スキル『全範囲攻撃レベル1』、『灰化レベル1』を獲得しました。]
——バサッ、バサッ。
羽音に気づいた俺は上を見上げる。
そこには優雅に翼を羽ばたかせて勝ち誇りながら、俺に向かって次の
[スキル『飛翔レベル1』を獲得しました。]
[スキル『飛翔レベル2』に統合しました。]
……そう……ウンディーネさん……死んじゃったのか……
胸に怒りがこみあげてくる。
でもきっと俺の力じゃ勝つどころか傷一つ付けられない。逃げることすらかなわないと思う。
……やるしかないよな。
仇を討てるかは分からないけど、全力で自分のやれることを出し切ろう。
[勝手に死んだことにしないで下さい! 習さんでも流石にその冗談は普通に許せませんよ! 今回は心配してくれたので許しますけど次はないですからね? それと結界! まだ周りに張っていたはずですけど? その……少しはそのくらい察してください。 私これでも戦闘中なんですからね?]
あ……すいません。
でも生きててくれて本当によかったです。
……前の時にちゃんと学習してくれて頭に響く声の気持ち悪さをすごい軽減してくれてる。
こんな戦闘の最中なのにそこまで気遣いしてくれるなんて……やっぱり癒しだ。
[そ、そうですか……]
あ、困惑してらっしゃるようで、すみません。
[いえいえ、それでは私は戦闘に戻りますのでどうぞお寛ぎください。]
本当に礼儀も正しいし、あんな攻撃無傷だし……
ウンディーネさんって何者?
[『四大精霊:
うん、聞いてない。
でも取り合えずヤバいほどすごいってことだけは分かった。
閑話休題。
黒竜はこのままでは駄目だと判断したのか、準備していた
そして近接攻撃に切り替えて猛烈な勢いでウンディーネさんに攻撃を続ける。
でもウンディーネさんには一切効いていないようだ。
ついに、ウンディーネさんが攻撃態勢に入る。
彼女が手を振り上げると、無数の水球を浮かび、それが全て圧縮されていく。
そして集まった水は槍となって猛烈な勢いで漆黒の鎧に向かう。
[スキル『漆黒鎧レベル1』、『圧縮レベル1』を獲得しました。]
——グァアアアア!!
ウンディーネさんが放った槍はいとも容易く黒竜の巨体を貫通した。
貫通した槍はそのまま進むわけではなく、何度も黒竜の方へ戻り、何度も何度もその巨体を貫いた。
黒竜は回避をしようとしていたが、圧倒的なスピードで何処までも追ってくるその水の槍に最終的には撃ち墜とされた。
――ズ、ダーン!
[スキル『異空間収納』が発動しました。]
地面に巨体が落ち、ものすごい衝撃が辺りに広がる。
よく見るとクレーターのようなものができていた。
そんな重いのか……ウンディーネさん召喚しておいて正解だったな。
本当に圧巻だ。
事実、俺は見ていることしかできなかった。
「ウンディーネさん、本当にありがとうございます! 助かりました!」
「大丈夫ですよ。習さんは私たち水の精霊の英雄ですので! このくらいは当然です!」
本当に何から何まで癒しだな。
ウンディーネさん、本当にありがとうございます!
精神的にも、実際的にもすごい助かりました!
ふと、ウンディーネさんの方を見る。
めちゃくちゃ気まずそうで、恥ずかしそうな顔をしている。
すごい癒しだ。
[黒竜が討伐されました。よって、第三試練に移行します。第三階層に移動してください。]
……タイミング最悪なんだけど?
このまま続くのはやめて欲しいんだけど……
どうやら無理みたいだ。
「大丈夫ですよ。私も精一杯手伝いますから」
……うーん。
幼馴染がウンディーネさんみたいだったら良かったのに。
言ったら悪いけど、あらゆる点が超上位互換過ぎる。
本当にどうにかならないかな……
まあ今はそんなことを考えても仕方ない。
でもな……このままずっと何かさせ続けるのは駄目な気がする。
……取り合えず今回ばかりは厚意に甘えさせてもらおう。
そうして、俺達は第三階層に続く階段を降りた。
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