第41話 やっと終わると思わせといて俺にだけ討伐依頼を出すのは頭おかしいのと思うのは気のせいじゃないよな。




「そろそろ行くぞ。こんなところで止まってても時間を食うだけだし。」


「えーもっと見て回らない?」


「それ、不法侵入って知ってる?」


「むぅ……少しくらいいいじゃん」


「嫌だわ。面倒だし。今の時間知ってるよな? 仮眠とか取ってるけど、多分深夜だぞ」


[スキル『時間把握』を獲得しました。]

[スキル『時間把握』が発動します。]

[現在の時刻は午前4時39分です。]


 ……遅っ。

 いや早い? どちらにしろそんな過ぎてたのかよ。

 頭がおかしくなりそうだ。


「そうだね。確かに習くんの言う通りかも……」


 なんで悲しそうな顔してんの?

 辛いのは、こっちだよ!? 

 マイペースもここまで来ると呆れを通り越してもはや感心するぞ!?


「取り合えず先行くよ。俺部屋に鍵掛けて来たけど、それでも万が一両親のどっちかが無理やり開けてきてそれでバレでもしたら大変だし。お前も流石にそれは不味いんじゃないか」


「大丈夫! 私の幻置いてきたから!」


 用意周到だな。

 でも待てよ、確かそれって確か3時間で消えるんじゃなかったっけ?


[その通りです。]


 ……またやらかしたのか。

 これは帰ったら両親に叱られるやつだな。

 いや、沙耶の両親って甘過ぎるからな……これで怒らないなんてことも普通にあり得る。

 そうすると必然的に俺の方がかなりリスク高くね?

 やらかしてる奴よりリスク高いとかどうなんだよ……

 リスク管理バグってんじゃないの?


[スキル『リスク管理レベル?』を獲得しました。]


 レベル?、? 何それ。

 俺をからかってるのか?

 嘘の通知まで鳴らし始めたじゃんか。


[レベル?のスキルを確認しました。]

[称号『unknown』を獲得しました。]


[スキル『鑑定』を発動しました。]


______________


【e8 _2 _】unknown


 6:w-.3:D-ej-mF5z y5fby" keg75k@g/wzye8 _2 _,

 jk7a7AMC58_jE8 _g-4jI -ye8 _2 _5gs.2_a5e8 _d-mos-j429A11-,

 -4ej-2 d4 _"nb12fa5_-7@y,

  :D-'aI -y24_am.fby54_2 _E8_:"ree pzk4_2 _fy24A@y,


______________



 頭おかしい。

 どう見ても適当な文字列だろ。

 変に混乱させないでくれ。

 気が狂いそうじゃないか。……もう何回かどころか何百回と狂った事あるけど。別にそれは問題じゃない。

 頭がパンクしそうなんだよ!

 ただでさえ今日一日で詰め込み過ぎてて辛いのに……


『少し休まれますか? もし休まれるのなら、謁見はの予定は延期してすぐに休める場所を用意しましょう。』


 うーん……

 やっぱりすぐに終わらせたいからその申し出は断ろう。


『分かりました。それでは謁見の間でお待ちしております。』


 謁見の間かぁ……え? なんて?

 マジでそんなところ行くの俺?

 はあ。嫌でもどうせいつかは来ることになるよな。

 それなら行くか。あとに面倒なこと残したくないし。

 それにしてもこの声の人、叡智とチェンジしてくれないだろうか? ………無理ですよね、わかってました。


「ん? 行くんじゃないの? 急に立ち止まったってことは……習くんもやっぱり探検したいんでしょ!」


「ちげーわ。ただ通知で思考が止まってただけ。オッケー?」


「うーん……分かった……」


 なにしょげてるの?

 普通に考えてあの話から探検しようってならないだろ。


「それじゃあつまらないしな……『範囲転移エリア・テレポート』」


 ん? 目の前の景色が急に変わった!?

 ってまた沙耶急に魔法使ったな!?

 本当に失敗から学ぶことを知らないのかこの幼馴染は。

 ……知らなかったな。期待するだけ無駄だって思い出したわ。


「よくここまで来ました人の子よ。私の名前はウンディーネ。水の精霊を統べるものとして、あなたたちに感謝を。」


 何故か感謝された。

 そういえば寵愛をもらった理由も聞いていない気が……

 一体どうして俺たちに関わる気になったんだろう……


「数千年の間、外の世界と隔絶されて、それによって溜まりに溜まった魔素によって私たち水の精霊は滅ぶ運命にありました。それをこの迷宮へあなた達が入ってくれたことで解決し救ってくださった。このご恩は返すにも返しきれません。」


 ……いや、たまたまじゃん。

 ただの偶然だよ、それ。

 そこまで感謝するか?

 もし自分だったら……するかもしれない。

 にしたって大袈裟な気もするけど。

 俺なんてただの被害者だし。

 それどころか大量に精霊殺してるし。


[それは否です。マスターが討伐した精霊はユニークモンスターの一体しか存在しません。魔法によって攻撃された『結晶集合体クラスター』はすべて微精霊に拡散しました。]


 あ、あれって討伐出来ないのか。

 ……それはともかく謝っておこう。

 敵対されたけど、一応この国? の精霊ではあるだろうし。


「心配はいりませんよ。あの者たちは魔素に汚染されて完全に自我を喪失してしまっていたので。もう手遅れでしたし、他の民に危害が加わる前に弔って頂いてむしろありがたいです。」


[スキル『魔素耐性レベル1』、『魔素蒐集レベル1』、『魔素魔力変換レベル1』を獲得しました。]


 そ、そう……

 魔素ってなに? 俺知らない。


[魔素とは、魔力が物質化したものであり、精霊のような明確に形を持たないものが生涯を終えるときに発生する事が多いです。また、魔素を意図的に生成できるのは魔族や悪魔、神族に限定されます。]


「甘いものならすぐに用意しますよ。今すぐ甘味を持ってきてくれるかしら。」


 沙耶……何考えてんのお前。

 急に統治者さんの前に転移したことでさえ失礼なのに……

 本当にブレないな。羨ましいよ、むしろ。

 俺も沙耶くらいマイペースに過ごせたらどれだけ楽だったことか。


「私たちを救ってくださった救世主のお二人に褒章を。」


[システムメッセージです。]

[ユニークシナリオ『水精霊ウンディーネの導き』を達成しました。]

[称号『水精の救世主』を獲得しました。]

[称号『水精の守護者』、『水精の騎士』、『水精の救世主』を確認しました。]

[称号『水精の英雄』を獲得しました。]

[転職可能職業に水聖が追加されました。]


 ……救世主じゃないよ俺? 

 あと通知、舐めてる? 俺英雄なんてなりたくないし。

 うわ、なんか凄そうなもの抱えてる。


 ……なんかすっごい高そうなもの貰ったんだけど。

 もしかしてこれで終わり!? ラッキー、いや散々な目に遭ったからそれは違うか。


「習くん、とりま亜空間収納でしまっちゃって〜〜」


 うん。今は異空間収納な。

 よししまうか。


[スキル『異空間収納』が発動しました。]


「大変心苦しいと承知の上で習さまに聞いていただきたい話があるのです。実は私たち水の精霊は以前から火の精霊と同盟を結んでいました。しかし突然我らが外の世界と隔絶されたことでその交流は途絶えてしまいました。そこで幻獣フェニックス様の加護を持つあなたが、フェニックス様に同盟を結ぶのを取り持って頂けるよう説得していただきたいのです。」


 は?


[ユニークシナリオ『不死鳥の試練』、『火と水の饗宴』が発生しました。]

[ユニークシナリオ『不死鳥の試練』、『火と水の饗宴』を開始します。]


 ……こいつまた拒否権ないのかよ。

 これもあの名前のよく分からないスキルのせいなんだろうな。

 ここで断ったらデスペナルティの可能性が大いにあるだろうな。

 受けるしかない。 


「いいですよ。時間は掛かりますがそれでいいのなら喜んで」


 全然喜ばしくないけどな。

 あ、ウンディーネさんが気まずそうにしてる。

 でも俺に拒否権が与えられてないことも知ったらしく、罰が悪そうだ。


「いいですよもう。過ぎたことなので。そんなに気を落とされないでください。」


 俺にはこのくらいの気遣いしかできない。

 でも沙耶はもっと酷い。だってこんな真剣な話をしている横で沙耶は悠々とお菓子を頬張っているのだ。……頭馬鹿になりそう。




_______________




 作者です。

 今回の称号、unknownですがちゃんと暗号にしておきました。

 わかる人はすぐわかるかも。

 いつか作中でネタ晴らしします。

 悪しからず。

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